約 195,423 件
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/583.html
「ふたば系ゆっくりいじめ 265 飾りの価値は 承/コメントログ」 やだ・・このドスカッコいい・・ -- 2010-06-04 03 17 23 被害者面する屑共ほど腹が立つものもなかなかないな 飾りの件も虐めの件もテメエらが加害者側の癖に -- 2010-08-26 20 26 00 どうしようもない無能ドスだな 飾りの無いゆっくりはゆっくり出来ないという当たり前の事を 考慮しないから群れに歪みが生じているのに -- 2010-09-07 03 02 39 ドスはこの群れ滅ぼしてパチュリー・飾りの無かったれいむと新しい群れを作りに行くべき むしろこの群れ全員惨殺希望 -- 2010-09-27 16 00 10 ↓↓飾りのないゆっくり=障害を背負った方々(←ごめんなさい) ドラマやらなんやらで何かと障害者って周りから冷たい目で見られてるよな? 飾りのないれいむも似たようなもの。 飾りが1匹1匹を判別する手段にあるなら、ゆっくりに扮した不特定生物によって絶滅を回避するための防衛手段じゃないかな?顔で識別するなら、飾りの有無関係なく識別するからさっきもいったように不特定生物に絶滅しかねないからね。 じゃあ、飾りまで似せてあったら? ゆっくり特有の材質で作られるだろうな、タンパク質でもなく、本物の布でも作られてない、なんかだと思う。 -- 2011-12-30 02 57 39 このあとこの群れはれいぱーちゃんや糞豚饅頭やらキチガイの人たちがランチキ騒いで ぜんっめつ!したとさ!お~しまいっ! -- 2012-05-19 01 45 57 ↓何その大怪獣決戦wwwもちろんドスとパチュリーは新たな群れを作りいなくなる、いなくなる直前きっと糞饅頭どもはドス何ていなくても平気だよだからお飾りがないゆっくりをゆっくり出来るゆっくりといってるバカなドスはさっさとでていってのたれしぬんだじぇとか言ってるに違いない -- 2012-07-06 17 49 57 ↓↓↓毎日のように、「不特定生物」によって自滅に近い惨死を遂げてる、 ひ弱で無力で、自分をむしろ害するような中途半端な知能しかない饅頭に、そんな高等な機能がついている訳がないと思うんだが……。 存在自体が道化にすぎないゆっくりが、その生態からしていかに愚かで性悪かが具現しただけの特徴だと思う。 -- 2012-09-02 00 03 12 障害者には2通りあるんだ、まずは障害を持っているが自分に出来る事を頑張ろうとする純真な奴 もう一つは障害者であることを盾にするドス黒い社会の障害者の二通りだ -- 2012-12-17 19 39 11 ドスとパチュリーとお飾りのないゆっくりで 群れを作るべきだ -- 2014-12-16 16 10 15 ↓ゲスの群れとか攻めて来そうだな -- 2016-02-16 22 30 50 お飾りのないれいむ美人じゃん!!れいむをいじめなければこうならなかったのに・・・ 群れのみんなも、いじめのしかたを、教えなければこうならなかったのに・・・・ 死んで苦しんで地獄にいってれいむに、見捨てられればいいのに・・・ -- 2016-04-05 21 52 50
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/2671.html
『自由なれいむ』 3KB 虐待 家族崩壊 番い 前作の300P超えありがとうございました。今作はちょっとわかりにくいかもしれません。 人間さんはれいむを虐待しなかった。 れいむは解放された。 ただ、解放されたのはれいむだけだった。 とっても可愛くて、とってもゆっくりしていて、一緒にいるだけでとってもゆっくりできて、なによりもなによりも大事だったおちびちゃんはもういない。 とってもかっこよくて、とってもゆっくりしていて、れいむのことをいつも想ってくれて、一生一緒に生きていこうと思っていた大好きなだーりんのまりさももういない。 れいむはいつも、おちびちゃんとすーりすーりをしてゆっくりしていた。 れいむはいつも、おちびちゃんとむーしゃむーしゃをしてゆっくりしていた。 れいむはいつも、おちびちゃんとおうたを歌ってゆっくりしていた。 れいむはいつも、おきゃーしゃん!おきゃーしゃん!とまだ上手に喋れないお口から発せられる元気なお声を聴いてゆっくりしていた。 れいむはいつも、ころころと笑い、きゃっきゃっと遊ぶ、好奇心旺盛で、でも泣き虫さんのおちびちゃんを見てゆっくりしていた。 れいむはいつも、れいむとおちびのためならかりだってがんばれるのぜ、と言って大事なおぼうしを汚してまで、へとへとになってまでごはんさんを獲ってきてくれるまりさの優しさを感じてゆっくりできていた。 れいむはいつも、まりさと一緒におちびちゃんの輝かしい未来に想像を膨らましながらしながらゆっくりしていた。 れいむが怪我をしたり、体調を崩したりすると、おちびちゃんやまりさがぺーろぺーろしてくれて、ゆっくりできていた。 れいむのおかーさんが永遠にゆっくりしてしまった時も、まりさが一緒にいてくれてゆっくりできていた。 どんなゆっくりもおちびちゃんとまりさと一緒にあった。 おちびちゃんもまりさももういない。 だかられいむはゆっくりできない。 ゆっくりできない気持ち、れいむはそれを何処かへやりたかった。 一刻も早くこのゆっくりできない気持ちから逃げ出すこと、それをれいむの一番大事な餡子が泣きながら求めていると感じた。 れいむはとりあえず何処かへ行こうとした。 ゆっくり出来ない気持ちが無くなる何処かへ。 「ずーり……ずーり……」 重力以外の何かがれいむをその場に倒れさせようとしているのを感じた。 当てもなく彷徨いながらむーしゃむーしゃはゆっくり出来たことを思い出して、ごはんさんを探した。 どうやってあんよを使うのかがわからなくなりながら、れいむはごはんさんを探した。 探しながら思った。 ごはんさんを探すなんて久しぶりだよ、と。 れいむは止まった。 何かがれいむを地面へと縛っているように感じた。 少しも動けなかった。 仕方なくその場に生えていた草を食べることにした。 「むーしゃ……むーしゃ……」 馴れ親しんだ行為がれいむに思い出させる。 いつもの光景を。 「むーしゃ……むー…おげぇ゛!」 過去の記憶が餡子を掻き乱す。 れいむは食べていたものごと餡子を吐いた。 「おげぇ゛っ…… !ゆぶぅ゛……!……ッ!ゆはぁっ……はぁっ……」 餡子にまみれてぐったりとし、れいむは、まりさ助けて、と思った。 まりさぺーろぺーろしてよぉ、と思った。 一番大事な餡子が潰れていく気がした。 一番大事な餡子をぐちゃぐちゃにして欲しいと思った。 叫び出したかったが、叫びだすことも出来なかった。 れいむの心は矛盾に溢れていた。 その矛盾にれいむ自身が混乱し、疲れていった。 「……すーやすーや…したい…よ……」 れいむは疲れてしまって、そう言った。 体も心も今までになく重たくて眠ってしまいたかった。 眠っている間はこの気持ちから逃げられるとも思った。 しかし、れいむはいつまでたっても眠れなかった。 明日が怖いのだった。 おちびちゃんがいない未来が。 まりさのいない未来が。 どうやってゆっくりすればいいのかわからない未来が。 きっとこの気持ちを感じ続けるであろう明日が。 とてもとても怖くて、眠ることが出来なかった。 でもじっとしているだけで、れいむの一番大事な餡子が逃げたい、と悲鳴をあげていて、体の中がぐるぐる回る様に感じて、得体の知れない恐怖と不安に駆られて酷くゆっくり出来なかった。 いや、れいむはこんな気持ちをじめて感じていた。 ゆっくり出来ない、では足りない。 ゆっくりとは正反対の感覚を感じていた。 しかし、得体の知れない、どこかへ逃げたいという追い詰められた様な感覚に反して、れいむは何処へも逃げられなかった。 人間さんはれいむを虐待しなかった。 れいむは解放された。 過去作 anko2580 愚かなれいむ anko2474 ゆっくりEQ-ぱちゅりーの苦悩 anko2472 ゆっくりEQ つぶらんぼあき
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1488.html
*初投稿っていうかSS処女作なのぜ *だから、至らないところだらけだと思うけど、生温かく読んでくれれば幸いなのぜ 作・もっちもちあき 「今度の日曜、ゆっくりショップ行きたいんだけどつきあってくれるか?」 日曜 友人の愛であきに誘われ、今日はゆっくりショップに来ている。 俺自身はゆっくりにはそれほど興味がないのだが、友人がお前も飼ってみたらどうだというのでついてきた。 店内は、ゆっくりしていってね!という、ゆっくりの声で少しうるさい。 最近は、野良ゆも定期的に駆除されているらしく、昔ほどは見ない。 愛であきは、すでに金バッチのまりさを飼っている。 今日は番が欲しいとまりさが言うので、買いに来たらしい。 「お、これなんかいいかも」 ショーケースの中の金バッチありす。品も良さそうだ。 しかし、たかが”ゆっくり”ごときに10万はないだろう。 そう思ったのだが、愛であきは、なんとそいつを買うらしい。 (俺には考えられん…) 赤ゆお徳用パック5匹980円が目に留まる。 (成体ゆっくりは高いし、お試しでこれでいいか) 「おいおい。バッチ無しで、しかも赤ゆは初心者には飼いづらいぜ」 会計を終えた愛であきが来てそう言う。 「しかしなあ…。万単位はちょっとなあ…」 もともと、それほど興味があったわけでは無い。 「バッチ付きは教育済みだから、余計な手間とかいらないぞ?」 「しかし、バッチ付きは高いんだよな~」 「風俗我慢すれば買えるべ」 悩んでいると店員が 「それなら、このゆっくりはどうでしょう?」 と言って、1匹の銅バッチれいむを薦めてきた。 特価品3900円、サンキュー価格と書かれている。 「お、れいむ種は初心者に飼いやすいし、いいんじゃないか?」 「なんでこいつは特価品なんですか?」 俺は店員に聞いてみる。 「あー、一度野良レイパーありすにすっきりさせられちゃったんですよね。でも、すぐ助けたんで全然問題とかは無いんですけど、気にする人はしますんで、お値段がお求め安くなっているんですよ」 (ふ~ん。ま、これでいいか) 「じゃあ、これ下さい」 「ありがとうございます」 すると、右手のお徳用の袋の赤ゆが騒ぎ出した。 「おかーしゃん!おかーしゃん!」 「すみません。そのとき生まれた赤ゆが、ちょうどその袋に入ってたみたいですね」 少し、思案した後 「じゃあ、これもいいすか」 「え?いいんですか?どうもありがとうございます」 その様子を見ていた愛であきは 「赤ゆまで買ったのか?飼い難いぞ?」 そのとき、それまでずっと下を向いていたれいむが 「おにいさん、れいむのおちびちゃん達をたすけてくれてありがとう。おにいさんはゆっくりできるにんげんさんだね」 と言った。 家にれいむと赤ゆ5匹(れいむ3匹ありす2匹)を連れ帰る。 部屋を荒されないように、部屋の一角に柵を作り、そこにゆっくり達を入れる。 (ある程度の教育は受けてるんだよな) 「うんうんとしーしーはここでしろ。あと、飯は俺が持ってきてやるから。狭くてもしばらくは我慢してろ」 「ここがれいむたちのゆっくりぷれいすなんだね。ゆっくりりかいしたよ」 「おかーしゃん!さくしゃんあってしぇまいよう!」 「とかいはな、あまあましゃんほちいわ!」 「おちびちゃんたち。おおきくなったらおにいさんもだしてくれるから、ゆっくりおかあさんのいうことをきいてね」 とりあえず、赤ゆはぎゃあぎゃあウザいが、親れいむが躾けてくれているおかげか、 それほどひどい状況では無い。柵からは出てこないし、それほど手間はかかっていない。 まあ、愛であきみたいに抱っこして服着せて、みたいなことはやりたいとは思わないし。 ちょっと、仕事の愚痴を親れいむにするくらいでちょうど良かった。 3か月くらいたつと、赤ゆも子ゆになって、柵が狭くなってきた。 赤ゆの時は餌なんて大したことないのだが、最近は餌の減りが早い。 (俺の安月給じゃ、こいつら全部が成体ゆっくりになったら、飼うのは無理ぽ) しかし、あげるといっても、いくら親ゆに躾けられたとはいえ血統書も無い、バッチ無しなので貰い手もいまい。 さてどーすんべ。 思案にくれていると、愛であきが困った様子で話しかけてきた。 「なあ、うちのまりさとありすをちょっと預かってくれないか?」 輸出部にいる愛であきは、会社の出張で1ヶ月間、家を空けるのだという。 さすがに1ヶ月はゆっくりだけでは暮らせない。しかも、最近一粒種の赤ゆまりさも生まれたらしい。 (めんどくせ~…) 「うちの子はいい子だし、手間かかんないからさ」 「仕方ねえな。餌代置いてけよ」 というわけで金バッチのつがいとそのガキを預かる羽目になった。 愛であき自慢のゆっくり一家がやって来た。 「ゆっくりよろしくおねがいします」 金バッチだからか礼儀はいいみたいだ。 ゆっくりの餌代は、愛であきが置いていった分だけで9匹分でお釣りがくるくらいだった。 まあ、愛であきは好物どうの言っていたが覚えちゃいない。 うちの連中にやってる、ゆっくりフードをくれてやれば充分だ。 柵へ3匹を放り込む。 「ゆ?せまいよ、おにいさんゆっくりできないよ?」 「そちらのそふぁーさんにすわらせるのぜ」 居候のくせに厚かましい。礼儀正しいのは愛であきがいる時だけか。 飯の時間だ。いつものようにうちの連中は 「おにいさんにかんしゃしてきょうもごはんさんたべようね」 「ゆっくりいただきまーちゅ」 「む~ちゃむ~ちゃ…ちあわちぇ~~~~!」 いつもの光景だ。しかし… 「おかーしゃん!このごはんさんまじゅいよ!めであきおにーしゃんのぱしたさんたべちゃいよ!」 「ゆ!おちびちゃんはそだちざかりなんだぜ!たりないよ!それにごはんさんおいしくないのぜ!」 「はやくあまあまをもってきてね!おともだちのおにいさんはとかいはじゃないわね!」 ビキィ!!! うぜえ… 1週間くらい経ったある日の昼、鬼意山は会社に行っていていない。 れいむ一家は、不満タラタラでストレスがたまっている金バッチ一家になるべく近寄らないようにしていた。 鬼意山からも、客人だからケンカするなと言われている。 しかし、この日事件が起こった。 遊んでいた子れいむが、赤ゆまりさと衝突してしまい、赤ゆが怪我をした。 大した怪我では無いのだが、過保護に育てられた赤ゆは痛みで大泣きする。 「ゆんや”ぁぁ!!!いちゃい!!いちゃいよー!!おきゃーしゃーん!!おとーしゃーん!!」 「どうちよう…。ごめんにぇ…。」 大泣きする赤ゆの横で、おろおろする子れいむ。 「ゆ!ごめんなさいね!おちびちゃんもあやまってね!」 慌てて親れいむが駆けよろうとするが… 「ゆあああ!!まりさのかわいいおちびちゃんになにするのぜー!!!」 「とかいはなありすのおちびちゃんをいじめるなんて、このいなかものぉー!!!」 ドカッ!! 金まりさと金ありすの体当たりで、子れいむは吹っ飛ぶ。 金バッチ一家は、子れいむに体当たりした後、赤まりさをぺーろぺーろしていた。 吹っ飛ばされた子れいむは、結構大きな怪我を負ってしまった。 「おちびちゃん!」 必死に子れいむにぺーろぺーろする親れいむ。 「ゆ… ゆ…」 苦しそうな子れいむ。 「ゆわ”ぁーん!!おねーじゃん!ゆっぐりじでいっでね!」 泣きながら、姉を励ます他の子ゆ達。 そんな様子を見ていた金バッチ一家は 「ふん。うちのかわいいおちびちゃんにひどいことをしたからとうぜんなのぜ」 帰ってくると、子ゆ達が「ゆんやぁぁ」と泣きながら、俺を呼ぶ。 子れいむが怪我をしていたが、親れいむの”ぺーろぺーろ”のおかげで重症化することを防ぎ、 オレンジジュースをかけることにより回復へ向かっているようだった。 俺は、れいむの説明と金バッチ一家の横やりで、だいたいのことを把握した。 「おちびちゃんがぶじで、ほっとしたよ。おにいさん、ゆっくりありがとう」 れいむと子ゆ達が喜ぶ横で、金バッチ一家が口を挟んできた。 「こんな、いなかものといっしょにはくらせないわ」 「まりさたちは、めであきおにいさんのだいじな、かいゆっくりなのぜ。つまり、だいじなおきゃくさまなのぜ。こんなせまいところじゃなくてじゆうに、いえさんをつかわせるのぜ」 「ぷくー!おかーしゃんとおとーしゃんのゆうとうりにちてね」 ビキィ!!! 俺が黙っていると、更に調子にのってきた。 「こんな、どうばっぢさんの、むのうないなかもののげすれいむとは、ゆっくりできないっていってるのがわからないの!」 「まりささまたちは、ゆうしゅうなきんばっちさんなのぜ。だから、めでられてとうぜんなのぜ!」 「おとーしゃんとおかーしゃんの、ゆうこときかにゃいむにょうなぢぢいは、ゆっくちちね!」 ブチ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 何かが俺の中で切れる音がはっきりと聞こえた。 「ギルティ…」 俺は、ちねとかほざいた糞袋を掴み上げる。 「ゆ?おしょらをとんでるみちゃい!」 馬鹿な糞袋はのんきだが、金バッチ糞袋どもは、まがりなりにも金バッチ。 俺の発するただならぬ雰囲気に気がついたようだった。 「まりささまのおちびちゃんになにするのぜ!さっさとはなすのぜ!」 しかし、偉そうな態度に変化はない。 「ゆんやぁぁぁ!!いちゃい!はなしちぇね!はなしちぇね!」 ほんの少し、握る力をこめると、糞袋はケツをプリプリさせながら逃げようとする。 「じじい!ありすのとかいはなおちびちゃんになにするのぉー」 ありすは慌てるが、まりさは冷静だ。 「まりさたちはきんばっちさんなのぜ。じじいのげすれいむよりも、ずっとこうきゅうなのぜ。しかも、かいゆっくりなのぜ。だから、じじいはまりさたちにきがいは、くわえられないのぜ!」 なるほど、さすが糞袋とはいえ、教育を受けた金バッチ。無駄に頭がいい。だが… 「ぷっ!くっくっくっ…」 「じじい!なにがおかしいのぜ!」 「確かに、お前の言う通り、お前ら金バッチどもをどうこうするのは愛であきのこともあるし無理だ」 「ゆ?だったら、はやくおちびちゃんをおろして、おわびのあまあまももってくるのぜ!」 「だがな、生まれたばかりの”これ”には金バッチはないよな?」 「なにいってるのぉぉぉ!まりさとありすのおちびちゃんだから、だれよりもゆっくりしたとかいはなおちびちゃんなのよぉ!」 ありすも会話に入ってきた。 「そ、それにめであきおにいさんはおちびちゃんにも、きんばっちさんとらせるっていってたのぜ!」 金バッチ試験には、たいへんな労力とお金がいる。まあ、愛であきならやりかねんが。 もし、飼いゆの子供にバッチを取らせるなら、自力より、ゆっくりスクールに入れるのが現実的だ。 ただ、この話は”今は”関係ない。 「まあ、バッチが”今は”無い、このおちびちゃん(笑)とやらを俺が潰しても問題ないんだよ。弁償する必要も、罰せられることも無い」 それを聞いて、金バッチ糞袋どもが青ざめる。状況をゆっくり(笑)把握したようだ。 「ゆぁぁぁ!!!おにいさん、ごめんなさいなのぜ…、いや、ゆっくりごめんなさい!」 「おにいさん、よくみるとすごくとかいはね!すてきだわ!」 2匹は完璧に俺に媚び始めた。野良とはここら辺が違う。 だが、 「俺は、ギルティって言ったろ。ちねなんて言った糞袋は潰してやる」 「「ゆやぁぁぁぁぁ!!!やめでぐださい!!おぢびじゃんをゆっくりざぜであげでぐだざい!!!」」 金バッチ糞袋が泣き叫ぶ。糞袋を握る手に、じょじょに力を込める。 ぐにゅり… 「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!いちゃいよう”う”!!!!!」 赤糞袋も泣き叫ぶ。 「ゆっくりゆるしてあげてね!おにいさん!」 ん? 俺は思いもしない制止の声に驚いて、握る手を弱める。 「なんだ、れいむ。お前のガキを潰そうとした奴を庇うのか?」 俺は、れいむがなぜ止めたのかわからない。 「おにいさん…、そのきんばっちさんいっかは、れいむたちにゆっくりできないいじわるするし、あんまりすきじゃないのはたしかだよ」 じゃあ何故と言おうとする俺よりも早く、れいむは言葉を続けた。 「れいむはおにいさんがだいすきだよ。おちびちゃんもたすけてくれて、れいむといっしょにゆっくりさせてくれたよ」 それをきいていた子ゆ達が 「「「「「れいみゅたちもおにいしゃんが、だいちゅきだよ!!!」」」」」 「れいむはそんなゆっくりしたおにいさんが、ゆっくりのおちびちゃんをゆっくりできなくするのをみたくないよ…」 俺は、このれいむの発言にただただ驚いた。ゆっくりなんてものはもっと馬鹿だと思っていたからだ。 「ふぅ~」と俺はため息をつく。 正直、限界に近いストレスの”持って行き場”を途中で奪われたことで、なんともいえないドス黒いもやもやが胸をざわざわさせる。 さっきまでなら、握りつぶすだけでスッキリできたが、今は違う。 どうやら、俺のある部分に火がついてしまったようだ。何ともいえない初めての気分だ。 俺は赤ゆを持ったまま台所へ行き、コンロの火を点ける。 そうして、あんよを焼き始める。 「ゆぎゃぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!あちゅい!!あちゅいいい!!!」 あんよを焼いて歩けなくすると、今度はおろし金を取り出して、赤ゆの後頭部を削り始める。 「いぎゃぁぁぁ!!!!!!!!!!!」 おにいさんが赤ゆを”おしおき”しているようだ。凄まじい泣き声が聞こえてくる。 れいむは怯えるおちびちゃんたちに、すーりすーりしながら隣りをちらりと見る。 金バッチさん一家は、「おぢびじゃんをかえしてえええ」といい、涙を流して半狂乱だ。 れいむはあのゆっくりしたおにいさんが、こんなひどいことをする理由を考えていた。 (そうだ!れいむのおちびちゃんをきんばっちさんいっかがいじめたからだよ。おにいさんは、れいむたちのためにやっているんだよ) (れいむはとめたけど、おにいさんはれいむがだいじだから、ゆるせなかったんだよ) (おにいさんは、れいむたちのことを”あいして”いるからだよ。やっぱり、やさしいゆっくりしたおにいさんだよ) れいむはシングルマザーだ。といっても、望んでなったわけではない。 レイパーありすの強制すっきりで、シングルマザーになった。 飼いゆとしてペットショップで育ったれいむ。 生まれてから、番とゆっくりしたことはない。 そう、れいむは、はじめてゆっくりを与えてくれた、鬼意山を愛してしまっていたのだ。 俺は手を洗っていた。 おろし金である程度削って悲鳴をあげさせて楽しんだ後、 赤ゆを床に置き、金バッチ番の前まで戻ると、拳を固め赤ゆに鉄槌を落とした。赤ゆの、猛烈な断末魔が家に響いた。 ぐちゃっと潰すと、何とも言えない”ヒャッハー感”にすっかり満足する。 (ふ~、ゆっくりを潰したのは初めてだが、ゆ虐を楽しむ人の気持ちわかるわー) 「「ゆぎゃああああああ!!!!!おぢびぢゃああああああん!!!!!」」 泣き叫ぶ金バッチども。 「おまえなんか、めであきおにいさんにせいっさいしてもらうのぜ!!」 突然、金バッチまりさがそう叫ぶ。 「そうよ!とかいはなおちびちゃんを、かわいいがっていためであきおにいさんが、いなかもののじじいをせいっさいするわ!!」 ありすもそう叫ぶ。 俺は、しばし考える。確かに俺が罰せられることは無い。 だが、愛であきは怒るだろう。こんな、キモウザい糞袋を本気で可愛がっているからだ。 (めんどくせえことになるのは嫌だなあ…そうだ、いいことを思いついた!) 「じじい!なにうすわらいをうかべているのぜ!ゆるさないのぜ!」 俺は金バッチどもを無視すると、れいむへ向き直る。 「おい、れいむ、話がある」 いきなり呼ばれ、れいむはびっくりする。 「ゆ?おにいさん、どうしたの?」 「実はな、れいむ。俺の経済力では子供どもが成体ゆっくりになったら、全部は飼えないんだよ」 「ゆ?!」 これは事実だ。この問題と、現在の懸案事項を一気に片付けてしまおう。 「だからさ、間引こうと思うんだ。そうだな、レイパーどもの面影のある、ありす種の2匹がいいかな」 れいむは俺の言ってることがなかなか理解出来ないようだ。その餡子脳で必死に俺の言うことを理解しようとしている。 「ゆ?このこたちもれいむのかわいいおちびちゃんだよ?おにいさん」 おーおーさすが、ぼせい(笑)あふれるれいむ種だこと。 俺は、ありす種の子ゆ2匹を両方の手で1匹づつ持つ。 「「ゆ?おしょらをとんでるみちゃい!」」 「おにいさん!ゆっくりやめてあげてね!」 れいむがすがる様な目で俺を見る。 「いいか、れいむ。このままじゃ全員飢え死にだ。分かるな、だから、これは必要なことなんだ」 なーんてね(笑) れいむは、すごく悲しそうな顔で考え込んでいる。 「で、でもおちびちゃんがだいじだよ。れいむもかりをしておにいさんをたすけるよ」 「あのな、生粋の飼いゆのお前に出来んのか?無理だろう」 「でも…」 言葉を濁すれいむに、俺は提案する。いや、提案っつうか反応見て楽しむだけだけど。結果は決めてるし。 「お前に決めさせてやるよ、れいむ。2匹間引くか、一家全員で野良になるかだ」 れいむは考え込んでいる。そりゃそうだ。 いくら、おちびちゃんが大事でも、これから冬になるのに子ゆ連れて野良になんかなったら、あっという間に全滅だ。 その時、子れいむどもが 「れいみゅは、おにぇいちゃんたちがたちゅかるなら、のらになるよ」 「れいみゅも、ごはんしゃんゆっくちがまんしゅるよ」 その様子を涙目で見ていたれいむが 「おちびちゃんたち…。おにいさん、れいむがひとりでのらになるよ!」 「あのなあ、お前は銅バッチでガキどもの面倒を見てもらわなきゃ困るんだよ。さっき言った通り、どちらかを選べ」 れいむも分かっていた。 野良になんか、到底慣れないことを。 この、ゆっくりしたれいむのかわいいおちびちゃんたちを犠牲には出来ない。 でも、レイパーの面影があるとはいえ、あの子達も助けたい。 しかし、おにいさんの言葉から両方は選べそうにない。 そもそもなんで、愛にあふれているゆっくりした、れいむのおにいさんがこんな酷いことを言うのか。 (おにいさんは、れいむをあいしているからこそなんだよ) (おにいさんは、かちょうだから、いえさんをまもるひつようがあるんだよ) (しょうがないから、こころでないて、れいぱーのおもかげがあるこをまびいて、れいむのこころのきずをいやそうとしているんだよ) (おにいさんも、れいむをだいじにおもっているんだよ) 「ごめんね…、おちびちゃんたち…、ちからのたりないおかあさんをゆるしてね…」 れいむは、結論を出したようだ。 「ということだ。お前らはおかあさんにも見捨てられましたー。おお、みじめみじめ(笑)」 「「ゆんやああああああ!!!!!おかーしゃん、どぼぢでそんなこというのおおおおお!!!!!」」 1匹のあんよを焼いて、逃げられなくすると、もう1匹は金バッチどもの前に落とす。 「ゆ?」 それまで、ことのなりゆきを見ていた金バッチ達。 この2匹にとって、”自分の飼いゆを潰そうとする鬼意山”という目の前の光景が信じられなかった。 美ゆっくりとして生を受け、金バッチになるために大切に育てられ、飼い主に愛でられている2匹は、 他人ならともかく、飼い主が飼いゆを潰すなんて発想がなかった。 そのため、怒ることを忘れ、えもしれぬ恐怖感におそわれていた。 金まりさが鬼意山に抱えられる。 「な、なんなのぜ?」 そして、手を離す。その、真下には子ありすが…。 ぶちょりと、子ありすが潰れる。 「ゆ、ゆやあ”あ”あ”ぷべ…、もっと、ゆっくちちたかった…」 カスタードをぶちまけ、子ありすは金まりさの重みで絶命した。 親れいむは、子ゆ3匹と寄り添い、目を閉じ、震え、耐えていた カシャッ! 「決定的瞬間ゲットだぜ」 俺は、にやりと笑う。 「さて、金馬鹿まりさ。おまえはゆっくり殺しだなあ」 「まりさのせいじゃないのぜ!じじいのせいなのぜ!」 「知らねーよ。それより、見ろよこの写真。良く撮れてるぜ~、お前がうちの飼いゆっくりを潰した瞬間が」 「なにをいってるのぜ!」 「自分の飼いゆを潰されて、鬼意山カナピー。こりゃ、せいっさいとして赤ゆを潰してもしょうがねーなー」 「!!」 言葉に詰まるまりさ。ありすも、ゆんゆん泣いている。さすが、腐っても金バッチ。話が早い。 「めであきおにいさんは、まりさたちのことをしんじるのぜ!」 無駄な抵抗だっつうの。こっちは、証拠さんもあるんだっつーの。 「俺はな、めであきとは昔からのマブダチなんだよ。お前らなんか信じるかよ」 ふー、いいだろ。物分かりがいいようにしてやろう。 俺は、俯いてすすり泣く金ありすの背中の皮をむしった。 「ゆぎゃあああ!!!」 いきなりの痛みに金ありすが、じたばたする。 何か言う前に、金まりさの頭を掴んで、こちらを向かせると 「いいか、これ以上くだらねえことを言うなら、毎日痛めつけてやる。帰るときに愛であきには、そうだな…”鬼意山の子ゆ潰してごめんなさい”とでも言え」 返事は無い。 俺はまた、金ありすをむしる。 「ゆぎゃあああ!!!」 「どうなんだ?」 「ゆっ…く…り…りかい…したの…ぜ…」 それから、金バッチどもを愛であきが引き取りにくるまでの間、 あんよを焼いた子ありすを、針で刺したり、おべべ(笑)をえぐったり、 適度にオレンジジュースをかけつつ虐待した。 これは、俺がゆ虐に目覚めたからというのもあるが、金バッチどもへの警告の意味もあった。 ”わかっているよな” 毎日、子ありすを見せては、金バッチどもに、俺への恐怖心を植え付けた。 愛であきが帰ってくる前日、俺は子ありすを風呂場で、掴んだまま浴槽に沈め、限界になる直前に握りつぶした。 ん~、すっきりーできたよー。 そうしていると、愛であきが帰ってくる日となり、金バッチどもを連れ帰ることになった。 めであきに、赤ゆが潰れた事情を話す。(もちろん俺設定のね) 金バッチどもも、俺が恐くて本当の事は言えないようだ。感心感心。調教成功だね。 「そうか…。すまなかったな…。大事な子ゆを…。まりさも悪気があったわけじゃないんだと思う。許してくれ…」 「いいんだ、愛であき。俺の不注意だったんだよ。柵も狭いしな」 ふひひ。 愛であきたちは帰っていった。 「俺も飯でも買いにいくか」 愛であきは帰り道で、まりさとありすに話しかける。 「今日は、お前たちのために、たくさんあまあまとカルボさん用意してるからな」 「「ゆわ”ああん!!さみしかったよぉぉ、めであきおにいさぁぁん!おちびちゃん…、うう、ゆわ”あああーん!!!」」 「よしよし。ゆっくりしような」 「「ゆっくりしていってね!」」 俺は、俺の飯とゆっくりフードを買い、帰る道すがら、野良れいむ親子を見つけた。 親れいむと、子ゆ…、いや赤ゆ2匹と、番のまりさだ。 … 「おい、飯だぞ」 俺は親れいむと子れいむ3匹の前に、ゆっくりフードを入れた皿を置く。 親れいむが俺のことを見て、祈る様な目つきで問いかけてきた。 「おにいさんはれいむのこと、おちびちゃんたちのこと、かぞくだとおもってるの?」 最近、子ゆは俺のしていたことで怯え気味だ。 子ゆも、俺を直視してはいないが、祈る様な目つきだ。 「家族だと思ってるよ」 「ゆゆ!!おにいさん!!やっぱりおにいさんはれいむたちのことあいしてくれているんだね!!」 「「「よかっちゃよ!!おにいしゃん!!」」」 れいむはおにいさんをうたがったことが、はずかしかったよ。 れいむは、おにいさんを、ゆっくりあいしているし、 おにいさんはれいむを、ゆっくりあいしてくれているんだよ。 … 鬼意山の庭では、先ほどの野良一家が、 蹴られ、踏みつぶされ、ぐちゃぐちゃになって全滅していた。 前編終わり (なんか長くなりそうなので、きりのいい所で投稿してみます。続きも書く予定です)
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4297.html
※こんな作品なんて投棄所送りだ ある日、群れの中のゆっくりぱちゅりーが言いました。 「ドスなんてバカだわ。バカでマヌケでやくびょうがみだわ!」 すると、すぐにドスの側近のゆっくりまりさ達に捕まりました。 何日も食事をさせてもらえなかったぱちゅりーはとうとう自分の考えを曲げ謝罪しました。 「ごめんなざい、ぱちゅりーがまぢがっでまじだぁ!!」 しかし、まりさ達はぱちゅりーを許さなかった しばらくして、ドスが悪い事をしたゆっくり達の檻を視察に訪れ、 ぱちゅりーを見つけると、どんな悪い事をしたのかとまりさ達に尋ねた。 「このぱちゅりーはドスのひみつをバラすゆっくりできないぱちゅりーなんだよ」 まりさ達の言葉にドスは感心し、秘密を漏らす奴はどんどん捕まえるように頼んだ。 しかし、ぱちゅりーはこう反論した。 「ぱちゅりーのいったことはみんながしってることだよ!!」 すると、まりさ達はこう答えた。 「ドスはしらないでしょ!!」 ゆっくりきもんげの一家が渡り切ると、ゆっくりうどんげに成れる丸太を見つけた。 丸太は川にかかっており、落ちたら一大事だったが、 お父さん、お母さん、お姉さんはどんどん丸太を渡り切り、可愛いうどんげになった。 ただ一匹、末の妹が丸太から落ちそうになった。妹は何度も助けを求めたが、 「キモいきもんげなんかたすけないよ。ゲラゲラゲラ」 と、うどんげ達は答えた。 ゆっくりとピザの違い。 ピザはオーブンで焼いても騒がない。 長としてのドスまりさのマニュアル (1)ドスまりさを信じよ (2)性能に疑問が生じた時は(1)を読め ドスまりさに管理された群れのゆっくりまりさが虐待お兄さんに捕まったれいむに会いに来て尋ねた。 「そっちはゆっくりできる?」 捕まったれいむは何を言っているのか、と少しムッとして答えた。 「あといっぽでじごくだよ!!」 群れから来たまりさは答えた。 「まりさたちのほうがいっぽすすんでるね!!」 罪を犯したゆっくり達が閻魔の裁きを待っていた。 ゆっくりれいむ、自分は働かずにいたが、子の面倒はよく見た。天国に行け。 ゆっくりまりさ、乱暴者であったが、家族の為によく働いた。天国に行け。 ゆっくりぱちゅりー、他のモノを見下していたが、知恵で皆を救った。天国に行け。 ゆっくりありす、周りの者と打ち解けずにいたが、伴侶への愛は強かった。天国に行け。 おい、ゆっくりらん、お前はちぇんを残しているだろ。現世に帰れ。 ゆっくりらんは泣いて、閻魔の元から去った。 別の日、罪を犯したゆっくり達が閻魔の裁きを待っていた。 ゆっくりれいむ、子の世話はしたようだが、働かずに迷惑をかけた。地獄に行け。 ゆっくりまりさ、狩りは上手いようだが、他のモノに乱暴をした。地獄に行け。 ゆっくりぱちゅりー、知恵は優れていたが、周りのモノをバカだと嘲笑った。地獄に行け。 ゆっくりありす、伴侶への愛は強かったが、レイプして無理やり伴侶にした。地獄に行け。 おい、ゆっくりらん、お前はゆかりを残しているだろ。現世に帰れ。 ゆっくりらんは泣いて、閻魔の元から去った。 ある日、ペットショップから貴重なゆっくりけーねが逃げ出した。 ペットショップはけーねに懸賞金をかけました。 愛でお兄さんが人を集め、あらゆる場所を捜索しましたが、見つかりませんでした。 それを見た虐待お兄さんは森に入り、30分ほどで森から出てきました。 手にはボロボロになったゆっくりまりさが一匹。すると、まりさがこう言いました。 「ゆっくりけーねだよ」 大きなスィーに乗ったゆっくり達は、素敵なゆっくりプレイスに向かって発進したが、 途中、不慮の事故にあい。スィーは谷底深くへと落ちていった。 それを見ていた虐待お兄さんが突然泣き出した。 友人は大嫌いなゆっくりが死んだのにどうして泣くんだいと質問すると、 「俺がいない場所があいつらにとって一番素敵なゆっくりプレイスなんだ」 まりさが三匹いた。 一匹目のまりさは言いました。 「まりさはおさなんだよ。むれをまもるためならいのちをおしまないよ!!」 二匹目のまりさは言いました。 「まりさはつよいんだよ。それをみせつけるのにいのちはおしまないよ!!」 三匹目のまりさが言いました。 「まりさはたいせつなんだよ。それをまもるためにほかのいのちはおしまないよ!!」 ゆっくりありすは死に瀕していた。 虐待お兄さんに追い詰められ、ナイフで頬を数か所刺され、どんどんとクリームが漏れ出す。 しかし、虐待お兄さんの視線は傷や恐怖するありすの顔でもなく、人間の腕ほどはあるぺにぺにだった。 「あ、ありすだってこわいときはちぢまるのよ、いなかものめ、わらうがいいわ!!」 男はまだ赤ちゃんのゆっくりれいむに様々な芸を教え込み、 これで見世物でも始めようと思った。 手始めに、街の喫茶店に行き、コーヒーとクッキーを注文すると、 主人にここで客を取っていいか尋ねる為、ゆっくりれいむを取り出した。 「ちょっといいかね、主人」 「あ、お客さん、すいませんね。よく入り込むんですよ」 主人はゆっくりれいむを叩き潰した。 赤ちゃんれいむは悲しみに暮れていた。それを見かけたゆっくりありすが声をかける。 「どうしたの?」 「おかーしゃんがしんじゃって」 「かわいそうに、ゆっくりできるの?」 「うん、おかーしゃんはたくさんのごはんをのこしてくれたの」 次の月、また赤ちゃんれいむが悲しみに暮れていた。またありすが声をかける。 「どうしたの?」 「おとーしゃんがしんじゃって」 「かわいそうに、ゆっくりできるの?」 「うん、おとーしゃんはキレーなおうちをのこしてくれたの」 また次の月、またまた赤ちゃんれいむは悲しみに暮れていた。またまたありすが声をかける。 「どうしたの?」 「おねーしゃんがしんじゃって」 「かわいそうに、ゆっくりできるの?」 「うん、おねーしゃんはゆっくりできるおかざりをのこしてくれたの」 ある日、ありすは赤ちゃんれいむの家を訪ねてみた。 群れのみんなに聞いたが、今月はれいむの家族に死んだゆっくりはいないらしい。 悲しみを和らげるためにも、散歩に誘おうとやってきたのだ。 しかし、赤ちゃんれいむは悲しみに暮れていた。 「どうしたの?」 「こんげつはまだだれもしなないの」 ある日、イタズラ好きのゆっくりまりさはとうとうお母さんれいむを怒らせた。 「ゆっくりできないわるいこだね!!」 大きな声で叱る母れいむはこう続けた。 「おとーさんだって、たいどがよかったからドスになんかいもゆるしてもらえたんだよ!!」 ドスまりさは食料の確保に躍起になっていた。 「みんな、もっとはたらいてね!!」 しかし、側近のぱちゅりーはドスにこう言った。 「そんなことしたら、みんなしんじゃうわ!!」 群れのみんなはドスを支持してこう言った。 「あまあまがふえるね!!」 よだれを垂らし、みすぼらしい格好をしたゆっくりまりさが1匹。 「ゆっ!あれはおさこうほのまりさだわ」 「むきゅー・・・あんなのぜんぜんおさのうつわじゃないわ」 ぱちゅりーの言葉にありすは反論した。 「こうほになら、あのれいむだってなれるのよ」 ある日、胴つきのゆっくりらん、いく、てんこが飛行機に乗っていたが、 飛行機のエンジンが不調になり、運転していたお兄さんは早々とパラシュートで脱出してしまった。 「ら、らんはちぇんのためにしねないよ。らんはぜったいたすからなきゃいけないんだよ!!」 そう言って、らんはパラシュートをつけて飛び出してしまった。 「うわぁあああ、総領娘さまぁ、いくのことはいいですから、総領娘さまがパラシュートをおつかいくださいぃいい!!」 てんこも悲しそうに先ほど降りて行ったらんを見送る。 「あのらんめぇ!!総領娘さまぁ、ゆっくりせずにおにげくださいぃいい!!!」 「・・・てんこのおかしがはいったリュックをらんはぬすんでいきました。はじしらずならんがいた!!」 二人はパラシュートで脱出した。 ドスまりさと人里の長が神様の所にやってきました。 「神様、あと何年すれば人間は幸福になれますか?」 長の質問に神様は答えた。 「あなたの任期中には無理でしょう」 「かみさま、あとどれぐらいゆっくりすれば、ゆっくりはしあわせになれますか?」 ドスまりさの質問に神様は答えた。 「わたしの任期中には無理でしょう」 すっきりの後、 ゆっくりまりさの5%はそっぽを向きそのまま眠てしまった。 25%はベッドから起きてご飯はむしゃむしゃし始めた。 残りの70%はれいむのもとに返っていった ありす、まりさ、れいむが集まり、それぞれ出ているSSについて文句を言っていた。 「いじめ系SSなんてちっともゆっくりできないわ」 ありすがプンプン怒ると、まりさは少しバカにしたようにこう言った。 「まりさがでてるジャンルものなんて人間さんよりずっと強いお姉さんが出るんだよ」 二匹をバカにするように、れいむはこう言った。 「ドロワ系なんて、ゆっくりが主役じゃないんだよ・・・」 偉大なる群れの長、ドスまりさは幼少の頃すでに今と同等の知能を身につけていた Qゆっくりまりさと神の違いは何か? A神は自分の事をゆっくりまりさだと思った事はない。 群れの長であるドスは群れの食料備蓄に関する仲間達の不安を知りたいと考えて、大掛かりな意識調査を命じた。 会議で、その結果がぱちゅりーから報告された。 「この調査によってわが群れは大きく二つのグループに分かれることが判明しましたわ。楽観派と悲観派、楽観派はいずれはうんうんを食べることになるだろうと予想しています」 大統領はびっくりして言葉を挟んだ。 「それが楽観派?すると悲観派は・・・」 「むきゅー・・・悲観派は群れ全体にはうんうんが行き渡らないだろうと心配してるわ」 ゆっくりまりさとゆっくりありすがある養鶏場を訪れた時 案内人「ここの雄鶏は日に50回もセックス、つまりすっきりをします」 ありす「まあ・・・それじゃそのことをまりさにいってあげてね」 案内人「・・・という事でしたが。」 まりさ「そのおすどりさんがすっきりをするときはいつもおなじあいてなの?」 案内人「いいえ、全部別々の雌鳥が相手ですよ。」 まりさ「じゃあ、そのことをありすにいってやってめ!!」 ゆっくりれいむの一家の巣が落石により入り口が塞がれてしまった。 何匹もの子ども達が死んだ凄惨な事故だったが、 群れの仲間の必死の救助活動で数匹の子れいむが助けられた。 2ヶ月も巣に閉じ込められていたというのに、子れいむ達はやつれた様子もなく、 元気に外を走り回った。 ゆっくりまりさ達の住む場所は何もない荒野だった。 ある日、神様が何か望みはないかとやってきてた。 まりさ達はいろんな恵みを挙げていった。 たくさんの食料や過ごしやすい気候、天敵のいない森に快適な巣。 最後に優秀な指導者という前に、神様は消えてしまった。 それ以来、まりさ達の恵みは全てドスまりさが独り占めしている。 by118
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1000.html
元野良れいむの里帰り 「れいむはゆっくり里帰りするよ!」 食事中、口をモゴモゴとさせながら考え事をしていたれいむが 突然飯粒を撒き散らしながら叫んだ! 私は4つに割った豆腐ハンバーグの一つを口に入れてゆっくりと租借する。 最近はがっつり肉!縦横無尽に肉!などといった野性味あふれるメリケンチックな 食生活よりもこういったヘルシーな食事を好むようになっていた。 余り野菜の処分にも最適だ。そもそも日本人は何百年も穀物中心の食生活を送っていたのだ。 それをここ十数年で肉中心の食生活に移行する等という行為そのものが 「むししないでねっ!」 れいむがお膳に乗ってぽいんぽいんと跳ねる。 私は茶碗を持って視線を逸らす。うるさいったらありゃしないよ。 「ゆっくりきいてねっ!馬鹿なにんげんさんっ!」 れいむはやや踏ん反り返り気味の姿勢で眉毛をきりっ!とさせて すぅっと息を吸い込むと元気一杯に叫んだ。 「れいむはゆっくり里帰りするよ!」 「そうか、じゃあブン殴っていいな」 れいむは自信ありげな、きりっ!とした顔のまま拳を頬にめり込ませて 残像を残しながら吹き飛んだ。 「ゆべしッ!」 そういえば「ゆべしもち」ってどんな食べ物なんだろう?餅なのか? おぉ、ももてつももてつ。 殴られたれいむはもみあげで両目を押さえながら「目がみえねぇ」と咆哮して畳を転げまわった。 「おねがいしますから、ゆっくりきいてくださいね」 すんすんと咽び泣きながられいむが語りはじめた。 れいむは元々は野生のれいむであった。 れいむが住んでいたゆっくりプレイスはとてもゆっくりしたプレイスであったが、 たまにゆっくりが失踪したり、たまにゆっくりが茎を生やして死んでいたり、主にまりさが突然死んだり、 「とてもこわいわ」とぺにぺにからカスタードを垂らしながらありすが怯えだしたりと ゆっくりながらも時折起こる「いへん」に困り果てていた。 「最後のありすが犯人だよね」 私の問いかけを無視してれいむが話を続ける。 れいむは新たなプレイスを求めて旅にでた。 苦難につぐ苦難。そしてありとあらゆる困難がれいむに襲い掛かった。 何度も心が挫けそうになった。いや、実際挫けて2、3日不貞寝したりした。 そんな長い長い旅路の末にれいむは新たなゆっくりプレイスを見つけたのだ。 「なんでそんなゆっくりがここで飯くってんの?」 「れいむは・・・れいむは「しあわせー」になったよっ!」 ポロポロと涙を零しながらも満面の笑みを浮かべてれいむが叫ぶ。 「だかられいむは「れいむはしあわせだよー」って群のゆっくりに報告しにいきたいよっ!」 私の足元で一心不乱にゆっくりフードを貪ってた筈のまりさが 「いいはなしなんだぜ」と澄んだ瞳からスーッと涙を流している。 また何時ものれいむの奇病か、と最初は思った私だが 中々どうしてこの暴飲暴食を繰り返すクソ饅頭にしてはいい心がけである。 そんなことを考えていたのか。知らなかったなー 私は茶碗をお膳に置いてパン!と手を叩いた。 「そうか、よし!じゃあ今度の休みはれいむの里帰りだね」 私は木の枝を杖代わりにしてフラつきながらも何とか歩みを進める。 進めど進めど視界に入るのは鬱蒼と茂った原生林。 唾を飲み込むも、ただ喉がゴクリとなるだけで、カラカラに乾いたそれを潤す事はできない。 思わず咳き込む。息を切らしながら辺りを見回す。今は一体何時であろうか?昼なのか?夜なのか? 今思い起こせば「れいむがみちあんないするねっ!」等という台詞そのものが死亡フラグ丸出しではないか。 そんな「沼に城建てたいです」と同意の無謀な申し出に何の疑問もなくついてきてしまった結果が 「ごらんの有様だよ!」 私は崩れ落ちるようにその場に倒れこむ。 そのはるか後方を「どぼじでぇぇぇ?」と変な呻き声を発しながら 僅か数時間でガリガリにやつれたれいむがフラフラとついてくる。 逆に聞きたい、どうして産まれて来ちゃったの? 「ぢぐり゛ん゛ざんどごいっじゃっだの゛ぉぉぉ・・・・?」 「竹林さんん?ここにはそんなの生えてないでしょぉぉぉ・・・・?」 ここにはブナの他にカツラ、ハリギリ、アサダ等の木が生い茂っているが、 れいむのいう竹林などこんなところには無い筈である。 そもそも竹林というのは栽培を目的として人間の手によって作られたものの名残りであり、 こんな山の奥地にそんな物があるのは考えられない。 「・・・・今日はここにキャンプを張るぞ」 私は背中に背負った大荷物を地面に降ろす。 れいむの群で一泊しようと考えていたので、 防災リュックに寝袋を詰め込んだ即席キャンプ用品を持ち込んでいた。不幸中の幸いである。 もはや里帰り所ではない。 私にはサバイバルの知識はあまり無かったが、 暫くここでゆっくりと体力を回復させた後、方位磁石で一定の方向へ進めばどこかへ出る筈だ。 とりあえず水分補給。そして体温を落とさないようにして体力を温存するのが賢明。 水分補給・・・・すいぶ・・・ん?・・・あれ? 「なにこれ」 中には何やらモニョモニョとやわらかい物体。 水は・・・・?缶詰は・・・・?寝袋は・・・・?リュックの大部分を占有したやわらかい物体。 その物体はなにやら申し訳なさそうな顔でダラダラと汗を流しながらこちらを見ている。 そんな物体が「ニコリ」と力の無い笑みを浮かべた。 「やってくれた喃」 「・・・ち、ちがうんだぜ」 「やってくれた喃」 「・・・ちょっとした「さぷらいず」のつもりだったんだぜ」 「やってくれた喃、まりさ」 「・・・まさかこんなことになるなんて思わなかったんだぜ」 私はまりさと初めて出会ったあの日の光景を思い出す。 あの時もこんな寒くて薄暗い夜の道だった。 コンビニ帰りの私の前にまりさが通せんぼするように現れて・・・ 「ゆっくりしてい」 「死ねッ!」 あの日と同じように私はまりさを大空へ放りなげた。 願わくばこのまま天に召されますように。 トップーン! この音!? 私とれいむが目を見開いた。 「水か!?」 「ゆっ!おみずさんはゆっくりできるよ!」 こんな所に池があるとは。まさに砂漠のオアシスだ。 息を切らせながら何とか音のした方向へ歩みを進める。 しかし眼前に広がったのは緑色に濁った水面。 湧き水によって構成された池ではなく、窪みに雨水が溜まっただけの沼だった。 こんな色をした水を見たことがある。バスクリンを入れたお風呂だ。 透明度は限りなく0に近く沼の深さはわからない。 まりさはそんな沼の水面に帽子を浮かべ、それに乗ってニヤニヤと笑みを浮かべている。 「あぶなかったんだぜ」 バッチーン!とウィンクしながらフヒュー!と口笛を吹くまりさ。 あぁ、死なねぇかなあいつ。 スカスカになったリュックの中にあった小さな鍋でその液体をすくってみる。 ドロリとした液体。もう何か寒天みたいにプルプルしてる。 「ゆっ!ごーくごーくするよ!」 「しないほうがいいな、これは」 私に制止されたれいむが「どぼじでぇ」とえぐえぐ嗚咽した。 それをいつの間にかれいむの傍らに戻ってきたまりさがなだめる。 「人間さん、まずは手持ちの荷物のチェックをするんだぜ」 無駄に男前の表情で私に提案するまりさ。無駄に眼光が鈍く光る。 残された荷物の中でこの状況の打開策を見出す。真っ当な意見だ。 しかしこいつが言うと無性に腹が立つな。 リュックサックの中から出てきたのは先程の小さな鍋、携帯ガスコンロ、 そして大量のごはんとベーコン つまり残された食料はベーコンご 「なに出してるのぉぉぉぉ!?すぐにそれをしまってねぇぇぇぇ!」 「馬鹿なんだぜぇぇぇ!そんなのたべたらなんか色々あって最終的には死ぬんだぜぇぇぇぇ!」 クワッと形相を浮かべて激昂する2匹。 場合によっては死ぬまでゆっくりしてしまう餡子脳が こんなときに限って即座に危険を察知し本能でそれを食する事を拒絶したが、 私がはふっ!はむっ!はっふっ!とベーコンとごはんを食べ始めると 先程の危険信号も御座なりに早々に「ゆっくりたべるよ」と群がりだした。 「やれやれ」 当然食料はこれだけでない。リュックの中にはまりさが中で食べ散らかした スナック菓子が少々にミネラルウォーターが2本、それにポケットの中にはチョコレートが3枚程ある。 れいむの実家の群の連中へと沢山お菓子を持ってきたのが幸いした。 2匹に食料がある事が知れると寝込みを襲われたり、変な皮算用をして初日にして食料を食い尽くす可能性がある。 余裕を持たせて食料を配分して救助を待つ。狭い日本、嫌でもすぐに助けは来るであろう。 少々ひもじいかもしれないが5日は持つだろう。 私は遭難した不安よりも普段体験できない血沸き肉踊るサバイバルに少しばかり胸を躍らせていた。 ・・・・がっ!それから13日後。 「ゆくり・・・・・・ゆくく」 半日ほど斜め45度に傾いたまま微動だにしなかったれいむが久しぶりに口を開いた。 その傍らにはパンチラスポットで一心不乱に女子が通るのを待つ小学生のような眼差しで天を仰ぐまりさ。 食料はとうに底をついた。 何処かで聞いた「遭難中はやたら動き回ると逆に危険だゾ」 という情報を盲信した為に既に動き回る体力は私たちには残されていなかった。 「むー・・・・しゃ・・・むー・・・・しゃ・・・」 木の根元に生えているキノコに見えなくも無い物体を貪るまりさ。 それを見てれいむがまりさの方へカタカタと顔を向ける。 「まりさ・・・だめだよ・・・・外の食べ物をむーしゃむーしゃ・・・したら・・・」 「・・・・ゆ゛っ?」 「・・・・お家のごはんが食べられなくなっちゃうよ」 「れいむ・・・いまは「ひじょうじたい」なんだぜ・・・そんなにゆっくりしてたら生き残れないんだぜ・・・」 「ゆ゛っ・・・!そうだね・・・ゆっくり理解したよ・・・」 普通逆だよね。 仲良くならんでキノコに見えなくも無い物体を貪る2匹を見つめながら ボーッと携帯コンロのスイッチをつけたり消したりを繰り返す。 もはやツッコミを入れる気力も無い。 コンロの上でボコボコを湯気を立てる緑の液体。 はじめて見たときはとても腹に収める勇気は無かったが、 今となってはもしかしたら大丈夫かも知れないと思い始めた。むしろ全然いけそうな気がする。 いかんいかん、あぶないあぶない。 鍋をコンロからどかしてまりさをじっと見る。 「まりさ・・・こっちへきてくれ・・・」 「ゆっ?なんなんだぜ?人間さん?」 私の消え入りそうな声に気がつき、足元に寄って来るまりさ。 「・・・・この上に乗ってみてくれるか?」 私が指で指し示した先は携帯ガスコンロ。 まりさはコンロの上に飛び乗って怪訝な眼差しを向ける。 「あんまりゆっくりできないんだぜ?人間さん」 私はおもむろにガスコンロのスイッチを捻る。 青々とした炎がまりさの尻を焦がす、チリチリと煙が上がって辺りに甘い臭いが漂う。 「ゆっ!なんかいい匂いがしてきたんだぜ?ゆっくりゆっくり・・・・ゆ゛っぐおおお???」 まりさが華麗なバク転を決めつつ地面に顔をめり込ませた。 「もうすこしだったのに・・・!」 私は無念の表情で地面に拳をたたきつけた。 舌で火傷した部分を舐めようと舌を伸ばすが、届かずに変なポーズをとりながらまりさが叫んだ。 「なっなにしてるんだぜぇぇ!人間さんんんん!」 「虐待SSでしょおおおおお!焼かれなさいよおおお!虐待ばかりの所ですがゆっくりしていってくださいねぇえええ!」 「ゆっくりできるわけないでしょぉぉぉ!がえる゛!!おう゛ぢがえる゛ぅぅぅ!!」 他のえすえすさんだったらそろそろ畑を荒らしたれいむが足を焼かれて 「ゆぎゃー」とか言っててもおかしくない時間帯である。 それなのに何をやってるんだお前たちは!不甲斐ない!不甲斐ないよ! 「いいのか!お前ら!私が死んだらwikiにまともに収録されないんだからなっ!」 「ゆっ!しったこっちゃないよ!お先にどうぞゆっくりと息をひきとってねぇぇぇぇ!」 「飼い主さんに何てこというのぉぉぉ!ばかなの?しぬの?このおちんちん!」 何て醜い生き物だ。ゆっくり、ゆっくり、と連呼しながらも その生涯でゆっくりする事なくただの一度も無く、ゴミを喰らい、無限に存在する外敵に怯え、 逃避するように無計画に繁殖し、宝物のように子供をかわいがる一方で自分に危機がせまればそれをあっさり 「やめてねっ!それもう終わったからねっ!過去にすがるのはやめてねっ!」 「すっきりしろ」 「ゆ゛っ゛?゛」 「そこのれいむとすっきりしろ」 「ゆ゛゛っ゛っ゛??」 私はまりさとれいむを鷲づかみにするとお互いの頬を無理やり擦りだした。 身を捩って私の手から逃れようとする2匹。 「やめてね!れいむとまりさは「ぷらとにっく」な関係だよ!」 「そうだぜ!すぐにやめるんだぜ!人間さん!」 「ネンネだねぇ、こういうのは初めてかい?」 「ゆっくりやめんほおおおおおおおおおおおっ!」 「やめるのぜんほおおおおおおおおおおおおっ!」 「すっきりー」 2匹はあっさりとボタボタと謎の液体を滴らせながら恍惚の表情ですっきりした。 れいむの頭からにょきにょきと茎が生えてそこからにっこりと笑みを浮かべた実ゆっくりが顔を覗かせる。 それを見て恍惚の表情で「んほぉんほぉ」言っていたれいむが目を輝かせる。 「ゆ~♪れいむのおちびちゃんすごくゆっ」 私はれいむの頭から生えた茎を毟り取ると煮えたぎった緑の液体に放り込んだ。 ニッコリと微笑んだ表情のままサッと茹で上がる赤ゆ達。 れいむは「すごくゆっくりしてるよ~」の顔のまま完全に停止している。 「ごめんね。テンプレ台詞最後まで聞くのめんどかったからごめんね」 緑の液体にプカプカと浮いた赤ゆ汁をお椀に移して自分と二匹の前にコトリを置く。 ようやくれいむの餡子脳の処理が追いついてクワッ!と形相を浮かべた。 「な゛に゛じ」 「バカっ!」 私はれいむに平手を食らわせた。これは暴力ではない。心の涙だ。 「ゆびゅ!?」とくぐもった声を漏らしながら地面を滑るれいむ。 顔を上げたれいむはどうして今殴られたの?今こっちが怒ってたよね?どういうこと?どういうこと? と、言わんばかりの表情でキョロキョロと辺りを見回している。キョロキョロしても答えなど無い。 「良く聞きなさい、れいむ!」 私はブライトさんの「殴って何故悪いか」のポーズでれいむに説いた。 「もし目の前に玉子焼きさんがあったらどうする?」→「・・・ゆっ・・・?ゆっぐりとだべばす」 「卵さんは鳥さんのおちびちゃんだけど食べてもいいの?」→「・・・ゆっ!・・・でも卵さんはれいむのおちびちゃんじゃないよ」 「他人だったら食べてもいいの?私とれいむのおちびは他人なんだけど?」→「ゆゆっ・・・!そ、それは・・・!」 「それって差別じゃない?ゆっくりしてないよね?」→「ゆ゛っ!?・・・れっ、れいむはとってもゆっくりしているよ・・・!」 「いまどういう状況かわかってる?」→「と、とってもゆっくりしていないじょうきょうだよ・・・・!」 「今何問目?」→「おうどん!」 「何とか皆で生還しようっていう気はあるの?」→「ゆっくり!ゆっくりじだいです!」 「もし目の前に赤ゆ汁があったらどうする?」→「ゆっぐりだべばす!!」 「ではいただきます」 手をあわせて赤ゆ汁を貪る私とまりさ。 れいむは口をパクパクさせて虚空に目を泳がせるだけである。 しかし私とまりさの手は直ぐに止まる。 コトリと置かれるお椀。 「・・・・い」 「ゆ゛っ?」 かすかに聞こえた一言にれいむは正気に戻る。 しかしこれは聞き間違いである。そんな言葉がこの状況で出る筈が無い。 れいむは意を決して口を開く。 「い、いまなんて」 「まずい!」「まずいのぜ!」 「んおあゆ!!」 まったりとしていなくて、コクがなく、それでいてしつこい。 一見すると抹茶ぜんざいのようにも見えるそれは吐瀉物と甲乙つけがたい仕上がりだった。 生ゴミでも極上の本マグロになるこの状況でこの体たらくは一体どういう事だ。 こんな事をしておいて何だが、まずい!まずすぎる!無性に腹が立ってきた。 「どういうことだ!れいむ!」 「どういうことなんだぜ!れいむ!」 「ゆ゛っ!?ゆゆゆっ???」 れいむは人間とまりさと赤ゆ汁を何度も見回した後に正面を向いた。 「ご、ごべんな・・・・なにいってるのぉぉぉぉぉ!!れいむのおちびちゃんがまずいわけないでしょぉぉぉ!」 もうすこしで「ごべんなざい」する所だったれいむがすんでのところで踏みとどまり お椀に顔をつっこんで一心不乱に赤ゆ汁を貪りはじめた。 「うめっ!これめっちゃしあわせー!しあばぶぜッ!」 探偵物語を思わせる芸術的な赤ゆ汁噴出をするれいむ。 まっず!これめっちゃまずっ!まずいっていうかなんか口が痛い! にっこりと微笑んだ赤ゆが地面をころころと転がった。 「ひぎっ!まずひぎっ!ひぎがなえっ!?」 ビクッ!ビクッ!と痙攣しながら地面をのたうちまわるれいむ 赤ゆを差し出したのにまずいとか言われちゃてるぅ・・・・くやしい・・・!・・・・でもっ!ビクビク! ビクビクするれいむを華麗にスルーしながらまりさが天を仰ぐ 「ゆっ!人間さん!何かがいるんだぜ!」 上空には羽音のような低い振動音が響いた。 虫かとも思ったがその音を発する物体の姿は見えない。 どんどん大きくなる音。もはや到底虫とは思えない。 ガサガサと物体が枝を縫う音が遠くからどんどんこちらに近づいてくる。 ヒュン! 物体が木の隙間から一瞬だけ姿を現して再びその姿を消す。 一瞬見えたそれは生首、振り乱した黒髪、引きつった表情、それは空を飛ぶゆっくりだった。 足元でカタカタと鳴る歯の音に気がついて足元の2匹に視線を移す。 れいむとまりさは目を剥き出し顔を真っ青にして震えている。 「きっ・・・きき「きめぇ丸」だぁぁぁぁぁ!いやぁぁぁぁぁ!」 「ゆっくりできない!きめぇ丸はゆっくりできないんだぜぇぇぇぇ!」 まだそんなに残っていたのかダラダラと冷や汗を流しながら怯える2匹。 ふふっ、なんだ・・・二人ともそんないい顔できるんじゃないか。 まるで心を閉ざした少女が見せた刹那の笑顔を見るご両親のような眼差しで私は2匹を見た。 しかし2匹が口にした「きめぇ丸」とはいわゆる希少種だ。 れいむやまりさといったその辺りの草むらを探せばアホみたいに居る通常種と違って 希少種はその姿を殆ど人前に現さない。 しかも通常種のゆっくり達がその存在を肯定しているだけで、 その姿を実際に見たという者も収められた映像も存在しなかった。 小さい頃、森の中を笑顔を浮かべながらフワフワと舞うように飛んでいる「捕食種」は見たことがあったが、 空を高速で飛びまわるゆっくりなどという荒唐無稽な存在など誰が信じられるだろうか? 「おぉ・・・・」 意外にも先に口を開いたのは希少種、きめぇ丸の方だった。 何時の間に回りこんでいたのか、私たちの後ろで笑顔を浮かべていたきめぇ丸。いや、それ笑ってるの!? 「おぉ・・・・ゆっくりゆっくり」 目の錯覚かと思った歪んだ顔は実際に歪んでいた。 こちらには視線を向けずに虚空に目を泳がせ、時折ヒュン!ヒュン!と音を出して首を振るきめぇ丸。 そのたびにれいむとまりさは「ゆっくりできない!」と恐れおののいた。 ゆっくりする事を信条として、ゆっくりした者ほど賞賛を浴びるゆっくり達にとって 高速移動という行為はゆっくりとは間逆。まさに異端。それが希少種たる所以か。 「お困りのようですね・・・・おぉ、くうふくくうふく」 その物腰は意外にもやわらかだった。 民家の窓を割って進入しておいて「ここは自分の家だ」と主張する通常種との格の違いを伺わせる態度。 しかし次の瞬間きめぇ丸が残像を残しながら移動する。 「私と同じですね」 上空に飛び立つきめぇ丸。その口にはれいむがくわえられている いつの間にかまりさの隣でアホ面をぶら下げていたれいむの姿が無い。 一瞬にしてきめぇ丸に連れ去られたのだ。 ニヤァッ!と主に全身がキモい笑みを浮かべながら高速で首を振り回すきめぇ丸。 一緒にれいむも残像を残しながら高速で振り回される。 「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 カッ!と目を見開いて絶叫するれいむと共にきめぇ丸は飛び去った。 「え?あ・・・ちょっ!ま、待てっ!」 私とまりさが地面を蹴ってそれを追いかけた。 「まるでおそらを・・・・とんでますぅぅぅぅ!!!」 素っ頓狂なれいむの絶叫を辿りながら漆黒の森を走る。 しかし、スピードの差は歴然としており、その差は徐々に離されていく。 徐々に小さくなっていくきめぇ丸とれいむのシルエット。 赤ゆ汁を少し飲んだとはいえ体調は最悪、その上この悪路の山道。見失うのは時間の問題だった。 「だずげでね゛ぇぇぇ!お゛ね゛え゛ざんんんんん!」 もはやきめぇ丸とれいむの姿は見えない。ただ叫び声のする方向へ全力で駆けるしかない。 しかしその時、辺りが俄かに明るくなり森全体を照らす。 姿を見失っていたきめぇ丸が再び視界に収まる。思ったよりもまだ遠くへは行っていなかった。 「ゆっ!人間さん!周りをみるんだぜ!」 まりさの驚いたような声に咄嗟にきめぇ丸から視線を移し辺りを見回す。 先程までブナを主とする原生林が生い茂っていた筈の光景が一変していた。 咲き乱れる竹林。それが回廊のようにどこまでも続いていた。 ボゥと青白い光を放つそれが辺りを明るくした原因だった。 竹林さんどこいっちゃったの? れいむの言葉を思い出す。 ここがれいむの故郷なのか?こんな奥地に竹林があるなんて・・・? 光っているのはコケか何かだろうか? 様々な考えが脳裏をよぎったが、ひとまずそれを完全にシャットアウトする。 今は目の前の希少種かられいむを取り戻す事だ。それだけに完璧に集中する。 「まりさ!」 私の問いかけに「ゆっ!」と返事をしてまりさが大きくジャンプして帽子をポーン!と飛ばす。 帽子の中からこぼれ落ちたのはまりさが水面を移動するときに使う小さな木の棒、オールだった。 それを空中で武器の代わりに口にくわえたまりさは器用に再び帽子をキャッチして私の肩に乗る。 「まかせたぞ!まりさ!」 「ゆっくりまかせるのぜ!にんげ・・・・んざあああああああああああああ!?」 私はまりさの口の中に杖代わりにつかっていた棒を突っ込んでそれを大きく振り上げて加速させる。 手で投げると思ったの?ばかなの?しぬの?主人公気取りなの? ありえないくらいに大口をあけて横に伸び上がるまりさ。主に存在がキモい。 懇親の力を込めて足を地面に叩きつける。 大地が振動して円形状に落ち葉が地面から跳ね上がる。 その衝撃を足から膝、膝から腰、腰から肩、肩から肘を経由して力に変換させて一気に棒を振り下ろす。 遠心力とてこの原理で大地から伝わってきた力は更に増幅してまりさに伝わる。 「んぎょぶばッ」 白目を剥いてまりさが変な呻き声を漏らしながらヒュバッ!っと棒から射出された。 遅れて地面に足を叩き付けた時の轟音が竹林に響く。 私はヘッドスライディングするような姿勢で地面に倒れこんだ。 空気を切り裂き、弾丸のように体を変形させながらまりさが 地球の自転、磁場、重力とかなんか色々な物に逆らいながらきめぇ丸に向かって突進する。 「おぉ、はやいはやい」 ヒュンヒュン!と首を振りながら、れいむを宙へ放り投げるきめぇ丸。 「とんでるのにそこからもっとお空をどんでるぅぅぅ!」 涙を撒き散らしながら上空へ昇っていくれいむ。 きめぇ丸は突進してくるまりさを事も無さげに避け・・・ 「おぉ?」 避けたと思ったそれはまりさでは無く、まりさの帽子だけだった。 きめぇ丸の目がカッ!と見開かれる。 帽子は囮。二段構えの攻撃。 通常種ごときに一杯食わされるとは、おぉ、ぶざまぶざま。 何処から来る?後ろか横かそれとも上か? 何処から来ても主に余裕で避ける自信がきめぇ丸にはあった。 「ばやぐだずげでね!」 まりさはちょっと手前の木の枝に突き刺ささっていただけだった。 主にうっかりミスだった。 「おぉ、おろかお」 しかし次の瞬間きめぇ丸の後頭部に衝撃が走る。視界が歪む。 まさかまりさも囮の三段構えの攻撃? 再び見開かれるきめぇ丸の両眼。 「ゆ゛っぐり゛どおりまずがらね゛っ!」 完全に存在を忘れていたれいむが頭に直撃しただけだった。 きめぇ丸は「おぉ、おちるおちる」とフラフラ地面に落ちる。 それを追うように涙が尾を引きながられいむも地面へ吸い込まれていった。 「人間さん!れいむが落ちるんだぜ!そのまえにまりさを助けてね!」 「そこで死んでくださいね!」 人間は既に起き上がり、落ちるれいむに向かって突進していた。 しかし先程の投擲で殆どの体力を使い果たしてしまった為に、 もはや先程までの速度で走ることはできない。 地面に向かって落ちていく2つのゆっくりの影。届かない!私はそう思った。 れいむと初めて出会ったあの日。 餡子塗れのまりさのおさげを持ちながら家路を急ぐ途中だった。 「ゆ゛っぐりしでいってねぇええええ!」 スポーン!と森の中から愉快な形相を浮かべてれいむが元気に飛び出してきた。 それを咄嗟に殴る私。「ひゃぶえ」と声を上げながら電柱に激突するれいむ。 「ゆっ?ゆっ?」と餡子塗れで辺りを見回すれいむ。そんなれいむが私に気がつき声をかけてきた。 艶やかに輝く髪、もみあげをフワッと棚引かせて小首を少し傾げる。 その動きに連動して髪をまとめたリボンがピン!と動いた。目を輝かせて私を見ながら満面の笑みを浮かべる。 「人間さんはゆっくりできるひとっ?」 「そいつはこのまりさに聞いてみな」 おさげを掴まれてブラブラと揺れるまりさが 「ごゆるりとしていってね・・・」と呟いてニコリと力なく笑った。 「れいむはゆっくり帰・・・・」 餡子まみれで元居た場所から逃げだしてきたれいむ。 私は以前れいむが住んでいた場所はとてもゆっくりできない所だと思っていた。 しかしれいむは里帰りして自分は幸せに暮らしている事を伝えたいと言ってきた。 元住んでいた場所には仲間が居たのだ。ゆっくりできない場所ではなかった。 私はそれが少しうれしかった。そしてれいむが今幸せだと言った事が少しうれしかった。 気がつくと落ちてくるれいむは目の前にまで迫っていた。届く。もう少しで届く。 竹林の回廊が途切れる。眼前に広がる草むら。丸く大きな月。 私はれいむを受け止めて草むらを転がった。 「意外と走れるものだな、無事でよかったれいむ」 息を切らしながら胸に抱いたれいむの後頭部を優しく撫でる。 れいむがゆっくりと顔をあげる。 歪んだ顔、吊りあがった口、お飾りのぽんぽん 「おぉ、ぬくいぬくい」 それは頬を赤らめたきめぇ丸でした。 振り返ると腹に枝が突き刺さったままのまりさが苦笑いを浮かべている。 その傍らには綺麗な餡子の花を咲かせて「ギョッギョッギョッ!」と痙攣するれいむ。 「オゥフ」 私はどうしていいのかわからなくなり、とりあえず草むらを走った。しゃにむに走った。 「こんなふざけたえすえすさんじゃ無かったられいむは死んでたよ!ばかなの?しぬの?てぬきなの?」 ぷくぅ!と頬をふくらませて怒りを露にするれいむだったが ファンタオレンジをかけてやると「あまい!」「しゅわしゅわする!」と怒りを忘れて喜びだした。 草むらを駆け回っているうちに元居た原生林の森に戻った事に気がつき あんなに広大なジャングルのように感じた森も少し歩いただけでアスファルトの公道に出た。 これほどただの道路を見ただけで感動したことは生まれてから一度も無かった。 自販機を見つけて2匹に手当てをして現在に至る。私はこういう部分を3行で済ませる奴は死んだほうがいいと思った。 「にんげんさん・・・・あのちくりんさんは・・・ゆっ」 まりさの頭にもジュースをかける。途端に「あまい!」「しゅわしゅわする!」と喜びだす。 あの竹林。一体なんだったのだろうか?れいむはあそこから「こちら」へやってきたのだろうか? 私とまりさは見た。あの竹林の先の光景を。明らかに「こちら」とは違うあの光景。 あれは一体なんだったのか?れいむが「鍵」の様な役割を果たしてあちらへの扉を開いた? ゆっくり達は元々はあちらに住んでいてれいむの様にこちらに移って来たのだろうか? いやいや・・・考えるのも馬鹿馬鹿しい。赤ゆ汁で変な幻覚を見ていたという憶測の方がまだ合点がいく。 「人間さん!まりさはいいことを思いついたのぜ!」 まりさがぽーん!と跳ねて私の頭の上に乗る。 そしてそれが全てを解決する大名案であるかのように誇らしげに叫んだ。 「まりさはゆっくりと里帰りするんだぜ!」 まりさをつかみ森へ放り投げる。 どうか二度と帰ってきませんように。 「あぶなかったんだぜ!」 まりさは街灯に体をひっかけてパッチーン!とウィンクするとフヒュー!と口笛を吹いた。 あぁ、死なねぇかなあいつ。 「ゆっくりゆっくり」と妄言を垂れ流すゆっくり達。 しかし元は本当に人間をゆっくりさせる力があったのかもしれない。 街灯にぶら下がりながらニヤニヤと笑みを浮かべるまりさと 「あまい」「ゆっくりあまい」と嬉しそうに叫ぶれいむを見て私はふとそんなことを考えた。 そんな1人と2匹を上空から見下ろすまるい影。 歪んだ顔、吊りあがった口、お飾りのぽんぽん きめぇ丸は顔をあげて辺りを見回す。 元居た場所とはかなり違う光景。まずい空気。夜の闇の中を生き物ように蠢く光。 全てが物珍しくきめぇ丸の興味を引いた。 「おぉ・・・・ひろいひろい」 そう呟くときめぇ丸は光り輝く街へと向かって飛び去った。 以後、その存在だけがゆっくりの口から語られてた 希少種、きめぇ丸が頻繁に人々に目撃されるようになる。 とか思ったんだけど、やっぱりナシの方向でお願いします。 おしまい 今まで書いたもの ゆっくり見せしめ ゆっくり電柱 ゆっくり脳内補完 副工場長れいむの末路 副工場長れいむの末路2 副工場長れいむの末路3 副工場長れいむの末路4 ゲスが見た夢1 ゲスが見た夢2 元野良れいむの里帰り このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4674.html
元野良れいむの里帰り 「れいむはゆっくり里帰りするよ!」 食事中、口をモゴモゴとさせながら考え事をしていたれいむが 突然飯粒を撒き散らしながら叫んだ! 私は4つに割った豆腐ハンバーグの一つを口に入れてゆっくりと租借する。 最近はがっつり肉!縦横無尽に肉!などといった野性味あふれるメリケンチックな 食生活よりもこういったヘルシーな食事を好むようになっていた。 余り野菜の処分にも最適だ。そもそも日本人は何百年も穀物中心の食生活を送っていたのだ。 それをここ十数年で肉中心の食生活に移行する等という行為そのものが 「むししないでねっ!」 れいむがお膳に乗ってぽいんぽいんと跳ねる。 私は茶碗を持って視線を逸らす。うるさいったらありゃしないよ。 「ゆっくりきいてねっ!馬鹿なにんげんさんっ!」 れいむはやや踏ん反り返り気味の姿勢で眉毛をきりっ!とさせて すぅっと息を吸い込むと元気一杯に叫んだ。 「れいむはゆっくり里帰りするよ!」 「そうか、じゃあブン殴っていいな」 れいむは自信ありげな、きりっ!とした顔のまま拳を頬にめり込ませて 残像を残しながら吹き飛んだ。 「ゆべしッ!」 そういえば「ゆべしもち」ってどんな食べ物なんだろう?餅なのか? おぉ、ももてつももてつ。 殴られたれいむはもみあげで両目を押さえながら「目がみえねぇ」と咆哮して畳を転げまわった。 「おねがいしますから、ゆっくりきいてくださいね」 すんすんと咽び泣きながられいむが語りはじめた。 れいむは元々は野生のれいむであった。 れいむが住んでいたゆっくりプレイスはとてもゆっくりしたプレイスであったが、 たまにゆっくりが失踪したり、たまにゆっくりが茎を生やして死んでいたり、主にまりさが突然死んだり、 「とてもこわいわ」とぺにぺにからカスタードを垂らしながらありすが怯えだしたりと ゆっくりながらも時折起こる「いへん」に困り果てていた。 「最後のありすが犯人だよね」 私の問いかけを無視してれいむが話を続ける。 れいむは新たなプレイスを求めて旅にでた。 苦難につぐ苦難。そしてありとあらゆる困難がれいむに襲い掛かった。 何度も心が挫けそうになった。いや、実際挫けて2、3日不貞寝したりした。 そんな長い長い旅路の末にれいむは新たなゆっくりプレイスを見つけたのだ。 「なんでそんなゆっくりがここで飯くってんの?」 「れいむは・・・れいむは「しあわせー」になったよっ!」 ポロポロと涙を零しながらも満面の笑みを浮かべてれいむが叫ぶ。 「だかられいむは「れいむはしあわせだよー」って群のゆっくりに報告しにいきたいよっ!」 私の足元で一心不乱にゆっくりフードを貪ってた筈のまりさが 「いいはなしなんだぜ」と澄んだ瞳からスーッと涙を流している。 また何時ものれいむの奇病か、と最初は思った私だが 中々どうしてこの暴飲暴食を繰り返すクソ饅頭にしてはいい心がけである。 そんなことを考えていたのか。知らなかったなー 私は茶碗をお膳に置いてパン!と手を叩いた。 「そうか、よし!じゃあ今度の休みはれいむの里帰りだね」 私は木の枝を杖代わりにしてフラつきながらも何とか歩みを進める。 進めど進めど視界に入るのは鬱蒼と茂った原生林。 唾を飲み込むも、ただ喉がゴクリとなるだけで、カラカラに乾いたそれを潤す事はできない。 思わず咳き込む。息を切らしながら辺りを見回す。今は一体何時であろうか?昼なのか?夜なのか? 今思い起こせば「れいむがみちあんないするねっ!」等という台詞そのものが死亡フラグ丸出しではないか。 そんな「沼に城建てたいです」と同意の無謀な申し出に何の疑問もなくついてきてしまった結果が 「ごらんの有様だよ!」 私は崩れ落ちるようにその場に倒れこむ。 そのはるか後方を「どぼじでぇぇぇ?」と変な呻き声を発しながら 僅か数時間でガリガリにやつれたれいむがフラフラとついてくる。 逆に聞きたい、どうして産まれて来ちゃったの? 「ぢぐり゛ん゛ざんどごいっじゃっだの゛ぉぉぉ・・・・?」 「竹林さんん?ここにはそんなの生えてないでしょぉぉぉ・・・・?」 ここにはブナの他にカツラ、ハリギリ、アサダ等の木が生い茂っているが、 れいむのいう竹林などこんなところには無い筈である。 そもそも竹林というのは栽培を目的として人間の手によって作られたものの名残りであり、 こんな山の奥地にそんな物があるのは考えられない。 「・・・・今日はここにキャンプを張るぞ」 私は背中に背負った大荷物を地面に降ろす。 れいむの群で一泊しようと考えていたので、 防災リュックに寝袋を詰め込んだ即席キャンプ用品を持ち込んでいた。不幸中の幸いである。 もはや里帰り所ではない。 私にはサバイバルの知識はあまり無かったが、 暫くここでゆっくりと体力を回復させた後、方位磁石で一定の方向へ進めばどこかへ出る筈だ。 とりあえず水分補給。そして体温を落とさないようにして体力を温存するのが賢明。 水分補給・・・・すいぶ・・・ん?・・・あれ? 「なにこれ」 中には何やらモニョモニョとやわらかい物体。 水は・・・・?缶詰は・・・・?寝袋は・・・・?リュックの大部分を占有したやわらかい物体。 その物体はなにやら申し訳なさそうな顔でダラダラと汗を流しながらこちらを見ている。 そんな物体が「ニコリ」と力の無い笑みを浮かべた。 「やってくれた喃」 「・・・ち、ちがうんだぜ」 「やってくれた喃」 「・・・ちょっとした「さぷらいず」のつもりだったんだぜ」 「やってくれた喃、まりさ」 「・・・まさかこんなことになるなんて思わなかったんだぜ」 私はまりさと初めて出会ったあの日の光景を思い出す。 あの時もこんな寒くて薄暗い夜の道だった。 コンビニ帰りの私の前にまりさが通せんぼするように現れて・・・ 「ゆっくりしてい」 「死ねッ!」 あの日と同じように私はまりさを大空へ放りなげた。 願わくばこのまま天に召されますように。 トップーン! この音!? 私とれいむが目を見開いた。 「水か!?」 「ゆっ!おみずさんはゆっくりできるよ!」 こんな所に池があるとは。まさに砂漠のオアシスだ。 息を切らせながら何とか音のした方向へ歩みを進める。 しかし眼前に広がったのは緑色に濁った水面。 湧き水によって構成された池ではなく、窪みに雨水が溜まっただけの沼だった。 こんな色をした水を見たことがある。バスクリンを入れたお風呂だ。 透明度は限りなく0に近く沼の深さはわからない。 まりさはそんな沼の水面に帽子を浮かべ、それに乗ってニヤニヤと笑みを浮かべている。 「あぶなかったんだぜ」 バッチーン!とウィンクしながらフヒュー!と口笛を吹くまりさ。 あぁ、死なねぇかなあいつ。 スカスカになったリュックの中にあった小さな鍋でその液体をすくってみる。 ドロリとした液体。もう何か寒天みたいにプルプルしてる。 「ゆっ!ごーくごーくするよ!」 「しないほうがいいな、これは」 私に制止されたれいむが「どぼじでぇ」とえぐえぐ嗚咽した。 それをいつの間にかれいむの傍らに戻ってきたまりさがなだめる。 「人間さん、まずは手持ちの荷物のチェックをするんだぜ」 無駄に男前の表情で私に提案するまりさ。無駄に眼光が鈍く光る。 残された荷物の中でこの状況の打開策を見出す。真っ当な意見だ。 しかしこいつが言うと無性に腹が立つな。 リュックサックの中から出てきたのは先程の小さな鍋、携帯ガスコンロ、 そして大量のごはんとベーコン つまり残された食料はベーコンご 「なに出してるのぉぉぉぉ!?すぐにそれをしまってねぇぇぇぇ!」 「馬鹿なんだぜぇぇぇ!そんなのたべたらなんか色々あって最終的には死ぬんだぜぇぇぇぇ!」 クワッと形相を浮かべて激昂する2匹。 場合によっては死ぬまでゆっくりしてしまう餡子脳が こんなときに限って即座に危険を察知し本能でそれを食する事を拒絶したが、 私がはふっ!はむっ!はっふっ!とベーコンとごはんを食べ始めると 先程の危険信号も御座なりに早々に「ゆっくりたべるよ」と群がりだした。 「やれやれ」 当然食料はこれだけでない。リュックの中にはまりさが中で食べ散らかした スナック菓子が少々にミネラルウォーターが2本、それにポケットの中にはチョコレートが3枚程ある。 れいむの実家の群の連中へと沢山お菓子を持ってきたのが幸いした。 2匹に食料がある事が知れると寝込みを襲われたり、変な皮算用をして初日にして食料を食い尽くす可能性がある。 余裕を持たせて食料を配分して救助を待つ。狭い日本、嫌でもすぐに助けは来るであろう。 少々ひもじいかもしれないが5日は持つだろう。 私は遭難した不安よりも普段体験できない血沸き肉踊るサバイバルに少しばかり胸を躍らせていた。 ・・・・がっ!それから13日後。 「ゆくり・・・・・・ゆくく」 半日ほど斜め45度に傾いたまま微動だにしなかったれいむが久しぶりに口を開いた。 その傍らにはパンチラスポットで一心不乱に女子が通るのを待つ小学生のような眼差しで天を仰ぐまりさ。 食料はとうに底をついた。 何処かで聞いた「遭難中はやたら動き回ると逆に危険だゾ」 という情報を盲信した為に既に動き回る体力は私たちには残されていなかった。 「むー・・・・しゃ・・・むー・・・・しゃ・・・」 木の根元に生えているキノコに見えなくも無い物体を貪るまりさ。 それを見てれいむがまりさの方へカタカタと顔を向ける。 「まりさ・・・だめだよ・・・・外の食べ物をむーしゃむーしゃ・・・したら・・・」 「・・・・ゆ゛っ?」 「・・・・お家のごはんが食べられなくなっちゃうよ」 「れいむ・・・いまは「ひじょうじたい」なんだぜ・・・そんなにゆっくりしてたら生き残れないんだぜ・・・」 「ゆ゛っ・・・!そうだね・・・ゆっくり理解したよ・・・」 普通逆だよね。 仲良くならんでキノコに見えなくも無い物体を貪る2匹を見つめながら ボーッと携帯コンロのスイッチをつけたり消したりを繰り返す。 もはやツッコミを入れる気力も無い。 コンロの上でボコボコを湯気を立てる緑の液体。 はじめて見たときはとても腹に収める勇気は無かったが、 今となってはもしかしたら大丈夫かも知れないと思い始めた。むしろ全然いけそうな気がする。 いかんいかん、あぶないあぶない。 鍋をコンロからどかしてまりさをじっと見る。 「まりさ・・・こっちへきてくれ・・・」 「ゆっ?なんなんだぜ?人間さん?」 私の消え入りそうな声に気がつき、足元に寄って来るまりさ。 「・・・・この上に乗ってみてくれるか?」 私が指で指し示した先は携帯ガスコンロ。 まりさはコンロの上に飛び乗って怪訝な眼差しを向ける。 「あんまりゆっくりできないんだぜ?人間さん」 私はおもむろにガスコンロのスイッチを捻る。 青々とした炎がまりさの尻を焦がす、チリチリと煙が上がって辺りに甘い臭いが漂う。 「ゆっ!なんかいい匂いがしてきたんだぜ?ゆっくりゆっくり・・・・ゆ゛っぐおおお???」 まりさが華麗なバク転を決めつつ地面に顔をめり込ませた。 「もうすこしだったのに・・・!」 私は無念の表情で地面に拳をたたきつけた。 舌で火傷した部分を舐めようと舌を伸ばすが、届かずに変なポーズをとりながらまりさが叫んだ。 「なっなにしてるんだぜぇぇ!人間さんんんん!」 「虐待SSでしょおおおおお!焼かれなさいよおおお!虐待ばかりの所ですがゆっくりしていってくださいねぇえええ!」 「ゆっくりできるわけないでしょぉぉぉ!がえる゛!!おう゛ぢがえる゛ぅぅぅ!!」 他のえすえすさんだったらそろそろ畑を荒らしたれいむが足を焼かれて 「ゆぎゃー」とか言っててもおかしくない時間帯である。 それなのに何をやってるんだお前たちは!不甲斐ない!不甲斐ないよ! 「いいのか!お前ら!私が死んだらwikiにまともに収録されないんだからなっ!」 「ゆっ!しったこっちゃないよ!お先にどうぞゆっくりと息をひきとってねぇぇぇぇ!」 「飼い主さんに何てこというのぉぉぉ!ばかなの?しぬの?このおちんちん!」 何て醜い生き物だ。ゆっくり、ゆっくり、と連呼しながらも その生涯でゆっくりする事なくただの一度も無く、ゴミを喰らい、無限に存在する外敵に怯え、 逃避するように無計画に繁殖し、宝物のように子供をかわいがる一方で自分に危機がせまればそれをあっさり 「やめてねっ!それもう終わったからねっ!過去にすがるのはやめてねっ!」 「すっきりしろ」 「ゆ゛っ゛?゛」 「そこのれいむとすっきりしろ」 「ゆ゛゛っ゛っ゛??」 私はまりさとれいむを鷲づかみにするとお互いの頬を無理やり擦りだした。 身を捩って私の手から逃れようとする2匹。 「やめてね!れいむとまりさは「ぷらとにっく」な関係だよ!」 「そうだぜ!すぐにやめるんだぜ!人間さん!」 「ネンネだねぇ、こういうのは初めてかい?」 「ゆっくりやめんほおおおおおおおおおおおっ!」 「やめるのぜんほおおおおおおおおおおおおっ!」 「すっきりー」 2匹はあっさりとボタボタと謎の液体を滴らせながら恍惚の表情ですっきりした。 れいむの頭からにょきにょきと茎が生えてそこからにっこりと笑みを浮かべた実ゆっくりが顔を覗かせる。 それを見て恍惚の表情で「んほぉんほぉ」言っていたれいむが目を輝かせる。 「ゆ~♪れいむのおちびちゃんすごくゆっ」 私はれいむの頭から生えた茎を毟り取ると煮えたぎった緑の液体に放り込んだ。 ニッコリと微笑んだ表情のままサッと茹で上がる赤ゆ達。 れいむは「すごくゆっくりしてるよ~」の顔のまま完全に停止している。 「ごめんね。テンプレ台詞最後まで聞くのめんどかったからごめんね」 緑の液体にプカプカと浮いた赤ゆ汁をお椀に移して自分と二匹の前にコトリを置く。 ようやくれいむの餡子脳の処理が追いついてクワッ!と形相を浮かべた。 「な゛に゛じ」 「バカっ!」 私はれいむに平手を食らわせた。これは暴力ではない。心の涙だ。 「ゆびゅ!?」とくぐもった声を漏らしながら地面を滑るれいむ。 顔を上げたれいむはどうして今殴られたの?今こっちが怒ってたよね?どういうこと?どういうこと? と、言わんばかりの表情でキョロキョロと辺りを見回している。キョロキョロしても答えなど無い。 「良く聞きなさい、れいむ!」 私はブライトさんの「殴って何故悪いか」のポーズでれいむに説いた。 「もし目の前に玉子焼きさんがあったらどうする?」→「・・・ゆっ・・・?ゆっぐりとだべばす」 「卵さんは鳥さんのおちびちゃんだけど食べてもいいの?」→「・・・ゆっ!・・・でも卵さんはれいむのおちびちゃんじゃないよ」 「他人だったら食べてもいいの?私とれいむのおちびは他人なんだけど?」→「ゆゆっ・・・!そ、それは・・・!」 「それって差別じゃない?ゆっくりしてないよね?」→「ゆ゛っ!?・・・れっ、れいむはとってもゆっくりしているよ・・・!」 「いまどういう状況かわかってる?」→「と、とってもゆっくりしていないじょうきょうだよ・・・・!」 「今何問目?」→「おうどん!」 「何とか皆で生還しようっていう気はあるの?」→「ゆっくり!ゆっくりじだいです!」 「もし目の前に赤ゆ汁があったらどうする?」→「ゆっぐりだべばす!!」 「ではいただきます」 手をあわせて赤ゆ汁を貪る私とまりさ。 れいむは口をパクパクさせて虚空に目を泳がせるだけである。 しかし私とまりさの手は直ぐに止まる。 コトリと置かれるお椀。 「・・・・い」 「ゆ゛っ?」 かすかに聞こえた一言にれいむは正気に戻る。 しかしこれは聞き間違いである。そんな言葉がこの状況で出る筈が無い。 れいむは意を決して口を開く。 「い、いまなんて」 「まずい!」「まずいのぜ!」 「んおあゆ!!」 まったりとしていなくて、コクがなく、それでいてしつこい。 一見すると抹茶ぜんざいのようにも見えるそれは吐瀉物と甲乙つけがたい仕上がりだった。 生ゴミでも極上の本マグロになるこの状況でこの体たらくは一体どういう事だ。 こんな事をしておいて何だが、まずい!まずすぎる!無性に腹が立ってきた。 「どういうことだ!れいむ!」 「どういうことなんだぜ!れいむ!」 「ゆ゛っ!?ゆゆゆっ???」 れいむは人間とまりさと赤ゆ汁を何度も見回した後に正面を向いた。 「ご、ごべんな・・・・なにいってるのぉぉぉぉぉ!!れいむのおちびちゃんがまずいわけないでしょぉぉぉ!」 もうすこしで「ごべんなざい」する所だったれいむがすんでのところで踏みとどまり お椀に顔をつっこんで一心不乱に赤ゆ汁を貪りはじめた。 「うめっ!これめっちゃしあわせー!しあばぶぜッ!」 探偵物語を思わせる芸術的な赤ゆ汁噴出をするれいむ。 まっず!これめっちゃまずっ!まずいっていうかなんか口が痛い! にっこりと微笑んだ赤ゆが地面をころころと転がった。 「ひぎっ!まずひぎっ!ひぎがなえっ!?」 ビクッ!ビクッ!と痙攣しながら地面をのたうちまわるれいむ 赤ゆを差し出したのにまずいとか言われちゃてるぅ・・・・くやしい・・・!・・・・でもっ!ビクビク! ビクビクするれいむを華麗にスルーしながらまりさが天を仰ぐ 「ゆっ!人間さん!何かがいるんだぜ!」 上空には羽音のような低い振動音が響いた。 虫かとも思ったがその音を発する物体の姿は見えない。 どんどん大きくなる音。もはや到底虫とは思えない。 ガサガサと物体が枝を縫う音が遠くからどんどんこちらに近づいてくる。 ヒュン! 物体が木の隙間から一瞬だけ姿を現して再びその姿を消す。 一瞬見えたそれは生首、振り乱した黒髪、引きつった表情、それは空を飛ぶゆっくりだった。 足元でカタカタと鳴る歯の音に気がついて足元の2匹に視線を移す。 れいむとまりさは目を剥き出し顔を真っ青にして震えている。 「きっ・・・きき「きめぇ丸」だぁぁぁぁぁ!いやぁぁぁぁぁ!」 「ゆっくりできない!きめぇ丸はゆっくりできないんだぜぇぇぇぇ!」 まだそんなに残っていたのかダラダラと冷や汗を流しながら怯える2匹。 ふふっ、なんだ・・・二人ともそんないい顔できるんじゃないか。 まるで心を閉ざした少女が見せた刹那の笑顔を見るご両親のような眼差しで私は2匹を見た。 しかし2匹が口にした「きめぇ丸」とはいわゆる希少種だ。 れいむやまりさといったその辺りの草むらを探せばアホみたいに居る通常種と違って 希少種はその姿を殆ど人前に現さない。 しかも通常種のゆっくり達がその存在を肯定しているだけで、 その姿を実際に見たという者も収められた映像も存在しなかった。 小さい頃、森の中を笑顔を浮かべながらフワフワと舞うように飛んでいる「捕食種」は見たことがあったが、 空を高速で飛びまわるゆっくりなどという荒唐無稽な存在など誰が信じられるだろうか? 「おぉ・・・・」 意外にも先に口を開いたのは希少種、きめぇ丸の方だった。 何時の間に回りこんでいたのか、私たちの後ろで笑顔を浮かべていたきめぇ丸。いや、それ笑ってるの!? 「おぉ・・・・ゆっくりゆっくり」 目の錯覚かと思った歪んだ顔は実際に歪んでいた。 こちらには視線を向けずに虚空に目を泳がせ、時折ヒュン!ヒュン!と音を出して首を振るきめぇ丸。 そのたびにれいむとまりさは「ゆっくりできない!」と恐れおののいた。 ゆっくりする事を信条として、ゆっくりした者ほど賞賛を浴びるゆっくり達にとって 高速移動という行為はゆっくりとは間逆。まさに異端。それが希少種たる所以か。 「お困りのようですね・・・・おぉ、くうふくくうふく」 その物腰は意外にもやわらかだった。 民家の窓を割って進入しておいて「ここは自分の家だ」と主張する通常種との格の違いを伺わせる態度。 しかし次の瞬間きめぇ丸が残像を残しながら移動する。 「私と同じですね」 上空に飛び立つきめぇ丸。その口にはれいむがくわえられている いつの間にかまりさの隣でアホ面をぶら下げていたれいむの姿が無い。 一瞬にしてきめぇ丸に連れ去られたのだ。 ニヤァッ!と主に全身がキモい笑みを浮かべながら高速で首を振り回すきめぇ丸。 一緒にれいむも残像を残しながら高速で振り回される。 「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 カッ!と目を見開いて絶叫するれいむと共にきめぇ丸は飛び去った。 「え?あ・・・ちょっ!ま、待てっ!」 私とまりさが地面を蹴ってそれを追いかけた。 「まるでおそらを・・・・とんでますぅぅぅぅ!!!」 素っ頓狂なれいむの絶叫を辿りながら漆黒の森を走る。 しかし、スピードの差は歴然としており、その差は徐々に離されていく。 徐々に小さくなっていくきめぇ丸とれいむのシルエット。 赤ゆ汁を少し飲んだとはいえ体調は最悪、その上この悪路の山道。見失うのは時間の問題だった。 「だずげでね゛ぇぇぇ!お゛ね゛え゛ざんんんんん!」 もはやきめぇ丸とれいむの姿は見えない。ただ叫び声のする方向へ全力で駆けるしかない。 しかしその時、辺りが俄かに明るくなり森全体を照らす。 姿を見失っていたきめぇ丸が再び視界に収まる。思ったよりもまだ遠くへは行っていなかった。 「ゆっ!人間さん!周りをみるんだぜ!」 まりさの驚いたような声に咄嗟にきめぇ丸から視線を移し辺りを見回す。 先程までブナを主とする原生林が生い茂っていた筈の光景が一変していた。 咲き乱れる竹林。それが回廊のようにどこまでも続いていた。 ボゥと青白い光を放つそれが辺りを明るくした原因だった。 竹林さんどこいっちゃったの? れいむの言葉を思い出す。 ここがれいむの故郷なのか?こんな奥地に竹林があるなんて・・・? 光っているのはコケか何かだろうか? 様々な考えが脳裏をよぎったが、ひとまずそれを完全にシャットアウトする。 今は目の前の希少種かられいむを取り戻す事だ。それだけに完璧に集中する。 「まりさ!」 私の問いかけに「ゆっ!」と返事をしてまりさが大きくジャンプして帽子をポーン!と飛ばす。 帽子の中からこぼれ落ちたのはまりさが水面を移動するときに使う小さな木の棒、オールだった。 それを空中で武器の代わりに口にくわえたまりさは器用に再び帽子をキャッチして私の肩に乗る。 「まかせたぞ!まりさ!」 「ゆっくりまかせるのぜ!にんげ・・・・んざあああああああああああああ!?」 私はまりさの口の中に杖代わりにつかっていた棒を突っ込んでそれを大きく振り上げて加速させる。 手で投げると思ったの?ばかなの?しぬの?主人公気取りなの? ありえないくらいに大口をあけて横に伸び上がるまりさ。主に存在がキモい。 懇親の力を込めて足を地面に叩きつける。 大地が振動して円形状に落ち葉が地面から跳ね上がる。 その衝撃を足から膝、膝から腰、腰から肩、肩から肘を経由して力に変換させて一気に棒を振り下ろす。 遠心力とてこの原理で大地から伝わってきた力は更に増幅してまりさに伝わる。 「んぎょぶばッ」 白目を剥いてまりさが変な呻き声を漏らしながらヒュバッ!っと棒から射出された。 遅れて地面に足を叩き付けた時の轟音が竹林に響く。 私はヘッドスライディングするような姿勢で地面に倒れこんだ。 空気を切り裂き、弾丸のように体を変形させながらまりさが 地球の自転、磁場、重力とかなんか色々な物に逆らいながらきめぇ丸に向かって突進する。 「おぉ、はやいはやい」 ヒュンヒュン!と首を振りながら、れいむを宙へ放り投げるきめぇ丸。 「とんでるのにそこからもっとお空をどんでるぅぅぅ!」 涙を撒き散らしながら上空へ昇っていくれいむ。 きめぇ丸は突進してくるまりさを事も無さげに避け・・・ 「おぉ?」 避けたと思ったそれはまりさでは無く、まりさの帽子だけだった。 きめぇ丸の目がカッ!と見開かれる。 帽子は囮。二段構えの攻撃。 通常種ごときに一杯食わされるとは、おぉ、ぶざまぶざま。 何処から来る?後ろか横かそれとも上か? 何処から来ても主に余裕で避ける自信がきめぇ丸にはあった。 「ばやぐだずげでね!」 まりさはちょっと手前の木の枝に突き刺ささっていただけだった。 主にうっかりミスだった。 「おぉ、おろかお」 しかし次の瞬間きめぇ丸の後頭部に衝撃が走る。視界が歪む。 まさかまりさも囮の三段構えの攻撃? 再び見開かれるきめぇ丸の両眼。 「ゆ゛っぐり゛どおりまずがらね゛っ!」 完全に存在を忘れていたれいむが頭に直撃しただけだった。 きめぇ丸は「おぉ、おちるおちる」とフラフラ地面に落ちる。 それを追うように涙が尾を引きながられいむも地面へ吸い込まれていった。 「人間さん!れいむが落ちるんだぜ!そのまえにまりさを助けてね!」 「そこで死んでくださいね!」 人間は既に起き上がり、落ちるれいむに向かって突進していた。 しかし先程の投擲で殆どの体力を使い果たしてしまった為に、 もはや先程までの速度で走ることはできない。 地面に向かって落ちていく2つのゆっくりの影。届かない!私はそう思った。 れいむと初めて出会ったあの日。 餡子塗れのまりさのおさげを持ちながら家路を急ぐ途中だった。 「ゆ゛っぐりしでいってねぇええええ!」 スポーン!と森の中から愉快な形相を浮かべてれいむが元気に飛び出してきた。 それを咄嗟に殴る私。「ひゃぶえ」と声を上げながら電柱に激突するれいむ。 「ゆっ?ゆっ?」と餡子塗れで辺りを見回すれいむ。そんなれいむが私に気がつき声をかけてきた。 艶やかに輝く髪、もみあげをフワッと棚引かせて小首を少し傾げる。 その動きに連動して髪をまとめたリボンがピン!と動いた。目を輝かせて私を見ながら満面の笑みを浮かべる。 「人間さんはゆっくりできるひとっ?」 「そいつはこのまりさに聞いてみな」 おさげを掴まれてブラブラと揺れるまりさが 「ごゆるりとしていってね・・・」と呟いてニコリと力なく笑った。 「れいむはゆっくり帰・・・・」 餡子まみれで元居た場所から逃げだしてきたれいむ。 私は以前れいむが住んでいた場所はとてもゆっくりできない所だと思っていた。 しかしれいむは里帰りして自分は幸せに暮らしている事を伝えたいと言ってきた。 元住んでいた場所には仲間が居たのだ。ゆっくりできない場所ではなかった。 私はそれが少しうれしかった。そしてれいむが今幸せだと言った事が少しうれしかった。 気がつくと落ちてくるれいむは目の前にまで迫っていた。届く。もう少しで届く。 竹林の回廊が途切れる。眼前に広がる草むら。丸く大きな月。 私はれいむを受け止めて草むらを転がった。 「意外と走れるものだな、無事でよかったれいむ」 息を切らしながら胸に抱いたれいむの後頭部を優しく撫でる。 れいむがゆっくりと顔をあげる。 歪んだ顔、吊りあがった口、お飾りのぽんぽん 「おぉ、ぬくいぬくい」 それは頬を赤らめたきめぇ丸でした。 振り返ると腹に枝が突き刺さったままのまりさが苦笑いを浮かべている。 その傍らには綺麗な餡子の花を咲かせて「ギョッギョッギョッ!」と痙攣するれいむ。 「オゥフ」 私はどうしていいのかわからなくなり、とりあえず草むらを走った。しゃにむに走った。 「こんなふざけたえすえすさんじゃ無かったられいむは死んでたよ!ばかなの?しぬの?てぬきなの?」 ぷくぅ!と頬をふくらませて怒りを露にするれいむだったが ファンタオレンジをかけてやると「あまい!」「しゅわしゅわする!」と怒りを忘れて喜びだした。 草むらを駆け回っているうちに元居た原生林の森に戻った事に気がつき あんなに広大なジャングルのように感じた森も少し歩いただけでアスファルトの公道に出た。 これほどただの道路を見ただけで感動したことは生まれてから一度も無かった。 自販機を見つけて2匹に手当てをして現在に至る。私はこういう部分を3行で済ませる奴は死んだほうがいいと思った。 「にんげんさん・・・・あのちくりんさんは・・・ゆっ」 まりさの頭にもジュースをかける。途端に「あまい!」「しゅわしゅわする!」と喜びだす。 あの竹林。一体なんだったのだろうか?れいむはあそこから「こちら」へやってきたのだろうか? 私とまりさは見た。あの竹林の先の光景を。明らかに「こちら」とは違うあの光景。 あれは一体なんだったのか?れいむが「鍵」の様な役割を果たしてあちらへの扉を開いた? ゆっくり達は元々はあちらに住んでいてれいむの様にこちらに移って来たのだろうか? いやいや・・・考えるのも馬鹿馬鹿しい。赤ゆ汁で変な幻覚を見ていたという憶測の方がまだ合点がいく。 「人間さん!まりさはいいことを思いついたのぜ!」 まりさがぽーん!と跳ねて私の頭の上に乗る。 そしてそれが全てを解決する大名案であるかのように誇らしげに叫んだ。 「まりさはゆっくりと里帰りするんだぜ!」 まりさをつかみ森へ放り投げる。 どうか二度と帰ってきませんように。 「あぶなかったんだぜ!」 まりさは街灯に体をひっかけてパッチーン!とウィンクするとフヒュー!と口笛を吹いた。 あぁ、死なねぇかなあいつ。 「ゆっくりゆっくり」と妄言を垂れ流すゆっくり達。 しかし元は本当に人間をゆっくりさせる力があったのかもしれない。 街灯にぶら下がりながらニヤニヤと笑みを浮かべるまりさと 「あまい」「ゆっくりあまい」と嬉しそうに叫ぶれいむを見て私はふとそんなことを考えた。 そんな1人と2匹を上空から見下ろすまるい影。 歪んだ顔、吊りあがった口、お飾りのぽんぽん きめぇ丸は顔をあげて辺りを見回す。 元居た場所とはかなり違う光景。まずい空気。夜の闇の中を生き物ように蠢く光。 全てが物珍しくきめぇ丸の興味を引いた。 「おぉ・・・・ひろいひろい」 そう呟くときめぇ丸は光り輝く街へと向かって飛び去った。 以後、その存在だけがゆっくりの口から語られてた 希少種、きめぇ丸が頻繁に人々に目撃されるようになる。 とか思ったんだけど、やっぱりナシの方向でお願いします。 おしまい 今まで書いたもの ゆっくり見せしめ ゆっくり電柱 ゆっくり脳内補完 副工場長れいむの末路 副工場長れいむの末路2 副工場長れいむの末路3 副工場長れいむの末路4 ゲスが見た夢1 ゲスが見た夢2 元野良れいむの里帰り このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/1115.html
注・ゆっくりらしからぬゆっくりが出ます。 幻想郷の人里から少し離れた場所に緑の森が有る。 その森に住んでいるゆっくり達はとても幸せだった。 何故ならここには外敵である筈のれみりゃなどもほとんどやって来る事も無く、人里の人間も好んで立ち入る事も無かった。 時折、無謀なゆっくりが人里に悪さをしに行く場合も有ったが、再犯でもしない限りは直ぐに殺される事も無い。 流石に2,3度となれば別だが、そこまでの再犯を重ねるゆっくりで有れば、逆に人間に裁いて貰った方が平和になる。 幻想郷の人間は融和的で、罪を犯したゆっくりとその他のゆっくりを混同するなどという、短絡的で愚かな考えはしなかった。 その為、狩りや木の実の採取に長けたゆっくりまりさと、ぱちゅりーにも負けない明晰な頭脳を持ったれいむが率いるその群れは、 仲間同士で争う事も無く、困った事が有れば群れの仲間同士で協力し日々を謳歌していた。 ある越冬の時では、食料が芳しくない家の者に群れのゆっくり達が少しづつ食料を提供し、その家族は無事一匹も欠ける事無く冬を越した。 ある梅雨の季節では、暴風で破壊されたゆっくりの家が有ったが、群れのリーダーであるまりさはその家が直るまで住人を快く自らの家へと招き入れた。 相互扶助。 その群れのゆっくり達は全て、その言葉は知らずとも、その行動を実行する事が出来た。 かつ、いつまでも他の者に頼るなどという甘い考えのゆっくりなどは存在せず、この群れはとても良好に機能していた。 やがてそのまりさとれいむは群れの皆から祝福され結婚して家族となり、より一層の繁栄を為し得るかに見えた。 そう、一週間程前までは。 「ゆぅぅ、なんでこんなことに・・・」 薄暗い洞窟の奥で、ボロボロの身なりのれいむが居た。 少し前まで群れの長であったれいむである。 黒々とした艶の有った髪も見る影も無く荒れ、頭のリボンもネズミにでも齧られたかのように所々千切れている。 それにも増して、かなりの暴行を受けたのだろうか、その身体にはそこかしこに真新しい傷が出来ていた。 その場所にしても、洞窟の中の狭い一室の入り口を柵で覆い、まるで牢屋のように作られている事から、その状況が尋常で無いのは一目瞭然であった。 「まりさたちはだいじょうぶかなぁ・・・」 いつまでも続くかに思えた幸せの時を思い出してしまい思わず嗚咽が漏れる。 最愛のゆっくりを思い浮かべると涙が零れる。 部屋の片隅で丸い身体を震わせ、えぐえぐとただ悲嘆に暮れなき続けるしか、今のれいむには出来る事は無かった。 一週間前、群れで大規模な反乱が起こった。 その反乱により、群れを率いていた群れの幹部達の多くは捕らえられてしまったのだ。 夫であるまりさと子供達は間一髪の所で逃げ出す事に成功したが、れいむはその時自ら犠牲となり囚われの身となってしまった。 「ゆふふ、惨めなものね」 そんなれいむを嘲笑うような声が聞こえたかと思うと、数匹のゆっくりがその部屋の中に入ってくる。 先頭のゆっくりは普通のゆっくりには扱えぬ筈の火の付いた松明を口に咥えている為、部屋の中が一気に明るくなった。 ほとんどは数週間前に群れにやってきた新参のゆっくり達だが、中には昔から群れに住んでいた見慣れた顔のゆっくりも居る。 そして遅れて入ってきたゆっくり。 煌びやかな髪が松明の炎に照らされて鮮やかな光を放ち、その優雅な佇まいにはゆっくりで有りながらも何処か厳かな雰囲気を漂わせる。 薄暗い洞窟の中でそのゆっくりの存在感は一層際立ち、周りの者の眼を引く。 「ゆっ!?おまえは……ゆっくりしねぇ!!」 涙を流していたれいむであったが、その姿を一目見た瞬間、まるで鬼にでも取り付かれたかのような形相に変わり目の前のゆっくりに飛び掛かろうとした。 だが、周りの者達がすぐさま盾となりそれを阻み、れいむを跳ね飛ばす。 そのまま壁に叩き付けられ「ゆぐぅ」と短い呻き声を上げたれいむに、追い討ちとばかりに数匹のゆっくりが圧し掛かる。 「いつもむだなことをしないでね!!ゆっくりりかいしてね!!」 「いたいよ、ゆっくりやめっ、てびゅっ!!やめて、に”ゅ!!」 「ちーんぽ!!ちーんぽ!!」 まりさ種やみょん種、中には同種のれいむ種まで居る。 それらは足元のれいむの声などに一切耳を貸さずにひたすら飛び跳ねれいむを苦しめる。 数は元よりろくに食事も食べていない弱ったれいむは成す術も無く、そこから逃げ出す体力も無い。 「ゆぐっ、やめ”、びょひゅ……いだい”よ、ゆっぐりぃ」 「おお、よわいよわい」 「な”んでごんな……ゆべっ!!ゆびぃ!!」 反論を挟む余地の無い暴力。 段々とれいむの眼から生気が失われていき、その叫び声も「ゆぐっ!!ゆげぇ!!」から「ゅみゅ…、ゅきゅ……」と弱々しくなっていく。 淡々と行われるその暴行を冷ややかな眼で見詰めていたあのゆっくりがズイッと前に出ると、周りの者はそれに反応してすぐさまその場から飛び退いた。 後に残されたのは、その口から餡子を垂れ流し、楕円形の形になってしまった瀕死のれいむである。 「ゅ……ゅ……」 「おやおや、わらわがわざわざ会いに来てさしあげたのに、あなたはもうゆっくり死んでしまいますの?」 ビクビクと痙攣を始めたれいむの前で、明らかに他のゆっくりとは違う流暢な話し言葉で呼び掛けた。 すると、このまま死んでしまうかに見えたれいむの眼に少しだけ光が戻る。 そして動かぬ身体で眼だけを動かし、眼の前のそのゆっくりを憤怒の炎が宿った眼で睨み付けたのだ。 「ゆぐぐ…このぉ、おんしらずのゆっぐりめぇ……」 「ゆふふ、わらわはそなたの様なゆっくりに受けた恩など覚えがありませぬ」 「ゆぎぃぃ!!きさまなんか、れいむとおなじれいむなんておもえないよ!!」 憎しみを込めて力一杯に叫ぶと同時に、横から別のゆっくりが体当たりをし、れいむは又もや吹き飛ばされ壁に打ち付けられる。 「おまえのようなゆっくりとおなじにするなだぜ!!はくれいむさまとおよびするんだぜ!!」 取り巻きの一匹であるまりさが体当たりをし、そうれいむに対して叫ぶ。 その後ちらりと、はくれいむと呼ばれたゆっくりれいむに眼を向け、ニヤリと口元を歪ませる。 はくれいむに惚れているのだろうか。 まりさなりのアピールを欠かさない。 はくれいむと呼ばれたそのゆっくりはれいむ種でありながられいむ種ではなかった。 髪は透き通るように白く普通のれいむ種の黒とは対極にあり、暗闇の中でもその存在感は際立っていた。 更には頭に付けられているれいむ種のトレードマークであるリボンも、赤い部分は真っ白に染め上げられ、その姿は正に「はくれいむ」と呼ぶに相応しかった。 姿だけでは無い。 その雰囲気もれいむ種どころか、他のゆっくりと一戦を隔す程に厳かで幽玄。 ゆっくりでありながらも、カリスマと言うべきだろうか、他ゆっくりを引き付ける何か持っている。 だがその本質は残酷で冷徹。 一ヶ月程前に数匹の取り巻きと群れに加わり、独自のやり方で群れの指導者に気付かれずに多くの仲間を作っていき、 瞬く間に反乱を起こして群れを乗っ取った。 そう、彼女こそが例の反乱の主導者であり、眼の前のれいむの幸せを打ち砕いたゆっくりなのだ。 そして一方のれいむは打ち付けられた衝撃と積み重なった暴行のダメージで「ゆべぇぇぇ!!」と汚らしく餡子を吐き出し続けるばかりである。 「おお、ぶざまぶざま。わらわがこのようなゆっくりと同じなど、考えただけでおぞましい」 そんなれいむの様子を中傷した笑みで見ながらそう呟くと、周りの者も全くだとばかりに笑いの声をあげる。 れいむは言い返す気力も無く、ただただ餡子と涙を吐き出し続けるだけであった。 クスクスと笑いながらその様子を暫く眺めていたはくれいむであったが、ふと思い出したようにれいむに問い掛ける。 「……ところで、あなたの夫であるまりさは何処にいるのかしら?」 かなりの量の餡子を吐き出し若干落ち着いたれいむは、その言葉にピクリと反応する。 だが、返答する気配は見せず貝のように押し黙ったままだ。 「はくれいむさまがしつもんしているんだぜ、ゆっくりこたえるんだぜ!!」 「……ゅ、なんどきてもれいむはこたえないよ」 一瞬言葉に詰まった。 ここに来てから何度も尋問され、その度に拒否をして暴行が行われる。 餡子脳であるがその恐怖はこの一週間でしっかりと刻まれ、その痛みと恐怖を思い出して少し言葉に詰まった。 だが、れいむは愛するまりさを裏切る気など毛頭無い。 例えこのまま殺されても絶対に喋らないと、そう心に誓っていたのだ。 「ゆゆっ!?うそをつくんじゃないぜ、おまえがにがしたんだからどこにいったかしっているはずなんだぜ!!」 「れいむはしらないっていってるよ……ゆっくりりかいしてね」 「ゆぎぃ!!おまえそんなことをいってどうなるかわかっているんだぜ!?」 れいむの馬鹿にしたような受け応えに、頭に青筋を浮かべそうな程に真っ赤になりながらまりさは凄む。 だが、周りは敵だらけというそんな状況でもれいむは怯えた表情も出さず、その口元に笑みを浮かべ。 「でも……まりさならめのまえにいるよ?」 「ゆっ?どこなんだぜ!?」 そうれいむが呟くとまりさはキョロキョロと見渡すが、何故か周りのゆっくりは一斉にそのまりさの方を見る。 「ゆぅぅ、でもわたしのしっているまりさとはちがうみたいだね」 「ゆ?どういうことなんだぜ?」 「わたしのしっているまりさとちがって、ばかでゴミくずでまったくゆっくりできてないね」 「ゆゆっ!??」 れいむのその言葉に唖然となり、その餡子脳に考えを巡らす。 このれいむはなにをいっているんだぜ? まりさがきいているのはむれをひきいていただめまりさで、ここにいるのはこのさいきょうまりささまだけなんだぜ。 そのうえ、ばかでゴミくずでゆっくりできない? だれのことをいってるんだぜ? 暫くグルグルと考えを巡らすと、流石のまりさにもどういう事か理解出来てきた。 れいむはしてやったりという風にその口元に中傷の笑みを浮かべる。 「ゆぅ!!こ、こいつ、このまりささまをばかにしてるんだぜ!?」 「ゆゆっ、ゆっくりりかいできたんだね。ゴミくずからオガクズにいいかえてあげるね」 湯気が出そうな程に全身を真っ赤にして、瀕死のれいむ今にも飛び掛らんとするまりさ。 その様子に怯む事無くれいむは更に罵倒を続ける。 「あかくなったらつよくなるとでもおもってるの?さんばいなの?しぬの?」 「ゆぎぃぃぃ、まりさはおこったんだぜぇぇ!!ゆっくりしねぇ!!」 このまま嬲り者にされたまま生き長らえるくらいなら、このまま死んだ方が良いとれいむは思っていた。 そうすれば、れいむを助けに来ようとするまりさを危険な目にあわせる事も無い。 ただ一つ心残りが有るとすれば、最後に一度で良いから愛する家族に会いたかった。 それを思うとやはり涙が零れる。 そして死が怖くなり、段々と震えが起きそうになる。 れいむはそんな湧き上がるものを、歯が欠けそうなほどに奥歯を噛み締めてぐっと堪えた。 こんな非常なゆっくり達にこれ以上惨めな姿を晒さないためである。 まりさが地を蹴る瞬間、れいむはそっと眼を瞑る。 すると死ぬ事への恐怖も不思議と消えていった。 はくれいむに一矢報いたかったが、この馬鹿なまりさに屈辱を味あわせてやっただけで満足しよう。 れいむはそう思った。 「ゆっくりお止めなさい!!」 突然、その部屋に怒声が響く。 その声にれいむを殺そうとすべく飛び上がる瞬間のまりさは身を竦めて動きを止める。 周りの者も眼を丸くして、はくれいむの方を見遣る。 「おお、愚か愚か。そのようなゆっくりの罵詈雑言に耳を傾けるとは」 「ゆぅ……でもはくれいむさま、こいつはまりさのことをばかにして……」 「お黙りなさいな。このゆっくりは死ぬ気力も無いから口先であなたを煽動し自らを殺そうとしているだけなのですよ」 「ゅぅ……」 「それにこれ以上やっては死んでしまいます。このゆっくりにはまだまだ役に立って貰わないと」 まりさは、はくれいむにそう諭され眼を地面に落とす。 格好良い所を見せようと張り切ったつもりがこんな事になるとは思っていなかった。 「ゆふぅ……あなたはまだまだ激流にゆっくりと身を任せる事が出来てないようですわね」 そんな様子のまりさにはくれいむはそう呟き、一瞥する。 その顔はこの世の終わりとでも言おうか、先ほどから一転、真っ青に血の気が引いている。 「ですが、あなたの忠義心は十分に評価していますわ。今後もわらわの部下として精進なさい」 思いも寄らぬ言葉。 それを聞いてまりさの表情はぱっと華やいだ。 二転三転、器用なものである。 しかし、はくれいむのその飴と鞭の使い分け様はやはり他のゆっくりには真似が出来るものではなかった。 周りで見ている者達も、仲間といえどまりさの馬鹿さ加減に呆れる一方で有ったが、逆にそれを許すはくれいむの懐の深さを際立たせる所となった。 そしてはくれいむにとってこの一連の流れは十分に計算通りのものであり、愚かなまりさを傍に置いている理由の一つでもある。 正に悪のカリスマというべきであろうか。 「ゆゆっ、そんなことをいいながられいむをころすどきょうがないだけなんだよね!!」 その一連のやり取りの中、れいむが声を上げる。 はくれいむを挑発しているのだ。 「ゆふふ、愚か者は声だけは立派に張り上げますのね」 「そうやってゆっくりしてられるのもいまのうちだけだよ、はやくれいむをころさないと、ゆぐっ!!?」 そんなれいむの言葉を遮る様に周りのゆっくり達が二匹回り込み、その口に縄を噛ませる。 れいむはモガモガと口を動かすが一向に外れようとしない。 後ろでちぇんが器用にその縄を結び、猿轡が完成した。 れいむの唯一の抵抗を不可能にし、これ以上餡子を吐かれたりするのを防ぐためである。 「ふぁにするの!?ふっぐぃ、ふぁずしてね!!(なにするの!?ゆっくりはずしてね!!)」 「なにいってるかわからないよー♪」 ちぇんのその言葉に周りのゆっくりは苦笑し、バタバタと暴れるれいむに冷ややかな視線を浴びせる。 そして、はくれいむは周りの一匹に目配せした。 松明を咥えたゆっくりみょんである。 そのままみょんはじりじりとその松明をれいむへと近付けて行く。 「ふぐっ!!ふぁぐいよ、ふっぐりふぁがれてね!!(ゆぐっ!!あついよ、ゆっくりはなれてね!!)」 「ふぁめてね!!ふぁ……あ”ぐぅぅぅい”ぃぃぃぃ!!(やめてね!!やめ……あづぅぅぅい”ぃぃぃぃ!!)」 壁に追い込まれたれいむの身体にその松明の先端が押し付けられる。 逃げる事も適わずにその肌は焼け焦げていき、チリチリと髪が焼け千切れていく。 左右に避けようとしても、周りのゆっくりに押し戻される。 「ふ”ぇい”ぶが、ふぉべち”ゃう!!ふぉべちぁうっべばぁぁぁぁ!!(れいむが、こげちゃう!!こげちゃうってばぁぁぁぁ!!)」 「ゆへへ、さっきまでのいせいはどこいったんだぜ?」 まともな言葉も出せずに涙を流して壁へと張り付くれいむの無様な姿を見て、先ほどのまりさも溜飲が下がったようだ。 必死の形相のれいむに構わず、みょんはグイグイとその火をれいむに押し付ける。 辺りには焼き饅頭の香ばしい匂いが立ち込め、それが段々と焦げた匂いへと変わっていく。 すると急に、ぼわっとれいむの頭に火の手が上がる。 本格的に髪に引火してしまったのだろう。 「ふぎゅあ”ぁぁぁぁぁあ”あ”あ”あ”あ”ぁあぁ!!」 頭に火を付けて眼を見開き、言葉に成らぬ叫び声をあげたれいむに松明を持っていたみょんも思わず後ろに下がる。 引火した火を消そうとれいむがゴロゴロと地面に転がり、その様子に周りで見ていたゆっくり達も後ろへと退いた。 「びゅぅべいぶのびゃびばぁぁ!!おびぼんぎゃあぁぁあぁぁ!!(でいぶのがみ”がぁぁぁ!!おりぼんがぁぁぁぁぁ!!)」 「ぶぁふへへ、ふぁりしゃあぁぁあ!!ぶあぁぁぁりじゃあ”ぁぁぁ!!(だすけてぇ、まりじゃあぁぁあ!!ま”あぁぁぁりざあ”ぁぁぁ!!)」 一度は死を覚悟しながらも、じわりじわりと蝕む苦しみに思わずれいむはまりさに助けを求める。 だが当然まりさは来ない。 身体の全水分を眼から垂れ流しながら、必死に愛するゆっくりの名前を叫びながられいむは転げ回るだけだ。 やがてそのまま全身に火が廻り焼け焦げてしまうかに思えたその様子を、たじろぐ事も無く見ていたはくれいむは後ろに控えていためいりんに合図を出す。 すると、めいりんが咥えた水の入った容器をれいむに投げつける様にぶつけ、辺りに水が飛び散ると共に見事に炎は鎮火された。 「まりさもひをけすのにきょうりょくしてやるんだぜ!!ぺっ!!」 「わかるよー、ちぇんもしーしーしてあげるねー♪」 そのまま痙攣を繰り返すだけの動かないれいむに対して、無情にもまりさは唾を吐き掛け、ちぇんもチロチロと尿を浴びせ掛ける。 その後に、ちぇんはれいむが死んでいるのか不思議そうに眺めていたが、 未だにプスプスと煙をあげてはいるものの、何とかれいむは生きているようだ。 「めいりん、そのゆっくりの縄を外して差し上げなさい」 「じゃお!?じゃおおおおおお!!」 戸惑いはしたものの、めいりんはれいむに結び付けられていた猿轡を外しに掛かった。 縄は半分焦げ付いていたので、結び目を解く必要も無く簡単に外れる。 そのままめいりんは、半分焦げ饅頭になったれいむの顔を覗き込んだ。 髪は以前の半分の所まで焼けて巻き上がり、アフロとまではいかなくても奇抜なものとなっていた。 その上リボンも所々焼け、穴がそこかしこに覗き、以前のれいむからは見る影も無い。 「……ゅひゅぅ……ゅひゅ……」 顔を近付けてみるとどうやら息をしている。 めいりんはホッと、ゆっくりには存在しない筈の胸を撫で下ろした。 今はこのようにはくれいむの部下となってはいるものの、めいりんは自身を群れに加え、 野生では虐められるのが当たり前の自分を一ゆっくりとして扱ってくれたれいむが好きであった。 ただ、反乱の時は突然の事でどちらに味方すれば判らず、オロオロしている内に群れははくれいむの手中に収まり、めいりんも言われるがままに部下となってしまった。 しかしそうは言ってもそう簡単に割り切れるものでは無く、このようにはくれいむの部下でありながらも気付かれずにれいむの身を案じる事もあった。 「めいりん、よく出来ました。ゆっくりお下がりなさい」 「じゃおぉぉぉ……」 「ゆ!?このばかめいりん。ゆっくりさがれとおっしゃってるんだぜ!!」 「じゃお!?」 はくれいむの呼び掛けにすぐに応えなかっためいりんに、まりさが身体をぶつける。 大した痛みは無いものの、目の前のれいむに何もして上げられない事を悔しく思い、めいりんは悲しい顔をしたまま後ろへと下がる。 残されたれいむは火傷の痛みだろうか、白目を向いたまま時折ビクリビクリとのた打ち回る。 「ゆふふ、今日はこのくらいかしらね」 れいむのその様子を満足そうに眺めながら、はくれいむは口元に笑みを浮かべる。 そのまま近くのゆっくりに何事かを囁くと、くるりと踵を返してその場を後にしようとした。 後ろには側近の者達が続き、後には命令を受けたゆっくりとその他に数匹のゆっくりが残る。 監視役とれいむの世話をする群れに長く居たゆっくりである。 はくれいむはこの様にして群れに長く留まっていたゆっくりの自分に対する忠義心を試し、旧体制の反乱の芽を潰すよう心掛けていた。 れいむの世話をしているゆっくりが何かしら不穏な動きをすれば監視役がそれを報告し、即座に対処する。 新たなる群れを作るのに不穏分子は早く潰すに越した事は無い。 敢えてれいむに近付け、その選別を行うのだ。 「あ、そうそう……」 突然ピタリと、はくれいむはその歩みを止め「今日はそなたの親友を招いていたのであった」と振り返らずに話し出す。 「先日であろうか、そなたを助けようとわらわ達に歯向かった愚か者達がおってな」 「確か主犯格はぱちゅりーと名乗る者だったらしいが……」 その言葉に、混濁していたれいむの意識が揺り動かされる。 れいむの最も信頼のおけるゆっくりの内の一匹。 子供の内から一緒に群れで暮らしてきたゆっくりに違いない。 「ちぇんよ、あれを持って来させよ」 「わかるよー♪」 はくれいむにそう言われたちぇんはピョンピョンと何処かに跳ねて行き、暫くすると何匹かのゆっくりが風呂敷に包まれた何かを引き摺るようにやってきた。 ゆっくりと、れいむの捕らえられた部屋へと風呂敷が運び込まれる。 「ぱ……ちゅ、りぃ……?」 グルリとれいむの眼が白目から黒目へと切り替わり、弱々しく声をあげる。 眼の前の風呂敷の中にぱちゅりーが居るのだろうか? 自分の為に捕らえられてしまったというのか? そんな疑問が浮かび、哀しみが込み上げて来る。 その一方で不謹慎ではあるが、今まで会う事が出来なかった仲間に会う事が出来る事への喜びが湧き上がったのは確かであった。 れいむのその眼に微かに光が戻ったのを確認すると、はくれいむが合図を出す。 するとばさりとその風呂敷が広げられ、そこには丸い物体が置かれていた。 紫色の帽子に月の飾りを付け、その更に紫色の美しい髪は昔のまま色褪せてはいない。 間違い無い、れいむの親友のぱちゅりーだ。 「ぱちゅ、ぱぢゅりー、よがっだ、いぎでだんだね」 もう、ろくに動かない身体をズリズリと動かして、そのぱちゅりーへと近付く。 半分焦げた身体に痛みがまだ有ろうが、眼の前に親友がやってきてくれた事でそんな事など気にもならなかった。 ジッとれいむの方を見詰めるぱちゅりーに少しづつ近付いて行く。 「ぱちゅりー……ぱちゅり……ぃ?」 やっと肌を接する程に近付いて、ある異変に気付く。 このぱちゅりー、先ほどから身動ぎ一つしないどころか、眼を開けたまま瞬き一つしないではないか。 それに近くで見ると判る。 肌が何処か変な、何と言うか乾いているというべきであろうか、あの瑞々しさが無い。 更に近付いて、肌を接してみるとあの柔らかいぱちゅりーの身体とは思えない、岩肌にも似た感触を覚える。 そのままぱちゅりーに呼び掛けながら、顔を覗き込む。 返事も無く、そしてその瞳は眼の前にいる筈のれいむを捕らえることも無く、何処かずっと遠くを見ているようだ。 光が無いその眼もやはり乾いていた。 周りのゆっくり達もその異常さに気付く。 「こ、これ……」 「それを作り出すのには苦労した」 異変に気付いたれいむの様子に、満足そうにしながらはくれいむは説明を始める。 「わらわの美意識からしても、反逆者とはいえそのぱちゅりーは中々に美ゆっくりであってな」 「どうにかして、その姿を永遠にゆっくりと留められないだろうかと思案したのじゃが……」 凍り付いた表情でれいむは、はくれいむへと視線を泳がす。 「他の反逆者に協力してもらって、どうにか作り上げる事に成功したわ」 「樹に吊るして下から炎で燻しあげる……そなたのような愚か者には理解出来ぬだろうが、燻製焼きというものであってな」 「ただ普通にやっては、他の反逆者のように最後は見るに耐えない悲惨な表情で死に絶えるものだから」 「そのぱちゅりーは飾りを取った後、全身にきつく布を巻きつけて表情が崩れぬよう工夫したのじゃ」 この眼の前のゆっくりは何を言っているのだろう? れいむはそんな表情で何も言えずにその言葉を聴き続けた。 「一番難しかったのは、閉じたままはつまらぬ故に事前に眼の周りを動かぬよう焼き固めておく事だったわ」 「その時には酷く抵抗しておった……むきゅむきゅと泣き叫びながら、そなたの名前も大声で叫んでおった」 「後は両目だけを覗かせ、先ほど説明したように蓑虫の様に布を巻きつけ吊り上げ、一晩中下から煙で燻し上げたのじゃが……」 「そこから覗く瞳はひたすらに涙だけを流し、赤ん坊のように潤んだそれは何処か愛おしさすら覚えたのぅ」 「絶命する随分前には、もはや瞳の水分は完全に失われて何も見えてはおらなかった様子だが」 途中から、れいむの頭の中を鐘がガンガンと打ち鳴らすように感覚を覚えた。 普通のゆっくりであればはくれいむの喋る事を半分も理解できなかったであろうが、半ば賢いだけにれいむはその残酷な情景を頭に浮かべてしまった。 先ほど自分が味わったあの苦しみと息苦しさを、ぱちゅりーは一晩中も味わわされたのだ。 そうでなくてもぱちゅりー種は元来ぜんそく持ちである。 少しのホコリや砂を呼吸が出来なくなる程、それを煙で燻し上げるなどどれほどの苦しみであろうか。 想像を絶する。 「ゆ”あ”あ”ぁぁぁぁぁぁ、ばぢゅりぃぃぃぃ!!くるしかったよね?ゆっくりできなかったよね?」 眼の前の最早形だけで命の無いぱちゅりーに、それでも頬をすり合わせて涙を流す。 れいむの頭にぱちゅりーと過ごした、数々の想い出が去来する。 まだ賢く無かった子供の頃に様々な事をぱちゅりーから学んだ。 群れの皆で協力して、れみりあを撃退した時に一緒に群れを指揮した事。 親友でありながらも師でもあったぱちゅりー。 まりさとの結婚で一番喜んでくれたのもぱちゅりーだった。 それらを思い起こすと、身体中の水分が涙となって流れ出していく。 それが段々と黒々しくなり、完全に餡子が流れ出しても止まる事は無かった。 そして少し前に、ぱちゅりーに会えると喜んだ自分を呪った。 そんな馬鹿な自分のせいでぱちゅりーが死んでしまった。 そう思えて仕方なかった――そして。 「ゆっぐじぃぃぃ……ごろじでやるぅぅぅぅ!!」 餡子の涙を流したその顔で、はくれいむの方へと向き直る。 その余りの迫力に、周りの取り巻きは怯えた表情を浮かべ、後ろへと思わず遠退く。 だが、肝心のはくれいむはというと、涼しげな表情でその様子を嬉しそうに眺めるばかりであった。 「ゆっぐじぃぃぃ、ゆっぐじぃぃぃぃ!!」 ずりずりと火傷で動かない身体を引き摺ってはくれいむの方へと向かう。 ゆっくりとは思えないどの行動の原動力は、凄まじい怒りに寄るものだろう。 それにハッとしたかのように、取り巻きのゆっくり達が間に割って入るがはくれいむは「ゆふふ、よいよい」とすぐさま退けさせた。 そのまま後少しで、はくれいむに喰いつける距離まで辿り着こうかという地点で、バタリとれいむは突っ伏すように顔を地面に向けて動かなくなってしまった。 「じゃ……じゃおおぉぉぉ!!」 近くで怯えながら見ていためいりんがすぐさま駆け付け状態を確かめる。 気絶しているだけで、どうやら死んではいないようだ。 だが、その顔は憤怒の表情で固まったまま動かない。 「じゃおおぉぉぉ!!じゃおぉぉぉ!!」 「なにやってるんだぜ、ゆっくりそいつにとどめをさすんだぜ!!」 取り巻きのまりさが声を張り上げる。 愛しのはくれいむを殺そうとしたそのれいむをそのままにしておくべきではないと思ったが、自分が近付いて殺す事は怖くて出来なかった。 めいりんは涙を流しながら顔を左右に振りそれを拒否する。 再びまりさが声を張り上げるがそれも拒否する。 「まりさのいうことがきけないばかめいりんなんて、ゆっくりできなくしてやるんだぜ!!」 「じゃ、じゃおおおぉぉぉん!!」 怒りのその言葉とゆっくり出来なくされると言われ、困惑するめいりん。 そんなやり取りと眺めていたはくれいむが、ゆっくりと指示を出す。 「ゆふふ、まだまだその愚か者にはゆっくりと楽しませて貰わなければならぬ」 そう言うと、周りで様子を見ていただけのゆっくり達にすぐさま治療に当たらせた。 どういう事かよく判らないといった表情のまりさも、ハッと我に返ると先ほどとは正反対に 「そのれいむをころすな」や「もしできなかったら、そいつらもゆっくりできなくするんだぜ」などと喚いている。 はくれいむはそれを暫く眺めていたが、ゆふふと笑い声をあげると踵を返して、今度こそは本当にその場を後にした。 そして更に一週間後、その洞窟の誰も知らない空洞の中を這いずるように一匹のゆっくりが進んでいた。 ゆっくりまりさである。 そのまりさはブツブツと何事か呟きながら、大人のゆっくりでは狭いその空洞の間を縫うように進み続ける。 その眼には何かしらの決意が見て取れた。 随分と進んだ後、開けた場所に出ると同時に一匹のゆっくりが目に付く。 反乱の一端を担っていてゆっくりみょんである。 見張りであろうか。 深夜のためうつらうつらと身を揺らせるそのみょんに気付かれぬよう、まりさは帽子から鋭く尖った木の枝を取り出す。 それを口に咥えると、ゆっくりとその背後へと近寄る。 すると突然、まりさの気配に気付いたのだろう。 みょんが振り向きそのまりさを確認すると、仲間を呼ぶために声を張り上げようと身体を膨らます。 その一瞬の間に、まりさはゆっくりしないで口に咥えた凶器をみょんへと突き刺す。 何が起こったのかイマイチ理解出来てないみょんの身体の中心を抉るようにそれを掻き回し素早く抜き取る。 するとそこから大量の餡子が噴出しだす。 みょんの眼は次第に生気を失い白目を剥き最後には、 「ぱ、ぱいぷ…かっとぉ……」 と呟き、その場に力無く倒れた。 まりさはそのみょんの最後を悲しそうな眼で見遣った後、帽子を被り直して先へと進み始めた。 この程度の事で感傷に浸っている場合じゃない。 そうまりさは自身に言い聞かせているようあった。 「れいむ、ゆっくりまっててね……まりさがぜったいにたすけだしてやるからね」 続く 後書き・はくれいむの喋り方はハクレイ4000年の歴史のせいでしょう。 by推進委員会の人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1548.html
『れいむの平和な一日(後編)』 タイポあき 4作目 一応れいむの平和な一日(前編)の後編ですが、読まなくても問題ない気もします。 なんて言うか、既に時間・空間を共有してるだけの別のお話に……。 ※注意など ・現代もの ・飼いゆもの ・自滅もの ・ゲスもの ・うどんげは、今回のお話からは退場したよ! いわゆる「見せられないよ!」な状態だよ!! *** ガチャガチャ、ぱたん。 「ただいまー」 玄関が開く音に続いて、お姉さんの声がします。 れいむのお昼ねタイムは、一時中断です。 いつの間にか〈餡子の噴水〉さんが消えてることには気が付きません。 玄関までぴょんぴょんすると、いつものご挨拶を口にします。 「お姉さん、ゆっくりお帰りなさい!」 「ゆっ、ゆゆゆ?」 そう言ってお姉さんを出迎えたれいむでしたが、口にするなり〈首〉を傾げます。 飼い主のお姉さん以外にも、何人かお姉さんがいたからです。 「ああ、これ私の友達だから」 れいむの疑問を察したお姉さんが、れいむに説明します。 これ扱いしているのは親密さの裏返しです。 「ゆ! お客さん、こんにちは! れいむのお家でゆっくりしていってね!」 お客さんなら心配ありません。 体をくにっと伸ばして、にゅるりと曲げて、しっかりご挨拶をします。 お辞儀のつもりなのでしょう。 「あら、可愛いれいむちゃんね」 「よくここまで、素直ないい子に育てられたわね」 「あらあら、これはこれは」 「ホント。ウチの子に、中枢餡でも煎じて飲ませてやりたいわ……」 お姉さんのお友達も感心しています。 そういって頭をなでなでしてくれたり、ほっぺたをぷにぷにしてくれたりしました。 その間に間に、お姉さんはリビングまでひと走り。 アイロンを手にして、すぐに引き返してきました。 「ああれいむ、挨拶してくれた所悪いんだけど、私たちまた出かけるから。 その間、この子たちと一緒にお留守番してて。机におやつ置いといたから、みんなで食べて」 戻るなり、この一言です。 どうやら、お出かけの準備に戻っただけのようです。 よく見れば、お姉さんのお友達もゆっくりを連れています。 れいむとお姉さんのお家を、臨時の託ゆ所として使うつもりなのでしょう。 お姉さんは言いたい事を伝えると、さっさと出かけてしまいました。 閉まる扉に向かって、手を振るようにもみあげをぴこぴこして見送るれいむでしたが、 扉が閉まるのを確認すると、ゆっくり振り返ります。 そこにいたのは、4匹のゆっくり。 お姉さんのお友達の飼いゆたちです。 まず目に付くのが、大きなれいむ。 ゆふんとアゴをつきだして、ふんぞり返っています。 世界は自分を中心に廻っている。 そう言わんばかりの尊大な態度です。 「ゆふん。汚いお家だけど、仕方ないね。ここをでいぶのゆっくりプレイスにするよ!」 しばらくあたりを見回していましたが、口を開くなり〈おうち宣言〉です。 ゲスの見本のようなれいむ、いやでいぶです。 「ゆゆ! なに言ってるの? ここはれいむのおうちだよ!」 そんなことを言われては、黙っていられません。 すかさず反論します。 「どぼしてそんなこというの! でいぶはシングルでいぶなんだよ! 優しくしないといけないんだよ! そんなことも分からないの! ゲスなの? 死ぬの!?」 ですが相手はゲス。 そもそも話が通じません。 「ゆっ、ゆぅ……」 何を言ってるのか理解不能でしたが、その剣幕には驚きました。 思わず反論を飲み込んでしまいます。 その様子を少し離れてみていたのが、まりさです。 「ゆふん。やっぱりれいむは、ゆっくりできないのぜ」 その言葉は、ずいぶんと冷ややかです。 それもそのはず。 このまりさは、珍しくも元野良のまりさです。 今では運よく拾われて飼いゆに収まっていますが、野良時代は苦労してきたのです。 それも、ゆっくりできない原因のほとんどにおいて、れいむ種が原因でした。 顔を合わせれば〈シングルなんとか〉だの〈かわいそう〉だの言ってエサを請求する。 れいむ種と番になれば、巣の中でふんぞり返って自分は動こうとしない。 冬篭り直前にも関わらず、半ば無理矢理すっきりしたあげく、食料不足になって赤ゆをむさぼる。 赤ゆがいなくなれば、自分が食べたのを忘れてまりさをゲス呼ばわり。 挙句の果てには、まりさすら食料にしようとする。 どうしようもないとはこのことです。 必死に逃げているところを〈まりさのお姉さん〉に助けられなければ、 まりさのゆん生はそこまでだったでしょう。 もっとも実際は、「まりさを助けた」のではなく「誤ってれいむを潰してしまった」 と言うのが正しいのですが。 それでお姉さんは〈番をうしなったかわいそうなまりさ〉を飼いゆにしてあげたのです。 余談になりますが、その事件が影響を与えたのは、まりさのゆん生だけではありませんでした。 反省した〈お姉さん〉は、公園の樹上での〈エクストリーム・アイロン掛け〉の練習をやめました。 「パンツが丸見えだから、公園での練習はやめろ。せめてスカートはやめてズボンを穿け」 アイロニストの友人達から、つねづねこう言われ続けていたからです。 〈まりさのお姉さん〉としては、木の下から見上げてくる輩には落下する〈鉄塊〉による 制裁を与えていたので、全く問題ないと思っていました。 しかし、誤って〈罪のないれいむ〉を潰してしまう事故が起こってしまったのを機に、 練習場所を変えたのです。 その一方で、ゆ虐にマンネリを感じていた虐待お兄さんに、多大なインスピレーションを与えました。 彼はビデオカメラを片手に、幼女たちが遊ぶ公園を散策していました。 いったんゆ虐を離れての気分転換です。 そのときでした。 撮影していた彼の目の前で、一連の事件が起こったのです。 「――てない、だと!」 後に彼は、危険な場所でゆ虐を行なう〈エクストリーム・ゆ虐〉をあみ出し、町おこしに貢献します。 ――何故こんなものを思いついたのか? しばしばこう問われましたが、その返答も決まっていました。 「あのときの光景は、今でも心と動画に焼きついている――」 鼻血をたらしながら、そう語るのが口癖のようなものでしたが、 その〈動画〉の正体が明かされることはありませんでした。 しかし、それもまた別のお話です。 そして話は戻り、まりさの目の前では〈おうち宣言〉をしているれいむが二匹。 まりさにとっては唾棄すべきゲスゆたちです。 「あんなれいむは無視して、あっちでゆっくりするのぜ」 そういってリビングに跳ねていきます。 「むきゅ。そうね。無能なれいむは放っておきましょう」 そう答えたのは、まりさに寄り添うようにしていたぱちゅりーです。 「でもここはれいむのおうちじゃないけど、れいむのおうちだよ。わからないよー」 残りの一匹であるちぇんは、れいむを気にかけていましたが、 二匹が行ってしまうと後を追いかけるのでした。 *** 「待つんだぜー」 「ゆふふ、つかまらないよー」 そういって追いかけっこする、まりさとちぇん。 「むきゅきゅ、これは貴重な〈まどうしょ〉だわ」 そういってチラシを見つめるぱちゅりー。 みんな楽しそうにしています。 ですが、れいむは楽しくありません。 それもそのはず、一緒に遊ぼう近づくと、まりさの笑顔が消えるのです。 そうして黙って自分から離れてゆくのです。 当然2匹もそれについていきます。 ちぇんはれいむを気にしていましたが、気休めにもなりません。 そうして〈一人ぼっち〉になるれいむ。 普段は一人でお留守番ができるとはいえ、この状況が楽しいはずがありません。 いや、それだけならまだマシでしょう。 一番の問題は、れいむのお気に入りのクッションさんを独り占めしているでいぶです。 それだけならまだしも、れいむに向かってやれこれを持って来い、やれこうしろだの 命令ばかりしています。 まさにでいぶです。 これなら本当に一人ぼっちのほうが、どれだけましなことでしょう。 それを見て「やっぱりれいむはゆっくりできない」と、まりさは再認識します。 れいむにとっては悪夢そのものです。 「ゆう……」 思わずため息がでてしまいます。 「ゆっ! そうだ、おやつさんを食べるよ!」 しかし、そこはゆっくりです。 楽しくなければ〈ゆっくり〉すればいい。 即座に思考を切り替えます。 早くもおやつにすることにしました。 キッチンの机の上にあったのは、とってもゆっくりしたポンデさんでした。 「ゆわあ、ポンデさんだぁ! ポンデさんは、とってもゆっくりできるよ!」 そういって、ポンデさんを〈むーしゃ、むーしゃ〉するれいむ。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ……」 言葉とは裏腹に、あまり幸せそうではありません。 ゆっくりできるポンデさんでも、ひとりで食べるのでは幸せも半減です。 「ゆぅ、やっぱり一人で〈むしゃむしゃ〉はさびしいよ……」 思わず声にでてしまいます。 そんなときでした。 机の端においてある、赤い小瓶を見つけます。 「ゆっ、これは! 〈あまあまさん〉の小瓶!」 れいむの頭の中には、お姉さんにつくってもらった〈あまあま〉の記憶が広がっていました。 暑くてへばっていたれいむに、お姉さんがつくってくれたカキ氷。 氷そのものも冷たくてゆっくりできましたが、赤い瓶の中身をふりかけると、 とっても〈あまあま〉になったのです。 「これをかければ、ポンデさんがもっとゆっくりできるようになるね! ゆっくりかけるよ!」 ただの氷が〈あまあま〉になるんだから、元々ゆっくりしているポンデさんにかければ、 もっとゆっくりできるに違いない。 れいむはそう考えたのです。 れいむは、瓶の中身を惜しげもなくかけてゆきます。 あっという間に真っ赤になるポンデさん。 もはやこれは、ポンデさんに対する宣戦布告です。 「ゆうう! ポンデさん! とってもゆっくりしてるよおっ! れいむに、むーしゃむーしゃされてね! ――ゆぴゃっ!」 そのときでした。 れいむは後ろから強い衝撃をうけて弾き飛ばされます。 「何してるの! でいぶのあまあまさんを奪うなんて、とんだゲスだね!」 衝撃に目を回すれいむでしたが、突き飛ばしたでいぶはそんなことにかまわずにまくしたてます。 「ゆぅ……。ちゃんとみんなの分は……」 「馬鹿なこと言わないでね! ここはでいぶのお家だよ。だから全部でいぶのものだよ! そんなことも分からないクズは、ゆっくり死んでね!」 そう言って、手加減なしの体当たりを仕掛けます。 体格の良いでいぶの体当たりを受けてはたまりません。 「ゆぶっ!」と悲鳴をあげながら、はじき飛ばされます。 ころころ転がり、床に落ちてはまた「ゆぶっ!」と悲鳴をあげる。 それでも勢いはとまらず、ころころとみんなのいるリビングまで転がっていくのでした。 自分の〈あまあま〉を奪い取ろうとする〈ゲス〉を制裁したことに満足したでいぶは、 さっそく〈むしゃむしゃタイム〉に入ります。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」 おくちの中に広がるのはポンデさんの甘さと、もちもちの食感です。 とってもゆっくりできる瞬間でした。 ――そしてわずかに遅れて灼熱感が餡子を苛み、続いて嘔吐感が全身を包みます。 その理由はれいむのかけた赤い小瓶です。 赤の小瓶にはこう書いてありました。 “タバスコ”と。 えれえれ、えれえれ。 (餡子を吐いてはゆっくりできなくなる!) そうは思っても、餡子の流出は止まりません。 でいぶは気が付かない間に、致死量のタバスコを摂取してしまったのです。 なぜこんなことになったのでしょう? それは味を感じるシステムに原因があります。 辛さに対する反応が遅れたのは、辛さが味覚ではなく痛みであるからです。 しばしば後から辛さが襲ってくるのは、このあたりが原因です。 加えてゆっくりは〈餡子脳〉という言葉に表されるように、〈ゆっくりできないこと〉よりも 〈ゆっくり〉を求めるナマモノです。 そのためタバスコまみれのポンデさんを食べても、タバスコの辛さよりポンデさんの甘さが 優先されたのです。 結果として、体が異変を感じたときには、致死量のタバスコを摂取していたのです。 防衛本能として、タバスコを体の外に排出しようと、嘔吐という作用が起こりますが、 既に手遅れでしょう。 仮にタバスコを含む餡子を出し切ってしまえば、でいぶの中身はほとんど残らないからです。 「でいぶの中身さん、でていかないでぇっ!」 そう叫んでも後の祭り。 それで止まるわけがありません。 危険なタバスコを排出するための防衛機能なのですから。 仮に吐くのを止められたとしても、体内のタバスコがじわじわと全身を蝕んで、 苦痛の中で〈永遠にゆっくり〉するだけです。 もはやあきらめて、餡子を出し切って楽になるのがもっともマシな道でしょう。 しかし、そこはでいぶ。 生への執着は並大抵ではありません。 防衛機能を押し込めると、吐いてしまった餡を無理矢理に飲み込みはじめました。 「むしゃ、むしゃ、ごっくん――ゆげえっ!」 ですが、即座に吐き戻してしまいます。 吐いた場所がまずかったようです。 ポンデさんを食べていて嘔吐感に襲われたのですから、当然吐く先もポンデさんのお皿です。 皿にはポンデさんに掛かりきらなかったタバスコさんが、なみなみと存在しています。 当然、吐いた餡子もタバスコ塗れです。 ただでさえゆっくりの有害物質を含む危険な餡子なのに、さらにタバスコを追加されて 真っ赤になっています。 「ゆげえっ、ゆぐぐっ、エレエレ、ごふっ!」 摂取したタバスコの増加により、嘔吐の勢いもそれに比例します。 早くも、体積の半分以上の餡子を吐いてしまいました。 「でいぶはまだ〈ゆっくり〉しないよ。餡子さんれいむの中にもどってね――ゆぎゃあ!」 それでもあきらめない、でいぶ。 今度はタバスコを直接なめてしまったようです。 もはや味覚は破壊され、二度と〈むーしゃむーしゃ幸せ〉を楽しむことはできないでしょう。 もっとも痛覚に根源を持つ辛さだけは、しっかりと感じることができますが。 「餡子さん……。いじわるしないで、でいぶに戻ってね――ゆごっ!」 またタバスコを舐めたようです。 こんな状態になっても諦めないのは、生への執着を称えるべきなのか、それともその無駄を笑うべきか。 一つだけ言えるのは、その分だけでいぶの苦しみは続くということです。 がたん! だばだば。 「ゆぴゃああああっ!」 苦痛に転げまわったために、タバスコの瓶を倒してしまったようです。 その中身はでいぶの全身に襲い掛かります。 これで触覚が失われました。 「いだい、いだいよ……。ま゛え゛がみ゛え゛な゛い゛……」 目にも入ってしまったようです。 でいぶの〈おめめ〉の機能も、一瞬にして失われます。 「あ゛ん゛こ゛さ゛ん、で゛い゛ぶ゛の゛な゛がに゛……」 それでも餡子を戻そうとするでいぶ。 しかし視覚は奪われ、触覚も失い、タバスコと餡子の区別もつかない状態です。 タバスコを舐めては「ゆ゛ぶっ!」と悲鳴を上げて吐いていました。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……」 結局、飲み込んでは吐き戻しを数十回繰り返した後、でいぶは〈永遠にゆっくり〉しました。 餡子が真っ赤になるほどタバスコを含んでいるのに、甘い香りがするあたり、 でいぶの苦痛が伺えます。 タバスコに悶絶して転げまわったために、命より大事なお飾りもボロボロです。 これでは、他のゆっくりに同属と認識されないでしょう。 しかしもはや関係ないことです。 お飾りを気にする存在は、既にこの世にいないのですから。 *** ころころ、ころころ。 リビングに入っても、転がるれいむの勢いはとまりません。 前方にある、ゆっくり用オモチャ等を弾き飛ばしながら突き進みます。 その先にいたのは、〈まどうしょ〉を読んでいるぱちゅりーです。 べちっ! ずるずる――ぐちゃぐちゃ、ぶちゅり! やわらかいもの同士がぶつかる音に続いて、それを引きずる音、そして何かが潰れる音がします。 れいむがぱちゅりーを巻き込みながら転がり、窓にぶつかって静止したのです。 「ゆうう……。ひどい目にあったよ……。 ――ゆっ! ぱちゅりー、どうしたの! くりーむさん吐いたら駄目だよ! そんなことしたら、〈ゆっくり〉しちゃうよ!」 ゆっくり的には凄まじい勢いでぶつかった二匹ですが、れいむは無傷でした。 ぱちゅりーをクッションにしたからです。 それに対して、ぱちゅりーはひどい有様でした。 れいむと窓の間に挟まれたため、運動エネルギーを外に逃がすことができなかったからです。 まんまるだったフォルムも、半端にふくらんではじけたお餅ように、ひしゃげてしまっています。 〈まどうしょ〉を読むための〈大事なおめめ〉も、片方は完全に潰れてしまっています。 「どぼぢ……でい゛……(どうしてこんなことするの、れいむ……)」 歯もほとんどが折れてしまったため、上手く喋れません。 「一体何があったのかぜ――ぱちゅりー!!」 「ぱちゅりー、だいじょうぶ――わからないよー!!」 物音を聞いて、追いかけっこをしていた二匹が駆けつけてきました。 「ゆっ! よくわからないけど、ぱちゅりーが大変だよ! 早く〈おくすり〉を持ってこないと!」 それに答えるれいむ。 ここで言う〈おくすり〉とはオレンジジュース、あるいはその代わりとなる甘い液体のことです。 「わかったのぜ! まりさはここでぱちぇをみているから、〈おくすり〉を持ってきて欲しいのぜ!」 「ゆ! ゆっくり了解したよ!」 「ちぇんは、れいむを手伝うよー!」 本当はれいむが原因なのですが、言ったもの勝ちなのがゆっくり。 れいむの言葉を信じきり、それに従います。 もっともれいむ自身も本当に、何故こうなったか理解していないのですが。 ともかく、緊急事態につき、まりさのれいむヘイトは中断です。 一緒に協力することになりました。 *** 「ゆう、シロップさんがなくなっているよ……」 ちぇんと一緒にキッチンの机を探索していたれいむでしたが、赤い小瓶の中身がなくなっていたのです。 近くに赤い餡子さんがありましたが、今のぱちゅりーでは食べることができないでしょう。 「どうしよう……」 れいむが途方にくれていたときでした。 「れいむ! みつけたよー!」 ちゃんが何かを見つけたようです。 声の方に跳ねて行くれいむですが、ちぇんの示すものを見ても〈首をかしげる〉だけです。 そこにあるのがあまあまではなく、ガラス製の円筒上の容器だったからです。 「ゆ?」 「これはねー、中からあまあまさんがでてくる魔法の入れ物なんだよ。」 疑問を声に出すれいむですが、ちぇんは自信満々でした。 それだけ言うと、周りのものを足場にして器用によじ登り、その容器のなかに着地します。 「あれー、何もないよー! わからないよー!」 「ゆう、わからないのはこっちだよ、ぷんぷん! ――ゆっ! こんなところにスイッチさんがあるよ!」 れいむが何か見つけたようです。 「わかったよ! そのスイッチさんを押してねー! そう言えばお姉さんも、あまあまさんを出す前にスイッチさんを押してたよー!」 「ゆっくり理解したよ!」 そういって、ちぇんの指示に従いスイッチを入れるれいむ。 ギュイーン!! その刹那、轟音。 全身が聴覚器官である、ゆっくりにとってはたまりません。 音に対する心の準備をしていなかったこともあり、れいむは即座に気絶してしまいました。 ちぇんにとってはもっと酷いものでした。 突然、轟音とともに足場が高速回転したかと思うと、その勢いで上空にはじき飛ばされたのです。 「わからな――ゆげっ、ゆごっ!」 叫び声をあげようとするも、途中で地面に叩きつけられます。 それだけならまだしも、地面にあったのは回転する鋭い刃です。 一瞬にして、ちぇんの〈あんよ〉はずたずたになってしまいました。 もうお気づきでしょう。 ちぇんが見つけた魔法の筒とは、ミキサーだったのです。 ミキサーに饅頭を入れれば、一瞬のうちにバラバラになりそうなものです。 しかし今回に限っては違いました。 長年使ってきたせいで刃はボロボロになり、モーター部分も半ば死に掛けていたからです。 加えてちぇんが飼いゆであるために、しっかりと中身がつまり、皮も丈夫だったことも災いしました。 少し刃にふれただけでは、中身を出し尽くして絶命することができなかったのです。 その結果、刃で〈あんよ〉を削られたちぇんは、回転の勢いで再び上空に弾き飛ばされます。 そして今度は〈せなか〉から落下して、〈せなか〉を削られまた上空へ。 そんな滑稽な――しかしちぇんにとっては死と苦痛のダンスを踊る羽目になりました。 しかも、壊れかけのモーターの回転はときどき静止します。 まるでちぇんの心を壊さないように、最後まで苦しむようにと手加減しているようでした。 「わからないよー! れいむ助けて! どうして無視するのー! れいむー!」 刃が止まる合間を縫ってれいむに助けを求めるちぇんでしたが、れいむは気絶しています。 助けられるはずがありません。 助けを求めるその行動は、決して助からないということを再認識させ、絶望を深くするだけでした。 「わからないよー!」 「わがらないよー!」 「わがらない゛よー!」 「わ゛がら゛な゛い゛よ゛ー!」 「わ゛がっ……!」 「わ゛……!」 「……!」 「……」 苦痛の叫びも、だんだん不明瞭になっていきます。 少しずつ〈おくち〉も削られていくからです。 ――そして、数分後。 カチリ! タイマーに従って、ミキサーが静止したとき、中にあるのは黒々とした液体でした。 「――ゆっ!」 れいむが目を覚ましたようです。 目の前をみれば、ガラスの容器の中になにやら黒い液体がみたされています。 ちぇんがいないのが気になりましたが、今はそれより〈あまあま〉です。 頑張って容器を倒すと、中の液体を舐めとります。 「しあわせー!」 液体を舐め取ったれいむは、本能に従っての声を上げます。 黒い液体は、〈ココアさん〉でした。 それも砂糖たっぷりの、とってもあまあまな〈ココアさん〉です。 しばらくは〈ココア〉に夢中となるれいむでしたが、ふとぱちゅりーのことを思い出します。 「ゆっ! ぱちゅりーに〈おくすり〉を持っていくんだったね! ゆっくり忘れてたよ。勝手ににいなくなるなんて、ちゃんはゆっくりしてないよ!」 勝手にいなくなったちぇんに文句を言いながらも、口に含めるだけの〈ココア〉を含んで ぱちゅりーの元へ跳ねてゆきました。 何か口に引っかかった気がしましたが、そんな事よりもぱちゅりーの方が大事です。 気にしないことにしました。 *** 「ゆっくり〈おくすり〉を持ってきたよ!」 口に〈ココア〉をいっぱいに含みながら、器用に声を上げます。 「ゆっ! なんとか間に合ったのぜ!」 そう言って、まりさは場所を空けます。 見ればちゅりーは「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ」と痙攣を始めています。 際どいところでした。 れいむはゆっくりにしてはテキパキと、口移しでぱちぇに〈ココア〉を与えてゆきます。 そのお陰か、ぱちゅりーの痙攣は治まりました。 なんとか間に合ったようです。 ぱちゅりーの容態がひと段落したのを見て、安心した二匹でしたが、 まりさがちぇんがいないことに気が付きます。 「れいむ、一緒にいったちぇんはどうしたのぜ?」 「それがいきなりいなくなっちゃったんだよ! ぷんぷん!」 「そんなはずはないのぜ! ちぇんはそんな無責任な〈ひとでなし〉じゃないんだぜ!」 「そんなこと言っても、いなくなったものは、いなくなったんだよ! ゆっくり理解してね!」 そんな言い合いをしているときでした。 「ごふっ、げぼっ、えれえれ」 ぱちゅりーが〈ココア〉の一部を戻してしまいました。 一気に飲んだので、少し戻してしまったのです。 言い合いはひとまず置いといて、二匹はぱちゅりーに視線を向けます。 そこで見たのは想像を超えるものでした。 「ゆっゆあああああっ! ぱちゅりー、どうしてー!!」 「なっ、なんてことをするのぜ!」 二匹の視線の先にあるのは、ぱちぇの戻した〈ココア〉です。 そしてその上に浮かぶ〈キャベツのようなお帽子〉――ちぇんのお飾りです。 〈ココア〉と一緒にれいむから口うつしされたものの、喉にひっかかって吐き出したのです。 「ぱちゅりー、いくら助かるためだからって、ちぇんを食べるなんて……」 れいむは、何かおぞましいものを見たようにたじろきます。 まりさの反応はもっと過激でした。 「このゲスめっ!」 そう言って、ぱちゅりーに飛び掛ります。 「むきゅ、いったい何を言って……」 死の淵から戻ってきたばかりで、状況を把握していないぱちゅりーでしたが、 それを確かめる暇はありませんでした。 そもそも、ずっとまりさと一緒にいたのに、いつちぇんを食べたというのでしょう。 しかし、それを口にすることはできませんでした。 まりさの体当たりを受けたからです。 「むきゃっ!」 これはたまりません、悲鳴をあげてころがります。 しりごみしていたれいむでしたが、ちぇんの飾りを見ているうちに、恐怖は怒りに変わりました。 まりさと一緒になって、体当たりを仕掛けます。 「だから何を言ってるのか、分からな……」 「まだ言うの! ゲスは黙って死んでね!」 「れいむの言うとおりだぜ、ゆっくり死ね!」 「むぎゅっ!」 ぐしゃり! 哀れなぱちゅりーは、二匹のボディプレスを受けて潰れてしまいました。 その表情は無実を訴えて泣いていました。 それが癇に障ったのか、れいむは死体にむかって体当たりを続けています。 「このゲスゆ! よくもよくもちぇんを……ゆっゆっ、ゆわーん!」 感情を抑え切れなくなったのか、後半は泣きながら体当たりをしています。 「ちぇん、仇はとったのぜ」 一方のまりさは目をつぶり、今は亡きちぇんに語りかけます。 黙祷のつもりなのでしょう。 *** 「ゆぎゃああああっ!!」 そのときでした。 れいむの悲鳴が響きわたります。 「どうしたのぜ!」 まりさは驚いて、れいむに駆け寄ります。 見えばれいむの〈あんよ〉がざっくり裂けています。 その横に転がっているのは、ボールペンさん。 これが下手人でしょう。 「ぱちぇがれいむを道ずれにするために、罠を仕掛けていたんだよ……」 「なんてゲスなんだぜ!」 まりさは怒りをあらわにしますが、既にぶつける相手はこの世にいません。 怒りのやり場を失い、歯が折れてしまうのではないかという勢いで歯噛みをします。 もちろん、事実は単なるれいむの自爆です。 ぱちぇの死骸に体当たりを仕掛けている間に、ボールペンを踏んだだけです。 ついでに言えば、見た目こそ盛大なものの、れいむの怪我は大したことはありません。 確かに、動かなければエサをとれず、栄養状態も芳しくない野良ゆであれば致命傷でしょう。 しかし、飼いゆにとってはオレンジジュースで瞬時に直る怪我です。 仮にオレンジジュースがなくても、清潔でカビの心配のない室内で安静にしていれば、 半日もあれば治ってしうでしょう。 ですが、まりさは元野良です。 同じような怪我をして、命を落としていったゆっくりをあまた見てきました。 まりさからすれば、これは絶望的な怪我なのです。 対するれいむの方も、妙な反応をしていました。 「れいむはもう駄目だよ……。あんよさんをやられちゃったから。 ここで爆弾が爆発するのを見届けることにするよ。 れいむの代わりに、お姉さんに『ゆっくりしていってね!』って伝えて欲しいよ」 そういって、棚の上の置き時計を見つめています。 昨日、お姉さんと一緒に見た映画の影響なのでしょう。 れいむの中では、自分は最後の最後に命を落とす悲劇のヒロインなのです。 爆弾がどうこう言っているのは、ヒロインの命を奪ったのが時計に見せかけた爆弾だったからです。 「そんな弱気になるんじゃないぜ! まりさが〈おくすり〉を探してくるんだぜ! それまでじっとして待っているんだぜ!」 れいむが何を言っているのか、半分以上は分かりませんでした。 しかし、そもそも相手が何を言っているのか気にしないのがゆっくりです。 とりあえずれいむを勇気づけると、〈おくすり〉を求めて跳ねて行きました。 *** 「ゆう、やっと〈オレンジジュース〉さんをみつけたのぜ!」 まりさが目的のものを見つけたようです。 その表情は達成感で満たされています。 人間にとっては使いやすいキッチンも、ゆっくりにとっては違います。 人間を基準に設計されているので、全てが〈遥かな高み〉にあるからです。 ちょとシンクを覗こうにも、そこまで行くには引き出しの取っ手を足場にフリークライミングです。 机の上に登るためには、足置きから椅子へ、椅子からその背もたれへのアスレチックです。 それでもまりさはやり遂げました。 (れいむを助けるんだぜ!) その思いの勝利でしょう。 まりさの目の前には、黄色い液体の入ったガラス瓶があります。 〈オレンジジュース〉さんです。 果汁100%と書いてあるので確実でしょう。 もっとも、まりさには100(=たくさん)という部分しか読めませんでしたが。 「しかし、疲れたのぜ……。」 とはいえ疲れは、隠し切れません。 「何かゆっくりできるものは……。ゆ! こんなにあるんだから、少し分けてもらっても 問題ないんだぜ! めいあんっ! なんだせ!」 確かに〈オレンジジュース〉は沢山あります。 れいむには悪いけど、一足先に〈ごーくごーく〉させてもらうことにしました。 「ごーくごーく、しあわ――ぶべっ!」 〈オレンジジュース〉を飲んだとたん、それを噴き出してしまいました。 少量の餡子も一緒に吐いています。 「すっぱいいいいいっ!」 そう言って、机の上を転げまわります。 まりさの見つけた〈オレンジジュース〉の瓶、あれは確かに果汁100%の“ジュース”だったのですが、 飲むためのものではありませんでした。 瓶にはまりさに読めない漢字とカタカナでこう書いてあります。 “料理用レモン果汁、安心の果汁100%”と。 「ゆう、ゆうっ、ひどい目にあったんだずふぇ……。 ふぉふぉしふぇ、ふぁりふぁふぉふぁふぁんふぉれふぉうふぉ! (どうして、まりさの歯さんとれちゃうの!)」 やっとすっぱさが治まったまりさですが、悲劇は終わりません。 レモンの酸味によって、砂糖細工の〈歯〉が溶け落ちてしまったのです。 これでは二度と〈むーしゃむーしゃしあわせ〉ができませんし、まともに喋ることもできません。 たとえエサを含んだまま話せるゆっくりといえど、歯が無くてはまともに発音できないのです。 (なんてことするの! 意地悪な〈オレンジジュース〉さんは、ゆっくり死んでね!) 不明瞭ながらもそう言って、レモン果汁の瓶に体当たりをします。 しかし、そんなことをしても意味はありません。 そればかりか、瓶が倒れた勢いで中身が飛び散り、まりさの〈おめめ〉に直撃しました。 (ぎゃあ! いたいいぃっ!) これはたまりません。 人間さんでも痛いのですから、ゆっくりにとっては言わずもがなでしょう。 あまりの痛みに、悲鳴とともに転げまわります。 ぐちゅりっ! やわらかいものを踏む感触、それに続いて何か嫌な音がします。 何かゆっくりできない予感がしたまりさは、痛みをこらえて振り向きます。 そこにあったのは、潰れて変形した白玉でした。 まりさの〈おめめ〉です。 特に多くのレモン果汁を浴びた左目が、機能を失って外れてしまったのです。 (ゆあああああっ! まりさのおめめさん、元に戻ってね! ぺーろ、ぺーろ!) それの正体に気が付いたまりさは〈ぺーろ、ぺーろ〉しますが、もはや後の祭りです。 ここまで潰れては、眼窩に戻してオレンジジュースをかけても治らないでしょう。 悲劇は終わりません。 まりさのただでさえ狭い視界が、さらに狭くなりました。 いや、狭くなるというよりは、暗くなると言うべきでしょう。 排出し切れなかったレモン果汁が、まりさの〈生命力〉を侵食しているのです。 ゆっくりに対して、〈酸味〉は〈辛味〉ほど強烈な効果をもちませんが、その分じわじわと侵食して、 その対象の名に相応しいゆっくりさで苦しめ続けます。 〈ゆっくりのレモン煮込み〉が他に類をみないコクと甘さを誇るのは、このような理由です。 (苦しいよ、つらいよ。いっそ〈永遠にゆっくり〉してしまいたいよ……。 ――ゆっ、これは! 〈あまあま〉さん!) しかし、ゆっくりの神はまりさを見捨てませんでした。 苦しみの中でころげ回っていたまりさの舌に、〈あまあま〉な液体が触れたのです。 (ごーく、ごーく。しあわせー!) 死の淵ぎりぎりで〈ゆっくりの命〉そのものである〈あまあま〉を手に入れたまりさは、 必死にそれを貪ります。 取り戻される明瞭な思考と視界、そして無意識に発する言葉。 かつてこんなに満たされたことはあっただろうか――その言葉は魂の奥底からの叫びでした。 (ありがとう、あまあまさん!――――) やっと心の底から〈ゆっくり〉できたまりさは、自分を助けてくれたモノに目を向けます。 それは真っ黒な〈ココア〉でした。 〈ココア〉はガラス製の円筒状の容器からこぼれています。 その底には、バラバラになった緑色の布切れがぷかぷかと浮いていました。 (――――ちぇええええええぇえんっ!) その瞬間――まりさは全てを悟りました。 ちぇんがミキサーで粉々にされたこと。 それをやったのはれいむであろうこと。 ぱちゅりーは濡れ衣をきせられていたこと。 それを知らず自分が潰してしまったこと。 そしてなにより―― ――自分がちぇんを食べてしまったことを。 (ゆあああああああっ! ちぇん、ちぇん、ちぇええええんっ! ごめんね、ごめんね、ごめんね! まりさ、まりさ、まりさは! ちぇんを食べちゃった! 食べちゃったんだよ! しかも、ごーく、ごーく、しあわせって! しあわせー、しあわせ、しあわせーっ! ゆふふふ! そうそう、そうなんだよ、まりさはしあわせなんだよ! ちぇんをごーく、ごーくして! ゆふふふ! まりさはちゃんを食べちゃった! ゆふ、ゆふふふ! ゆふ、ゆふふふ! ゆふ、ゆふふふふふふふふふふふ……) もはやそこにいたのは、一見冷たくても根は優しいまりさではありませんでした。 自分のしでかしたことに耐え切れなかった、哀れなゆっくりの成れの果て。 奇妙な声で笑う一匹の――いや、一個のまんじゅうでした。 *** 「ただいま。みんな良い子にお留守番できたかな――」 帰ってきたお姉さんと、そのお友達の見たものは惨劇でした。 まず目に入ったのが〈あんよ〉を怪我して動けなくなったれいむ。 しかし、他に比べればささいなものです。 真っ赤に染まった〈餡子ペースト〉。 潰れた〈シュークリーム〉。 緑色の破片のの浮く〈ココア〉。 奇声を発する〈まんじゅう〉。 『…………ゆっくりだけで、お留守番をさせた結果がこれだよ!』 お姉さん達はそろって頭を抱えると、天を仰ぎました。 *** 「今日は怖い思いさせちゃってゴメンね」 「ゆっ、なんのこと? 今日も一日、平和だったよ?」 お留守番のせいで、危ない目に合わせた事を謝るお姉さん。 ですが、れいむの反応は的外れです。 それもそのはず、ゆっくりにとってあの程度のことは日常茶飯事。 今日あった程度の事件など、キレイさっぱり忘れています。 いや、むしろ忘れなければトラウマだらけになってしまい、生きてゆけないのでしょう。 もっともそれが〈餡子脳〉と蔑まれる原因であり、また学習しない要因でもあるのですが。 「……まあいいわ。それよりお土産かってきたわよ」 「ゆわーい! おみやげさんは、ゆっくりできるよ! ゆゆっ、パインサラダさんにステーキさん! とってもゆっくりできるね!」 果たして、このあとこのれいむが天寿を全うできるのかどうか。 それは正に神のみぞ知る事でしょう。 何しろゆっくりにとって〈死亡フラグ〉はそこかしこに転がっている ――いやゆっくりであることそのものが〈死亡フラグ〉なのですから。 ともあれ、れいむの平和な一日はこれでおしまいです。 -The End- 全編を通しての今回のテーマは「飼いゆに迫る日常の危険」でした。 前編が「ゲスとその駆除」、後編が「餡子脳に起因する自爆」となっています。 ちなみに裏テーマは「連鎖」と「フラグ」だったりします。 あと一発ネタで出した、うどんげとお兄さんへの反応にびっくりです。 この後、どうしようかしらん。 いままで書いたもの [1]ふたば系ゆっくりいじめ 421 みんなの幸せのために [2]ふたば系ゆっくりいじめ 422 黒色の魔法 [3]ふたば系ゆっくりいじめ 489 れいむの平和な一日(前編)
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5251.html
乞食れいむのおうた 作者:白兎 ※虐待成分少なめ。 ※独自設定。 夕焼けがとっても奇麗な、7月のとある日暮れ時。 学生もサラリーマンも、みんなおうちに帰って行きます。 そんな人々が行き交う道ばたで、おうたを歌う1匹のれいむがいました。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~♪」 ゆっくり特有のリズムを奏でながら、新聞紙の上でおうたを歌うれいむ。 彼女は、この街に住む乞食ゆっくりでした。 乞食ゆっくり。 もしかすると、皆さんは初めてお聞きになったかもしれません。 だって、この街でしか使われていない言葉ですから。 「おにいさん、こじきってなんなのぜ?」 それは、とある銀バッヂまりさの質問から始まりました。 飼い主の横でテレビを見ていたまりさが、お兄さんに、いきなりそんな質問をしたのです。 「ん?どこでそんな言葉覚えたんだ?」 「きょう、おさんぽのとちゅうで、ちいさなにんげんさんたちがいってたのぜ。」 やれやれ、とお兄さんは思いました。 あまり良くない言葉を覚えて欲しくなかったのです。 けれども、これも社会勉強と、まりさにその言葉の意味を教えることにしました。 「んー、なんて言えばいいのかな……。」 お兄さんは、知識の少ないゆっくりに、何とか説明を試みます。 「乞食って言うのはね、街中で物乞いをする人のことだよ。」 「ものごいってなんなのぜ?」 「道ばたで、人にお金をもらったりすること。」 「なんでなのぜ?にんげんさんは、かいしゃからおきゅうりょうをもらうのぜ?」 「そういう人は、仕事が無かったり、自分の家が無かったりするからね。」 まりさは、お兄さんの説明にしばらく体を捻っていましたが、 ふと全ての謎が解けたかのように、ぴんと背筋を伸ばして言いました。 「ゆん!ゆっくりりかいしたのぜ!こじきはのらのにんげんさんなのぜ!」 このまりさ、お兄さんの説明を少し勘違いしてしまったようです。 けれども、お兄さんも面倒くさかったので、あえて訂正はしませんでした。 翌日、銀まりさは、お友達のゆっくりに、この話を伝えました。 みんな、近くの家で飼われている高級なゆっくりばかりです。 「むきゅ。ぱちゅも、えきまえでみたことあるのだわ。」 「のらのにんげんさんだねー。わかるよー。」 「それじゃあ、のらのゆっくりも、こじきなのかしら?」 「きっとそうだみょん!」 野良の人間が乞食なら、野良のゆっくりも乞食だろう。 彼らは、そう結論付けました。 そして、街中で野良を見かける度に、彼らを乞食と呼ぶようになったのです。 「あんなところにこじきがいるのぜ!きたないのぜ!」 「こじきはとかいはじゃないわ!ありすのそばにこないでね!」 この2匹、別にゲスではありません。 ペットショップで、店員さんから、野良は汚くてゆっくりできないと教えられ、 それを忠実に守っているだけなのです。 けれども、この呼び名を広めたのは、当の飼いゆっくりたちではありませんでした。 それを横で聞いていた、地元の小学生です。 小学生というものは、相手を馬鹿にする言葉が大好きなのです。 あっと言う間に、地元の小学校でこの呼び名が広まりました。 そして、今度は、小学生の言葉遣いが、他の飼いゆっくりに影響を与えます。 「おーい、こっちに乞食がいるぜ!」 「ゆゆ!こじきがいるよ!」 「おおこじきこじき。」 こうして、分別のある大人を除き、みんなが野良ゆっくりを乞食と呼ぶようになりました。 野良ゆっくりたちは、それが悪口だと分かると、とても怒りました。 「れいむはこじきじゃないよ!れいむはれいむだよ!」 「まりさはりっぱなのらゆっくりだよ!こじきじゃないよ!」 ですが、毎日のように乞食乞食と言われ続けると、 なんだか本当に乞食のような気がしてしまうものです。 1年も経った頃には、野良ゆっくりも、自分たちのことを乞食と呼ぶようになりました。 ですから、この街では、野良ゆっくりはみんな、乞食ゆっくりと呼ばれているのです。 ところで、名は体を表す、という諺があります。 乞食ゆっくりたちは、だんだん本物の乞食と一緒の生活をするようになりました。 街中で、物乞いをするようになったのです。 もちろん、ただ座っているだけでは、何も貰えません。 だから、乞食ゆっくりたちは、芸を披露することにしました。 あるものはダンスを踊り、あるものはおうたを歌います。 こうして、乞食ゆっくりたちは、街中の風景にすっかり溶け込んでしまいました。 「ゆゆ~♪ゆ~ゆ~♪ゆ~♪」 このれいむも、昔は街の近くにある小さな森で暮らしていましたが、 土地開発で巣を追われ、こうして乞食になったのです。 都会での生活に慣れていないれいむには、苦労苦労の連続でしたが、 仲間の手助けにより、ここまでやってこれました。 「ゆ~♪ゆ~♪ゆゆ~♪」 「こじきのれいみゅにおきゃねをめぐんでくだちゃい!」 おうたを歌うれいむの横で、通行人に笑顔を振りまいているのは、 森を追われるときに助けた妹れいむです。 両親と他の姉妹は、おうちを潰そうとする巨大なすぃーに立ち向かい、 そして、ぺっちゃんこにされてしまいました。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~♪」 「おねがいしましゅ!こじきのれいみゅににゃにかめぐんでくだちゃい!」 森にいた頃は、うたひめと呼ばれ、みんながれいむのおうたを褒めてくれました。 でも、この街では、誰もれいむのおうたなど聴いてくれません。 みんな、顔色ひとつ変えずに、れいむたちの前を通り過ぎて行くだけです。 だけど、おうたを歌う以外に何もできないれいむは、おうたを歌い続けるしかありません。 「ゆゆ~ん♪ゆ~ゆゆ~♪」 おうたを歌っているとき、れいむはいつも、森での暮らしを思い浮かべます。 とっても優しいお父さんとお母さん、可愛らしい妹たち、 そして、みんなと遊んだゆっくりプレイス。 れいむは、ゆっくりとした記憶に浸りながら、今日もおうたを歌うのです。 ふと、道の向こうから、不機嫌そうなサラリーマンが歩いて来ます。 男は、今日、上司にこっぴどく怒られて、内心むしゃくしゃしていました。 「けっ、部長の指示が悪いんだろうが……。なんで俺のせいになるんだよ……。」 男が新聞紙の前を通りかかったところで、妹れいむが声を上げました。 「おじしゃん!こじきのれいみゅににゃにかめぐんでくだちゃい!おねがいしましゅ!」 男は、2匹にちらっと目をやると、あからさまに舌打ちをします。 「……なんだ、ゆっくりか。うっせーな。」 男は、ほんの一瞬、れいむの顔に目をやりました。 森の暮らしを思い出して歌うれいむの表情は、幸せそのものです。 男は、そのまま通り過ぎようとしましたが、何を思ったのか、 ポケットに手を入れると、きらきら光るものを、空き缶に投げ入れました。 チャリーン 金属のぶつかる音がします。 「ありがとうございます。」 れいむは、おうたを中断し、もみあげで三つ指をついて、頭を下げました。 「ありがちょうごじゃいましゅ!」 妹れいむは、ぴょんぴょん跳ねて、サラリーマンにお礼のダンスを披露します。 サラリーマンは、そんな2匹を無視すると、先を急ぎました。 れいむは、男が見えなくなったところで、ようやく顔を上げます。 「きょうはおかねもらえたね。くらいからもうおうちにかえろうね。」 「ゆっくち~♪」 れいむは、空き缶の中に入っている金属片を、もみあげでゆっくり取り出します。 いったいいくら入っているのでしょうか。 「……。」 夕暮れの太陽に赤く光る丸い円盤。 それは、お金ではありませんでした。 ただのビール瓶の蓋でした。 男は、嫌がらせをするために、わざとそれを入れたのです。 「ごめんね……。これおかねじゃないよ……。ごめんね……。」 「ゆぅ……。」 れいむは、白玉の目からすっと涙を流し、妹に何度も何度も謝ります。 やっと貰えたと思ったお金。 これなら、何も貰えない方が、どれほど良かったことでしょう。 「おにぇしゃんなかにゃいでにぇ。れいみゅゆっきゅりがまんしゅりゅよ。」 心配した妹が、れいむの頬にすーりすーりして来ます。 「おにぇしゃんしゅーりしゅーり。なきゃないでにぇ。」 そんな健気な妹を見ると、れいむも泣いてはいられません。 笑顔を取戻し、元気よく妹にすーりすーりし返してあげます。 「さあゆっくりおうちにかえろうね!」 「ゆっくち~♪」 れいむたちは、もみあげともみあげをしっかりと繋ぎ合わせ、 夕闇に包まれた始めた大通りを、ゆっくりと去って行きました。 「ゆゆん!このあんぱんさんはさんえんだよ!とってもやすいよ!」 「ちぇんかうよー!きょうはごえんだまもらったよー!」 「まりさもあまあまさんいっぱいあつめたよ!ゆっくりかいものしていってね!」 「ちーんぽ!」 ここは乞食谷。 乞食ゆっくりたちが集う、街の下宿所です。 もちろん、町中に谷などありません。 誰も住んでいないビルに囲まれた空き地が、谷底に似ているので、そう呼ばれているだけです。 乞食たちは、この谷の真ん中にあるドラム缶の前で、毎晩市場を開きます。 食べ物や段ボールなど、生活に必要なものを集めたゆっくりが、 人間からお金をもらったゆっくりに、それを売っているのです。 今日も市場は大盛況。 ゆっくりたちの賑やかな声が、あちこちから聞こえてきます。 「ゆぅ……。あんぱんしゃん……。」 そんな市場を遠くから眺めているのは、さきほどのれいむ姉妹です。 お金も物ももらえなかった2匹は、何にも交換するものがありません。 ただただ、他のゆっくりたちの買い物を見ている以外、することがないのです。 「れいみゅもあんぱんしゃんたべちゃいよ……。」 妹れいむが、物欲しそうに涎を垂らしながら、ちぇんの買った餡パンを見つめています。 「ごめんね。あしたはおかねをもらってあんぱんさんたべようね。」 「ゆぅ……。」 そんな会話をしていると、ふと市場の方から、1匹のゆっくりが跳ねて来ます。 それは、よく見知った帽子の子、ゆっくりまりさでした。 「ゆっくりしていってね!」 まりさは、笑顔でれいむに挨拶します。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇいっちぇね!」 れいむとその妹も、先程までの空腹を忘れて、元気よく挨拶を返します。 れいむは、このまりさと大の仲良しでした。 この乞食谷に案内してくれたのも、街中でたまたま出会ったこのまりさだったのです。 まりさは、人間にもそうと分かるくらいの美ゆっくりでしたが、野良は野良。 お帽子にはあちこちに穴が空き、お肌も都会の空気ですっかり汚れてしまっています。 そんなまりさは、とびっきりの笑顔で、れいむに話しかけます。 「きょうもいっぱいおかねもらえたよ!」 嘘ではありません。 このまりさは、1日になんと15円も稼ぐのです。 普通は5円も集まれば御の字なのですから、どれほど凄いかが分かります。 それもそのはず、このまりさは、芸の名人でした。 ぴょんと30センチも飛び跳ねてトンボ返りをしたり、 口に棒をくわえて、コーンの間に張った綱を渡ったりできるのです。 だから、人間さんたちの間でも、まりさはとっても有名でした。 「れいむはおかいものしないの?」 まりさは、れいむにそっと尋ねました。 れいむは何も答えませんでしたが、まりさには分かっています。 だって、れいむがお買い物をすることなど、滅多にないのですから。 れいむは、それくらい物乞いが下手なのです。 けれども、嫌みで尋ねたわけではありません。 まりさは、いつもこうやって、れいむにプレゼントする機会を作っているのです。 「れいむにこれあげるよ!」 まりさは、帽子の中から、野菜屑を取り出して、れいむに差し出します。 それは、八百屋さんの前で芸を披露したときに、店のおじさんから貰ったものでした。 このおじさん、普段はじゃがいもの皮しかくれないのですが、 その日はまりさの宙返りがあまりにも見事だったので、キャベツの葉っぱをくれました。 「ゆゆん!まりさありがとう!」 れいむは、うれし涙を流しながら、キャベツの葉っぱを受け取ります。 それを見た妹のれいむは、今にも端っこに噛み付いてしまいそうでしたが、 お姉さんのお腹がぐーぐー鳴っていることを、ちゃんと知っています。 だから、溢れそうになる唾を飲み込み、お行儀よく我慢することができました。 「こまったときはおたがいさまだよ!」 困ったときはお互い様。 まりさは、いつもそう言ってくれます。 だけど実際には、れいむが貰う一方で、お返ししたことなど一度もありません。 本当はお返ししたいと思っていても、あげるものが何もないのです。 れいむがまりさにしてあげられることは、ひとつだけ。 そして、まりさも、そのたったひとつのことを、いつもお願いして来ます。 「ねえ!まりさにおうたをきかせてよ!」 「いいよ!ゆっくりきいていってね!」 れいむは、まりさの前で、ゆっくりとおうたを歌い始めます。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆゆ~♪」 まりさは、本当にゆっくりとした表情で、れいむのおうたを静かに聴きます。 「れいむのおうたはほんとにゆっくりしてるね!」 「ゆゆ!ありがとう!」 まりさは、お世辞を言ったのではありません。 れいむのおうたは、ゆっくりにとって、本当にゆっくりしたおうたなのです。 だけど、そのおうたを聴いてくれるのは、街中でも、このまりさしかいません。 その理由は簡単でした。 みんな生きることに必死で、おうたなど聴いている場合ではないのです。 だから、このまりさがおうたに耳を澄ますのは、彼女が恵まれていることの証なのです。 「おとうしゃんだけじゅるいよ!まりちゃもなきゃまにいれちぇにぇ!」 れいむとまりさの間に割って入ったのは、小さな体をのーびのーびさせた子まりさでした。 まりさをお父さんと呼んでいますが、2匹の間に餡子は繋がっていません。 子まりさの母親が車に轢かれ、側で泣いていたところを、まりさが拾ってあげたのです。 最初は母親が死んだショックで、まりさにはあまり懐いてくれませんでしたが、 いつからか、子まりさは、まりさをお父さんと呼ぶようになっていました。 「まりちゃだけにゃかまはじゅれにゃんてぴゅんぴゅんだよ!」 「ごめんね。でも、おちびちゃんがすーやすーやしてたから、おこさなかったんだよ。」 子まりさも、本気で怒っているわけではありません。 その証拠に、子まりさは、まりさの頬に擦り寄ると、すぐに笑顔に戻ります。 「れいみゅおねーしゃん。まりちゃにもおうちゃをきかちぇてにぇ。」 「ゆふふ。いいよ。もういっかいうたおうね。」 れいむは、そんなまりさたちのやりとりに、思わず顔が綻んでしまいます。 「れいみゅもおうちゃうちゃえるよ。」 子れいむが、もみあげさんをぴこぴこさせながら、可愛い声をあげました。 彼女も、お姉さんにおうたを教えてもらっているのです。 「それじゃあ、ふたりでうたおうね!」 「「ゆゆゆ~♪」」 その夜、乞食谷に、姉妹の楽しそうな歌声が、いつまでも響き渡りました。 次の日のこと。 物乞いから帰ったれいむのおうちへ、例のまりさが息を弾ませてやって来ます。 いったい何だろうと思っていると、まりさは次のように言いました。 「まりさ、てれびにでるよ!おかねもいっぱいもらえるよ!」 これでは、いったい何のことだか分かりません。 れいむはまりさを落ち着かせ、詳しく話してくれるように頼みました。 まりさの話はこうでした。 今日、いつもの繁華街で曲芸をしていると、いきなり男の人が話しかけてきたのです。 そして、男の人は、こう言いました。 テレビに出てみないかい、と。 彼は、某テレビ局のディレクターさんでした。 ディレクターさんの話によると、来月、街中の変わったゆっくりを紹介する番組があり、 ぜひまりさにも出演して欲しいと言うのでした。 「出演料として、500円出すよ。」 500円! まりさはびっくりしました。 だって、まりさの一ヶ月分の稼ぎが、1日で手に入るのですから。 まりさは、喜んでテレビ出演を快諾しました。 ディレクターさんは、日曜日にまた来ると言って、その場を去りました。 「もし500えんもらったら、れいむにすてきなぷれぜんとをするよ!」 500円もあれば、大きな板チョコが何枚も買えます。 まりさは口にしませんでしたが、その板チョコをれいむにプレゼントし、 そして愛の告白をするつもりだったのです。 「まりさすごいね!れいむゆっくりおうえんするよ!」 「うん!まりさもゆっくりがんばるよ!」 その日、まりさは、前祝いとして、とっておきの5円チョコを4匹で分け合いました。 上手く割れなかったので、れいむは子れいむに、まりさは子まりさに、 それぞれ大きな欠片を渡します。 「「「「む~しゃむ~しゃ♪しあわせ~♪」」」」 その夜、乞食谷に、4匹の幸せな声が、いつまでも響き渡りました。 日曜日、ついにまりさのテレビ出演の日がやって来ました。 もちろん、今日は単なる収録日で、放送は後日なのですが、 ゆっくりであるまりさたちには、そんなことは分かりません。 それに、どうせテレビを見ることなどできないのですから、 テレビに出られるかどうかなんて、本当はどうでもよかったのかもしれません。 「おにいさん!きょうはまりさのすごいわざいっぱいみせてあげるね!」 まりさが、少しばかり声を震わせて言いました。 さすがに緊張しているのでしょう。 早速、得意のバク転を決めようと身構えたところで、ディレクターさんが止めに入ります。 「あ、悪いけど、君がやることは、こっちで決めてあるんだ。」 ディレクターさんは、そう言うと、奇麗な青空を指差しました。 まりさもれいむも、そして同伴した子ゆっくりたちも、不思議そうに空を見上げます。 「あそこに綱が見えるだろう。あれを渡ってくれ。」 最初は気付きませんでしたが、ビルとビルの間に、一本の太いロープが張られていました。 それは、建物の5階から伸びていて、長さも10mはあるでしょうか。 まりさは、言葉が出せません。 だって、こんなことをやるとは、聞いていなかったのですから。 「ゆゆ。これはたかすぎるよ。それにひもさんもながすぎるよ。」 「なに、やらないの?やらないなら、他のゆっくりに頼むけど?」 ディレクターさんは、まりさを睨みつけました。 「でも……あぶないよ……。」 「危ないからこそ、視聴者も喜ぶんだろう。普通の芸で500円貰おうなんて甘いね。」 まりさは迷います。 いくらゆっくりでも、この高さから落ちれば死ぬことくらいは理解できました。 以前、お友達のまりさが、誤って歩道橋から落ちてしまい、 地面でぺちゃんこになったのを、まりさは見たことがあるからです。 まりさは、困ったように視線を落とした後、今度はれいむの方を見ました。 まりさの目には、不安と同時に、何かを諦めきれない気持ちが、入り交じっていました。 れいむは、何も言うことができません。 これは、まりさの舞台なのです。 決めるのは、まりさであって、れいむではないのです。 しばらく悩んだ末、意を決したように顔を上げると、まりさはこう言いました。 「ゆん!まりさやるよ!」 「だめだよまりさ!こんなのゆっくりできないよ!」 大声を上げたのは、れいむでした。 そんな危険なことをして欲しくない。 ただその一心から出た声でした。 「あーん?なんだこのれいむは?」 ディレクターさんが、れいむの方へ近付いてきます。 すると、まりさが、慌ててディレクターさんの前に立ちはだかりました。 「れいむはまりさのおともだちだよ!いじめないでね!いじめたらまりさやめるよ!」 ディレクターさんは、少し不機嫌そうでしたが、黙ってスタッフに合図を送ります。 カメラが用意され、撮影が始まりました。 まりさは、若い男のスタッフに持ち上げられ、ビルの中に消えて行きます。 「ゆ~ん♪おそらをとんでるみたい♪」 そんな暢気な声が、半開きの自働ドアから聞こえてきました。 まりさが棒をくわえ、ロープの前に立ったとき、彼女はびっくりしてしまいました。 下から見上げたときよりも、ずっとずっと高く感じられたからです。 さすがのまりさも、あんよが震えてしまいます。 「よーし!じゃあ始めてくれ!」 遠くから、ディレクターさんの掛け声が聞こえました。 「おとうしゃん!がんばっちぇにぇ!」 「まりしゃおじしゃんがんびゃりぇー!」 地上で無邪気にまりさを応援しているのは、子まりさと子れいむの2匹です。 彼らは体をのーびのーびさせながら、一生懸命に声を張り上げます。 その横にいるれいむは、もみあげを合わせ、不安そうにまりさを見つめているだけ。 まりさのことが心配で心配で、舌が動かないのです。 そんなれいむの顔を見ていると、何としてでも渡り切ってやろうという気持ちが、 まりさの餡子の中に、むらむらと湧いてきました。 「これがめいじんまりさのつなわたりだよ!みんなみててね!」 まりさは、棒を上下の歯でしっかりと挟み、ぐっと表情を引き締めると、 まるっこいあんよを、ロープの端に乗せました。 めまいがしそうな高さです。下を見てはいけません。 「……。」 ゆっくりと、本当にゆっくりと、まりさはロープを渡って行きます。 人間さんたちは、最初から応援も何もしていませんでしたが、 今や子ゆっくりたちも、黙ってまりさの勇姿を見守るしかありません。 芸の最中に声を上げると気が散ることは、彼らも知っていたからです。 どれほどの時間が過ぎたでしょうか。 1時間とも2時間とも感じられるような緊張の連続が過ぎ去り、 気付けば、まりさはロープの半分を渡り切っていました。 さすがの人間さんたちも、これには驚きを隠せません。 あと半分。 この調子であと半分を渡り切れば、500円玉が手に入る。 そして、れいむに愛の告白をすることができる。 まりさの餡子を支配していた恐怖が、だんだんと希望に取って代わられます。 と、そのときでした。 ビューーーッ 「!」 強烈なビル風が、道ばたにいる人々を襲います。 まりさは、歯を食いしばり、ロープの上でバランスを取ろうと必死に踏ん張りました。 普通のゆっくりならば、すぐに吹き飛ばしてしまったであろうこの強風も、 まりさの素晴らしいバランス感覚の前では、柳に風です。 そう、まりさの前では。 「おぼっ!?」 まりさは、全身を器用にくねらせ、ロープの上で絶妙なバランスを取っていました。 しかし、まりさが動かせるのは、まるっこい饅頭の体だけなのです。 だから、辛抱を切らした風は、まりさではなく、 まりさの大事なお帽子を攫って行くことに決めました。 まりさは、外れかけたお帽子を放すまいと身を捩りますが、全く意味がありません。 お帽子は飾りであり、体の一部ではないのです。 ついに、風が、お帽子のツバに、見えない指を掛けました。 「まりさ!だめだよ!」 れいむの声は、遅過ぎました。 まりさは、お帽子に対する愛着から、うっかり後を追おうとしてしまったのです。 当然、バランスを失い、そのまま地面へ真っ逆さま。 ぐちゃ、という音と一緒に、永遠にゆっくりしてしまいました。 一瞬の出来事だったので、れいむたちには、何が起きたのか分かりません。 「よーし、いい絵が取れたぞ。」 「ディレクター、テロップはどうしますか?」 「薬中まりさ、白昼の錯乱綱渡り。バカとゆっくりは高いところがお好き。」 「お、いいですねえ。高視聴率間違いなしですよ。」 ディレクターさんは、嘘を吐いたのではありません。 ゆっくりの番組が放送されるというのは、本当です。 成功すれば500円玉をあげるつもりだったのも、本当です。 ただ、ディレクターさんは、ひとつだけ言わなかったことがあるのです。 番組のタイトルが、『爆笑☆街中のおかしなゆっくりたち』だということを。 「じゃ、それっぽく見えるように、適当に編集しといてね。」 ディレクターさんがその場を去ると、他の人間さんたちも、道具の片付けを始めました。 がちゃがちゃという音に、れいむは、ようやく意識を取戻します。 そうだ、ここには人間さんたちがいる。 人間さんは、どんな病気でも治すことができる。 れいむは、昔、死んだ長のぱちゅりーに、そう教えられたのを思い出しました。 「にんげんさん!おねがいだよ!まりさをたすけてあげてね!おねがいだよ!」 しかし、人間さんたちは、誰も助けてはくれません。 れいむは、側にいた女の人のところへぴょんぴょん跳ねると、また大声で言いました。 「おねえさん!まりさはまだいきてるんだよ!だからゆっくりたすけてあげてね!」 女の人は、五月蝿そうにれいむを避けると、道具を持ってどこかへ行ってしまいました。 れいむは向きを変え、少し離れたところにいる男の人に、跳ねながら話しかけます。 「おにいさん!まりさをびょういんにつれていってあげてね!おねがいだよ!」 れいむがさらに近付こうとすると、男の人の踵が、れいむの顔に当たりました。 体の中からメキッという音が聞こえ、れいむは後ろに転がってしまいます。 起き上がってみると、口の中が何やら変な感じです。 そうです。前歯が折れてしまったのです。 男の人も、それに気付きました。 「あーあ、足下でうろちょろするから。どっか行けよ。」 「まりひゃをびょういんにひゅれてってあげてね!おねがいだよ!」 れいむは、歯の折れた痛みなど忘れて、もう一度男の人に頼みます。 「あのさ、生きてるわけないっしょ。少しは現実見ろよ。」 「まりひゃはいきてるよ!だからたひゅけてあげてね!おねがいだよ!」 男の人は、やれやれと首を横に振り、その場を離れて行きました。 誰も助けてくれないことが分かったので、れいむは涙を流しながら、 まりさのところへ駆け寄ります。 「おとうしゃん!おめめあけちぇえええ!」 「まりしゃおじしゃんげんきになっちぇね……。ぺーろぺーろ……。」 まりさの側で、子れいむと子まりさが、しくしくと泣いています。 「まりひゃ!れいむといっひょにおいひゃひゃんにいこうね!」 れいむはそのとき、初めてまりさの顔を見てしまいました。 白玉の目玉が飛び出し、そこから餡子がたくさん漏れています。 それに口の形もいびつで、だらしなく舌が垂れていました。 街中でも指折りの美ゆっくりだったまりさの面影は、もはやどこにもありません。 「まりひゃ!きっとよくなるよ!だからおいひゃひゃんへいこうね!」 まりさは、返事をしてくれません。 それから何度かまりさの名前を呼んだ後、れいむは、 ようやくまりさが死んだのだと分かりました。 「まりびゃあああ!!!まりびゃああああああ!!!」 れいむも、わんわんと泣きました。 こんなことなら、まりさを止めれば良かった。 そう思っても、全ては後の祭りです。 そして、れいむにはもうひとつ、とっても後悔したことがありました。 彼女は聞いてしまったのです。 まりさが最後に叫んだ言葉を。 れいむあいしてるよ、と。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆひゅ~♪」 夕焼けがとっても奇麗な、7月のとある日暮れ時。 学生もサラリーマンも、みんなおうちに帰って行きます。 そんな人々が行き交う道ばたで、おうたを歌う1匹のれいむがいました。 そうです。あの乞食れいむです。 れいむはあれからも、同じ場所で、同じおうたを歌い続けています。 「こじきのまりしゃにおきゃねをめぐんでくだちゃい!おにぇがいしましゅ!」 「こじきのれいみゅはおうたがとってもじょうずなんでしゅ!きいてくだちゃい!」 だけど、歯が折れてしまったれいむは、もう今までのようにおうたが歌えません。 以前は顔色ひとつ変えずに避けていた人たちも、今や我慢ができないといった様子で、 れいむたちを睨みつけ、罵声を浴びせます。 「くっせぇ饅頭がこんなところで歌ってんじゃねーぞ!」 「きもー。あのれいむ歯がないじゃん。」 「ゆひゅ~♪ゆひひゅ~♪」 溢れそうになる涙を堪えながら、れいむはおうたを歌います。 もう、おうたを歌っても、昔の楽しかった思い出は、餡子の中に浮かんできません。 だかられいむは、何も考えず、生きるためにおうたを歌うのです。 ふと、道の向こうから、不機嫌そうなサラリーマンが歩いて来ます。 男は、今日、上司にこっぴどく怒られて、内心むしゃくしゃしていました。 「けっ、ありゃ新入りのヘマだろうが……。なんで俺のせいになるんだよ……。」 男が新聞紙の前を通りかかったところで、妹れいむが声を上げました。 「おじしゃん!こじきのれいみゅになにかめぐんでくだちゃい!おねがいしましゅ!」 男は、3匹にちらっと目をやると、あからさまに舌打ちをします。 「……なんだ、ゆっくりか。うっせーな。」 そのまま通り過ぎようとしたとき、男は、ふと足を止めました。 この光景、どこかで見たことがある。そうだ、あのれいむだ。 ずっと前に、ビール瓶の蓋で、このれいむをからかったことを、男は覚えていました。 男は、しばらくの間、じっとれいむの顔を見つめていました。 れいむの方は目を瞑り、真剣におうたを歌っています。 前歯の隙間から空気が漏れ、ひゅーひゅーと間の抜けた音が聞こえても、 れいむは真剣におうたを歌っているのです。 チャリーン 缶の底で、金属のぶつかる音がします。 「ありがとうごびゃいまひゅ。」 「「ありがとうございましゅ!」」 れいむと2匹の子ゆっくりは、もみあげとおさげで三つ指をつき、深々と頭を下げます。 サラリーマンは、お礼を言う3匹を無視して、先を急ぎました。 れいむは、男が見えなくなると、ようやく体を持ち上げます。 「ひょうはおかねもらえひゃね。くらいからもうおうひにひゃえろうね。」 「「ゆっくち~♪」」 れいむは、空き缶の中に入っている金属片を、もみあげでゆっくり取り出します。 いったいいくら入っているのでしょうか。 「……。」 夕暮れの太陽に赤く光る丸い円盤。 それは、1円玉でした。 「ゆわ~♪いひえんだまひゃんだよ♪」 れいむの顔がぱっと明るくなります。 「いちえんだましゃんゆっくりしていっちぇね!」 妹れいむも目を輝かせ、1円玉さんにすーりすーりしようと体を伸ばします。 「おじしゃんありがちょね!」 子まりさは、もう姿の見えない男の方角に向かい、何度も何度もお礼を言いました。 「ゆっくりおうひにかえってくひゃひゃんをむーひゃむーひゃひようね!」 「「ゆっくち~♪」」 れいむは、右のもみあげで子れいむを、左のもみあげで子まりさを抱き寄せると、 夕闇に包まれた始めた大通りを、ゆっくりと去って行きました。 そんなれいむの唇には、生まれて初めて恵んでもらった1円玉が、 何か大事なものと交換されたかのように、赤く赤く、輝いているのでした。 終わり これまでに書いた作品 ダスキユのある風景(前編) ダスキユのある風景(中編) ダスキユのある風景(後編) 英雄の条件 ふわふわと壊れゆく家族 ♂れいむを探して このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1573.html
乞食れいむのおうた 作者:白兎 ※虐待成分少なめ。 ※独自設定。 夕焼けがとっても奇麗な、7月のとある日暮れ時。 学生もサラリーマンも、みんなおうちに帰って行きます。 そんな人々が行き交う道ばたで、おうたを歌う1匹のれいむがいました。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~♪」 ゆっくり特有のリズムを奏でながら、新聞紙の上でおうたを歌うれいむ。 彼女は、この街に住む乞食ゆっくりでした。 乞食ゆっくり。 もしかすると、皆さんは初めてお聞きになったかもしれません。 だって、この街でしか使われていない言葉ですから。 「おにいさん、こじきってなんなのぜ?」 それは、とある銀バッヂまりさの質問から始まりました。 飼い主の横でテレビを見ていたまりさが、お兄さんに、いきなりそんな質問をしたのです。 「ん?どこでそんな言葉覚えたんだ?」 「きょう、おさんぽのとちゅうで、ちいさなにんげんさんたちがいってたのぜ。」 やれやれ、とお兄さんは思いました。 あまり良くない言葉を覚えて欲しくなかったのです。 けれども、これも社会勉強と、まりさにその言葉の意味を教えることにしました。 「んー、なんて言えばいいのかな……。」 お兄さんは、知識の少ないゆっくりに、何とか説明を試みます。 「乞食って言うのはね、街中で物乞いをする人のことだよ。」 「ものごいってなんなのぜ?」 「道ばたで、人にお金をもらったりすること。」 「なんでなのぜ?にんげんさんは、かいしゃからおきゅうりょうをもらうのぜ?」 「そういう人は、仕事が無かったり、自分の家が無かったりするからね。」 まりさは、お兄さんの説明にしばらく体を捻っていましたが、 ふと全ての謎が解けたかのように、ぴんと背筋を伸ばして言いました。 「ゆん!ゆっくりりかいしたのぜ!こじきはのらのにんげんさんなのぜ!」 このまりさ、お兄さんの説明を少し勘違いしてしまったようです。 けれども、お兄さんも面倒くさかったので、あえて訂正はしませんでした。 翌日、銀まりさは、お友達のゆっくりに、この話を伝えました。 みんな、近くの家で飼われている高級なゆっくりばかりです。 「むきゅ。ぱちゅも、えきまえでみたことあるのだわ。」 「のらのにんげんさんだねー。わかるよー。」 「それじゃあ、のらのゆっくりも、こじきなのかしら?」 「きっとそうだみょん!」 野良の人間が乞食なら、野良のゆっくりも乞食だろう。 彼らは、そう結論付けました。 そして、街中で野良を見かける度に、彼らを乞食と呼ぶようになったのです。 「あんなところにこじきがいるのぜ!きたないのぜ!」 「こじきはとかいはじゃないわ!ありすのそばにこないでね!」 この2匹、別にゲスではありません。 ペットショップで、店員さんから、野良は汚くてゆっくりできないと教えられ、 それを忠実に守っているだけなのです。 けれども、この呼び名を広めたのは、当の飼いゆっくりたちではありませんでした。 それを横で聞いていた、地元の小学生です。 小学生というものは、相手を馬鹿にする言葉が大好きなのです。 あっと言う間に、地元の小学校でこの呼び名が広まりました。 そして、今度は、小学生の言葉遣いが、他の飼いゆっくりに影響を与えます。 「おーい、こっちに乞食がいるぜ!」 「ゆゆ!こじきがいるよ!」 「おおこじきこじき。」 こうして、分別のある大人を除き、みんなが野良ゆっくりを乞食と呼ぶようになりました。 野良ゆっくりたちは、それが悪口だと分かると、とても怒りました。 「れいむはこじきじゃないよ!れいむはれいむだよ!」 「まりさはりっぱなのらゆっくりだよ!こじきじゃないよ!」 ですが、毎日のように乞食乞食と言われ続けると、 なんだか本当に乞食のような気がしてしまうものです。 1年も経った頃には、野良ゆっくりも、自分たちのことを乞食と呼ぶようになりました。 ですから、この街では、野良ゆっくりはみんな、乞食ゆっくりと呼ばれているのです。 ところで、名は体を表す、という諺があります。 乞食ゆっくりたちは、だんだん本物の乞食と一緒の生活をするようになりました。 街中で、物乞いをするようになったのです。 もちろん、ただ座っているだけでは、何も貰えません。 だから、乞食ゆっくりたちは、芸を披露することにしました。 あるものはダンスを踊り、あるものはおうたを歌います。 こうして、乞食ゆっくりたちは、街中の風景にすっかり溶け込んでしまいました。 「ゆゆ~♪ゆ~ゆ~♪ゆ~♪」 このれいむも、昔は街の近くにある小さな森で暮らしていましたが、 土地開発で巣を追われ、こうして乞食になったのです。 都会での生活に慣れていないれいむには、苦労苦労の連続でしたが、 仲間の手助けにより、ここまでやってこれました。 「ゆ~♪ゆ~♪ゆゆ~♪」 「こじきのれいみゅにおきゃねをめぐんでくだちゃい!」 おうたを歌うれいむの横で、通行人に笑顔を振りまいているのは、 森を追われるときに助けた妹れいむです。 両親と他の姉妹は、おうちを潰そうとする巨大なすぃーに立ち向かい、 そして、ぺっちゃんこにされてしまいました。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~♪」 「おねがいしましゅ!こじきのれいみゅににゃにかめぐんでくだちゃい!」 森にいた頃は、うたひめと呼ばれ、みんながれいむのおうたを褒めてくれました。 でも、この街では、誰もれいむのおうたなど聴いてくれません。 みんな、顔色ひとつ変えずに、れいむたちの前を通り過ぎて行くだけです。 だけど、おうたを歌う以外に何もできないれいむは、おうたを歌い続けるしかありません。 「ゆゆ~ん♪ゆ~ゆゆ~♪」 おうたを歌っているとき、れいむはいつも、森での暮らしを思い浮かべます。 とっても優しいお父さんとお母さん、可愛らしい妹たち、 そして、みんなと遊んだゆっくりプレイス。 れいむは、ゆっくりとした記憶に浸りながら、今日もおうたを歌うのです。 ふと、道の向こうから、不機嫌そうなサラリーマンが歩いて来ます。 男は、今日、上司にこっぴどく怒られて、内心むしゃくしゃしていました。 「けっ、部長の指示が悪いんだろうが……。なんで俺のせいになるんだよ……。」 男が新聞紙の前を通りかかったところで、妹れいむが声を上げました。 「おじしゃん!こじきのれいみゅににゃにかめぐんでくだちゃい!おねがいしましゅ!」 男は、2匹にちらっと目をやると、あからさまに舌打ちをします。 「……なんだ、ゆっくりか。うっせーな。」 男は、ほんの一瞬、れいむの顔に目をやりました。 森の暮らしを思い出して歌うれいむの表情は、幸せそのものです。 男は、そのまま通り過ぎようとしましたが、何を思ったのか、 ポケットに手を入れると、きらきら光るものを、空き缶に投げ入れました。 チャリーン 金属のぶつかる音がします。 「ありがとうございます。」 れいむは、おうたを中断し、もみあげで三つ指をついて、頭を下げました。 「ありがちょうごじゃいましゅ!」 妹れいむは、ぴょんぴょん跳ねて、サラリーマンにお礼のダンスを披露します。 サラリーマンは、そんな2匹を無視すると、先を急ぎました。 れいむは、男が見えなくなったところで、ようやく顔を上げます。 「きょうはおかねもらえたね。くらいからもうおうちにかえろうね。」 「ゆっくち~♪」 れいむは、空き缶の中に入っている金属片を、もみあげでゆっくり取り出します。 いったいいくら入っているのでしょうか。 「……。」 夕暮れの太陽に赤く光る丸い円盤。 それは、お金ではありませんでした。 ただのビール瓶の蓋でした。 男は、嫌がらせをするために、わざとそれを入れたのです。 「ごめんね……。これおかねじゃないよ……。ごめんね……。」 「ゆぅ……。」 れいむは、白玉の目からすっと涙を流し、妹に何度も何度も謝ります。 やっと貰えたと思ったお金。 これなら、何も貰えない方が、どれほど良かったことでしょう。 「おにぇしゃんなかにゃいでにぇ。れいみゅゆっきゅりがまんしゅりゅよ。」 心配した妹が、れいむの頬にすーりすーりして来ます。 「おにぇしゃんしゅーりしゅーり。なきゃないでにぇ。」 そんな健気な妹を見ると、れいむも泣いてはいられません。 笑顔を取戻し、元気よく妹にすーりすーりし返してあげます。 「さあゆっくりおうちにかえろうね!」 「ゆっくち~♪」 れいむたちは、もみあげともみあげをしっかりと繋ぎ合わせ、 夕闇に包まれた始めた大通りを、ゆっくりと去って行きました。 「ゆゆん!このあんぱんさんはさんえんだよ!とってもやすいよ!」 「ちぇんかうよー!きょうはごえんだまもらったよー!」 「まりさもあまあまさんいっぱいあつめたよ!ゆっくりかいものしていってね!」 「ちーんぽ!」 ここは乞食谷。 乞食ゆっくりたちが集う、街の下宿所です。 もちろん、町中に谷などありません。 誰も住んでいないビルに囲まれた空き地が、谷底に似ているので、そう呼ばれているだけです。 乞食たちは、この谷の真ん中にあるドラム缶の前で、毎晩市場を開きます。 食べ物や段ボールなど、生活に必要なものを集めたゆっくりが、 人間からお金をもらったゆっくりに、それを売っているのです。 今日も市場は大盛況。 ゆっくりたちの賑やかな声が、あちこちから聞こえてきます。 「ゆぅ……。あんぱんしゃん……。」 そんな市場を遠くから眺めているのは、さきほどのれいむ姉妹です。 お金も物ももらえなかった2匹は、何にも交換するものがありません。 ただただ、他のゆっくりたちの買い物を見ている以外、することがないのです。 「れいみゅもあんぱんしゃんたべちゃいよ……。」 妹れいむが、物欲しそうに涎を垂らしながら、ちぇんの買った餡パンを見つめています。 「ごめんね。あしたはおかねをもらってあんぱんさんたべようね。」 「ゆぅ……。」 そんな会話をしていると、ふと市場の方から、1匹のゆっくりが跳ねて来ます。 それは、よく見知った帽子の子、ゆっくりまりさでした。 「ゆっくりしていってね!」 まりさは、笑顔でれいむに挨拶します。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇいっちぇね!」 れいむとその妹も、先程までの空腹を忘れて、元気よく挨拶を返します。 れいむは、このまりさと大の仲良しでした。 この乞食谷に案内してくれたのも、街中でたまたま出会ったこのまりさだったのです。 まりさは、人間にもそうと分かるくらいの美ゆっくりでしたが、野良は野良。 お帽子にはあちこちに穴が空き、お肌も都会の空気ですっかり汚れてしまっています。 そんなまりさは、とびっきりの笑顔で、れいむに話しかけます。 「きょうもいっぱいおかねもらえたよ!」 嘘ではありません。 このまりさは、1日になんと15円も稼ぐのです。 普通は5円も集まれば御の字なのですから、どれほど凄いかが分かります。 それもそのはず、このまりさは、芸の名人でした。 ぴょんと30センチも飛び跳ねてトンボ返りをしたり、 口に棒をくわえて、コーンの間に張った綱を渡ったりできるのです。 だから、人間さんたちの間でも、まりさはとっても有名でした。 「れいむはおかいものしないの?」 まりさは、れいむにそっと尋ねました。 れいむは何も答えませんでしたが、まりさには分かっています。 だって、れいむがお買い物をすることなど、滅多にないのですから。 れいむは、それくらい物乞いが下手なのです。 けれども、嫌みで尋ねたわけではありません。 まりさは、いつもこうやって、れいむにプレゼントする機会を作っているのです。 「れいむにこれあげるよ!」 まりさは、帽子の中から、野菜屑を取り出して、れいむに差し出します。 それは、八百屋さんの前で芸を披露したときに、店のおじさんから貰ったものでした。 このおじさん、普段はじゃがいもの皮しかくれないのですが、 その日はまりさの宙返りがあまりにも見事だったので、キャベツの葉っぱをくれました。 「ゆゆん!まりさありがとう!」 れいむは、うれし涙を流しながら、キャベツの葉っぱを受け取ります。 それを見た妹のれいむは、今にも端っこに噛み付いてしまいそうでしたが、 お姉さんのお腹がぐーぐー鳴っていることを、ちゃんと知っています。 だから、溢れそうになる唾を飲み込み、お行儀よく我慢することができました。 「こまったときはおたがいさまだよ!」 困ったときはお互い様。 まりさは、いつもそう言ってくれます。 だけど実際には、れいむが貰う一方で、お返ししたことなど一度もありません。 本当はお返ししたいと思っていても、あげるものが何もないのです。 れいむがまりさにしてあげられることは、ひとつだけ。 そして、まりさも、そのたったひとつのことを、いつもお願いして来ます。 「ねえ!まりさにおうたをきかせてよ!」 「いいよ!ゆっくりきいていってね!」 れいむは、まりさの前で、ゆっくりとおうたを歌い始めます。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆゆ~♪」 まりさは、本当にゆっくりとした表情で、れいむのおうたを静かに聴きます。 「れいむのおうたはほんとにゆっくりしてるね!」 「ゆゆ!ありがとう!」 まりさは、お世辞を言ったのではありません。 れいむのおうたは、ゆっくりにとって、本当にゆっくりしたおうたなのです。 だけど、そのおうたを聴いてくれるのは、街中でも、このまりさしかいません。 その理由は簡単でした。 みんな生きることに必死で、おうたなど聴いている場合ではないのです。 だから、このまりさがおうたに耳を澄ますのは、彼女が恵まれていることの証なのです。 「おとうしゃんだけじゅるいよ!まりちゃもなきゃまにいれちぇにぇ!」 れいむとまりさの間に割って入ったのは、小さな体をのーびのーびさせた子まりさでした。 まりさをお父さんと呼んでいますが、2匹の間に餡子は繋がっていません。 子まりさの母親が車に轢かれ、側で泣いていたところを、まりさが拾ってあげたのです。 最初は母親が死んだショックで、まりさにはあまり懐いてくれませんでしたが、 いつからか、子まりさは、まりさをお父さんと呼ぶようになっていました。 「まりちゃだけにゃかまはじゅれにゃんてぴゅんぴゅんだよ!」 「ごめんね。でも、おちびちゃんがすーやすーやしてたから、おこさなかったんだよ。」 子まりさも、本気で怒っているわけではありません。 その証拠に、子まりさは、まりさの頬に擦り寄ると、すぐに笑顔に戻ります。 「れいみゅおねーしゃん。まりちゃにもおうちゃをきかちぇてにぇ。」 「ゆふふ。いいよ。もういっかいうたおうね。」 れいむは、そんなまりさたちのやりとりに、思わず顔が綻んでしまいます。 「れいみゅもおうちゃうちゃえるよ。」 子れいむが、もみあげさんをぴこぴこさせながら、可愛い声をあげました。 彼女も、お姉さんにおうたを教えてもらっているのです。 「それじゃあ、ふたりでうたおうね!」 「「ゆゆゆ~♪」」 その夜、乞食谷に、姉妹の楽しそうな歌声が、いつまでも響き渡りました。 次の日のこと。 物乞いから帰ったれいむのおうちへ、例のまりさが息を弾ませてやって来ます。 いったい何だろうと思っていると、まりさは次のように言いました。 「まりさ、てれびにでるよ!おかねもいっぱいもらえるよ!」 これでは、いったい何のことだか分かりません。 れいむはまりさを落ち着かせ、詳しく話してくれるように頼みました。 まりさの話はこうでした。 今日、いつもの繁華街で曲芸をしていると、いきなり男の人が話しかけてきたのです。 そして、男の人は、こう言いました。 テレビに出てみないかい、と。 彼は、某テレビ局のディレクターさんでした。 ディレクターさんの話によると、来月、街中の変わったゆっくりを紹介する番組があり、 ぜひまりさにも出演して欲しいと言うのでした。 「出演料として、500円出すよ。」 500円! まりさはびっくりしました。 だって、まりさの一ヶ月分の稼ぎが、1日で手に入るのですから。 まりさは、喜んでテレビ出演を快諾しました。 ディレクターさんは、日曜日にまた来ると言って、その場を去りました。 「もし500えんもらったら、れいむにすてきなぷれぜんとをするよ!」 500円もあれば、大きな板チョコが何枚も買えます。 まりさは口にしませんでしたが、その板チョコをれいむにプレゼントし、 そして愛の告白をするつもりだったのです。 「まりさすごいね!れいむゆっくりおうえんするよ!」 「うん!まりさもゆっくりがんばるよ!」 その日、まりさは、前祝いとして、とっておきの5円チョコを4匹で分け合いました。 上手く割れなかったので、れいむは子れいむに、まりさは子まりさに、 それぞれ大きな欠片を渡します。 「「「「む~しゃむ~しゃ♪しあわせ~♪」」」」 その夜、乞食谷に、4匹の幸せな声が、いつまでも響き渡りました。 日曜日、ついにまりさのテレビ出演の日がやって来ました。 もちろん、今日は単なる収録日で、放送は後日なのですが、 ゆっくりであるまりさたちには、そんなことは分かりません。 それに、どうせテレビを見ることなどできないのですから、 テレビに出られるかどうかなんて、本当はどうでもよかったのかもしれません。 「おにいさん!きょうはまりさのすごいわざいっぱいみせてあげるね!」 まりさが、少しばかり声を震わせて言いました。 さすがに緊張しているのでしょう。 早速、得意のバク転を決めようと身構えたところで、ディレクターさんが止めに入ります。 「あ、悪いけど、君がやることは、こっちで決めてあるんだ。」 ディレクターさんは、そう言うと、奇麗な青空を指差しました。 まりさもれいむも、そして同伴した子ゆっくりたちも、不思議そうに空を見上げます。 「あそこに綱が見えるだろう。あれを渡ってくれ。」 最初は気付きませんでしたが、ビルとビルの間に、一本の太いロープが張られていました。 それは、建物の5階から伸びていて、長さも10mはあるでしょうか。 まりさは、言葉が出せません。 だって、こんなことをやるとは、聞いていなかったのですから。 「ゆゆ。これはたかすぎるよ。それにひもさんもながすぎるよ。」 「なに、やらないの?やらないなら、他のゆっくりに頼むけど?」 ディレクターさんは、まりさを睨みつけました。 「でも……あぶないよ……。」 「危ないからこそ、視聴者も喜ぶんだろう。普通の芸で500円貰おうなんて甘いね。」 まりさは迷います。 いくらゆっくりでも、この高さから落ちれば死ぬことくらいは理解できました。 以前、お友達のまりさが、誤って歩道橋から落ちてしまい、 地面でぺちゃんこになったのを、まりさは見たことがあるからです。 まりさは、困ったように視線を落とした後、今度はれいむの方を見ました。 まりさの目には、不安と同時に、何かを諦めきれない気持ちが、入り交じっていました。 れいむは、何も言うことができません。 これは、まりさの舞台なのです。 決めるのは、まりさであって、れいむではないのです。 しばらく悩んだ末、意を決したように顔を上げると、まりさはこう言いました。 「ゆん!まりさやるよ!」 「だめだよまりさ!こんなのゆっくりできないよ!」 大声を上げたのは、れいむでした。 そんな危険なことをして欲しくない。 ただその一心から出た声でした。 「あーん?なんだこのれいむは?」 ディレクターさんが、れいむの方へ近付いてきます。 すると、まりさが、慌ててディレクターさんの前に立ちはだかりました。 「れいむはまりさのおともだちだよ!いじめないでね!いじめたらまりさやめるよ!」 ディレクターさんは、少し不機嫌そうでしたが、黙ってスタッフに合図を送ります。 カメラが用意され、撮影が始まりました。 まりさは、若い男のスタッフに持ち上げられ、ビルの中に消えて行きます。 「ゆ~ん♪おそらをとんでるみたい♪」 そんな暢気な声が、半開きの自働ドアから聞こえてきました。 まりさが棒をくわえ、ロープの前に立ったとき、彼女はびっくりしてしまいました。 下から見上げたときよりも、ずっとずっと高く感じられたからです。 さすがのまりさも、あんよが震えてしまいます。 「よーし!じゃあ始めてくれ!」 遠くから、ディレクターさんの掛け声が聞こえました。 「おとうしゃん!がんばっちぇにぇ!」 「まりしゃおじしゃんがんびゃりぇー!」 地上で無邪気にまりさを応援しているのは、子まりさと子れいむの2匹です。 彼らは体をのーびのーびさせながら、一生懸命に声を張り上げます。 その横にいるれいむは、もみあげを合わせ、不安そうにまりさを見つめているだけ。 まりさのことが心配で心配で、舌が動かないのです。 そんなれいむの顔を見ていると、何としてでも渡り切ってやろうという気持ちが、 まりさの餡子の中に、むらむらと湧いてきました。 「これがめいじんまりさのつなわたりだよ!みんなみててね!」 まりさは、棒を上下の歯でしっかりと挟み、ぐっと表情を引き締めると、 まるっこいあんよを、ロープの端に乗せました。 めまいがしそうな高さです。下を見てはいけません。 「……。」 ゆっくりと、本当にゆっくりと、まりさはロープを渡って行きます。 人間さんたちは、最初から応援も何もしていませんでしたが、 今や子ゆっくりたちも、黙ってまりさの勇姿を見守るしかありません。 芸の最中に声を上げると気が散ることは、彼らも知っていたからです。 どれほどの時間が過ぎたでしょうか。 1時間とも2時間とも感じられるような緊張の連続が過ぎ去り、 気付けば、まりさはロープの半分を渡り切っていました。 さすがの人間さんたちも、これには驚きを隠せません。 あと半分。 この調子であと半分を渡り切れば、500円玉が手に入る。 そして、れいむに愛の告白をすることができる。 まりさの餡子を支配していた恐怖が、だんだんと希望に取って代わられます。 と、そのときでした。 ビューーーッ 「!」 強烈なビル風が、道ばたにいる人々を襲います。 まりさは、歯を食いしばり、ロープの上でバランスを取ろうと必死に踏ん張りました。 普通のゆっくりならば、すぐに吹き飛ばしてしまったであろうこの強風も、 まりさの素晴らしいバランス感覚の前では、柳に風です。 そう、まりさの前では。 「おぼっ!?」 まりさは、全身を器用にくねらせ、ロープの上で絶妙なバランスを取っていました。 しかし、まりさが動かせるのは、まるっこい饅頭の体だけなのです。 だから、辛抱を切らした風は、まりさではなく、 まりさの大事なお帽子を攫って行くことに決めました。 まりさは、外れかけたお帽子を放すまいと身を捩りますが、全く意味がありません。 お帽子は飾りであり、体の一部ではないのです。 ついに、風が、お帽子のツバに、見えない指を掛けました。 「まりさ!だめだよ!」 れいむの声は、遅過ぎました。 まりさは、お帽子に対する愛着から、うっかり後を追おうとしてしまったのです。 当然、バランスを失い、そのまま地面へ真っ逆さま。 ぐちゃ、という音と一緒に、永遠にゆっくりしてしまいました。 一瞬の出来事だったので、れいむたちには、何が起きたのか分かりません。 「よーし、いい絵が取れたぞ。」 「ディレクター、テロップはどうしますか?」 「薬中まりさ、白昼の錯乱綱渡り。バカとゆっくりは高いところがお好き。」 「お、いいですねえ。高視聴率間違いなしですよ。」 ディレクターさんは、嘘を吐いたのではありません。 ゆっくりの番組が放送されるというのは、本当です。 成功すれば500円玉をあげるつもりだったのも、本当です。 ただ、ディレクターさんは、ひとつだけ言わなかったことがあるのです。 番組のタイトルが、『爆笑☆街中のおかしなゆっくりたち』だということを。 「じゃ、それっぽく見えるように、適当に編集しといてね。」 ディレクターさんがその場を去ると、他の人間さんたちも、道具の片付けを始めました。 がちゃがちゃという音に、れいむは、ようやく意識を取戻します。 そうだ、ここには人間さんたちがいる。 人間さんは、どんな病気でも治すことができる。 れいむは、昔、死んだ長のぱちゅりーに、そう教えられたのを思い出しました。 「にんげんさん!おねがいだよ!まりさをたすけてあげてね!おねがいだよ!」 しかし、人間さんたちは、誰も助けてはくれません。 れいむは、側にいた女の人のところへぴょんぴょん跳ねると、また大声で言いました。 「おねえさん!まりさはまだいきてるんだよ!だからゆっくりたすけてあげてね!」 女の人は、五月蝿そうにれいむを避けると、道具を持ってどこかへ行ってしまいました。 れいむは向きを変え、少し離れたところにいる男の人に、跳ねながら話しかけます。 「おにいさん!まりさをびょういんにつれていってあげてね!おねがいだよ!」 れいむがさらに近付こうとすると、男の人の踵が、れいむの顔に当たりました。 体の中からメキッという音が聞こえ、れいむは後ろに転がってしまいます。 起き上がってみると、口の中が何やら変な感じです。 そうです。前歯が折れてしまったのです。 男の人も、それに気付きました。 「あーあ、足下でうろちょろするから。どっか行けよ。」 「まりひゃをびょういんにひゅれてってあげてね!おねがいだよ!」 れいむは、歯の折れた痛みなど忘れて、もう一度男の人に頼みます。 「あのさ、生きてるわけないっしょ。少しは現実見ろよ。」 「まりひゃはいきてるよ!だからたひゅけてあげてね!おねがいだよ!」 男の人は、やれやれと首を横に振り、その場を離れて行きました。 誰も助けてくれないことが分かったので、れいむは涙を流しながら、 まりさのところへ駆け寄ります。 「おとうしゃん!おめめあけちぇえええ!」 「まりしゃおじしゃんげんきになっちぇね……。ぺーろぺーろ……。」 まりさの側で、子れいむと子まりさが、しくしくと泣いています。 「まりひゃ!れいむといっひょにおいひゃひゃんにいこうね!」 れいむはそのとき、初めてまりさの顔を見てしまいました。 白玉の目玉が飛び出し、そこから餡子がたくさん漏れています。 それに口の形もいびつで、だらしなく舌が垂れていました。 街中でも指折りの美ゆっくりだったまりさの面影は、もはやどこにもありません。 「まりひゃ!きっとよくなるよ!だからおいひゃひゃんへいこうね!」 まりさは、返事をしてくれません。 それから何度かまりさの名前を呼んだ後、れいむは、 ようやくまりさが死んだのだと分かりました。 「まりびゃあああ!!!まりびゃああああああ!!!」 れいむも、わんわんと泣きました。 こんなことなら、まりさを止めれば良かった。 そう思っても、全ては後の祭りです。 そして、れいむにはもうひとつ、とっても後悔したことがありました。 彼女は聞いてしまったのです。 まりさが最後に叫んだ言葉を。 れいむあいしてるよ、と。 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆひゅ~♪」 夕焼けがとっても奇麗な、7月のとある日暮れ時。 学生もサラリーマンも、みんなおうちに帰って行きます。 そんな人々が行き交う道ばたで、おうたを歌う1匹のれいむがいました。 そうです。あの乞食れいむです。 れいむはあれからも、同じ場所で、同じおうたを歌い続けています。 「こじきのまりしゃにおきゃねをめぐんでくだちゃい!おにぇがいしましゅ!」 「こじきのれいみゅはおうたがとってもじょうずなんでしゅ!きいてくだちゃい!」 だけど、歯が折れてしまったれいむは、もう今までのようにおうたが歌えません。 以前は顔色ひとつ変えずに避けていた人たちも、今や我慢ができないといった様子で、 れいむたちを睨みつけ、罵声を浴びせます。 「くっせぇ饅頭がこんなところで歌ってんじゃねーぞ!」 「きもー。あのれいむ歯がないじゃん。」 「ゆひゅ~♪ゆひひゅ~♪」 溢れそうになる涙を堪えながら、れいむはおうたを歌います。 もう、おうたを歌っても、昔の楽しかった思い出は、餡子の中に浮かんできません。 だかられいむは、何も考えず、生きるためにおうたを歌うのです。 ふと、道の向こうから、不機嫌そうなサラリーマンが歩いて来ます。 男は、今日、上司にこっぴどく怒られて、内心むしゃくしゃしていました。 「けっ、ありゃ新入りのヘマだろうが……。なんで俺のせいになるんだよ……。」 男が新聞紙の前を通りかかったところで、妹れいむが声を上げました。 「おじしゃん!こじきのれいみゅになにかめぐんでくだちゃい!おねがいしましゅ!」 男は、3匹にちらっと目をやると、あからさまに舌打ちをします。 「……なんだ、ゆっくりか。うっせーな。」 そのまま通り過ぎようとしたとき、男は、ふと足を止めました。 この光景、どこかで見たことがある。そうだ、あのれいむだ。 ずっと前に、ビール瓶の蓋で、このれいむをからかったことを、男は覚えていました。 男は、しばらくの間、じっとれいむの顔を見つめていました。 れいむの方は目を瞑り、真剣におうたを歌っています。 前歯の隙間から空気が漏れ、ひゅーひゅーと間の抜けた音が聞こえても、 れいむは真剣におうたを歌っているのです。 チャリーン 缶の底で、金属のぶつかる音がします。 「ありがとうごびゃいまひゅ。」 「「ありがとうございましゅ!」」 れいむと2匹の子ゆっくりは、もみあげとおさげで三つ指をつき、深々と頭を下げます。 サラリーマンは、お礼を言う3匹を無視して、先を急ぎました。 れいむは、男が見えなくなると、ようやく体を持ち上げます。 「ひょうはおかねもらえひゃね。くらいからもうおうひにひゃえろうね。」 「「ゆっくち~♪」」 れいむは、空き缶の中に入っている金属片を、もみあげでゆっくり取り出します。 いったいいくら入っているのでしょうか。 「……。」 夕暮れの太陽に赤く光る丸い円盤。 それは、1円玉でした。 「ゆわ~♪いひえんだまひゃんだよ♪」 れいむの顔がぱっと明るくなります。 「いちえんだましゃんゆっくりしていっちぇね!」 妹れいむも目を輝かせ、1円玉さんにすーりすーりしようと体を伸ばします。 「おじしゃんありがちょね!」 子まりさは、もう姿の見えない男の方角に向かい、何度も何度もお礼を言いました。 「ゆっくりおうひにかえってくひゃひゃんをむーひゃむーひゃひようね!」 「「ゆっくち~♪」」 れいむは、右のもみあげで子れいむを、左のもみあげで子まりさを抱き寄せると、 夕闇に包まれた始めた大通りを、ゆっくりと去って行きました。 そんなれいむの唇には、生まれて初めて恵んでもらった1円玉が、 何か大事なものと交換されたかのように、赤く赤く、輝いているのでした。 終わり これまでに書いた作品 ダスキユのある風景(前編) ダスキユのある風景(中編) ダスキユのある風景(後編) 英雄の条件 ふわふわと壊れゆく家族 ♂れいむを探して このSSに感想を付ける